年金についてご質問をご希望の方は、以下のよくあるご質問をご確認ください。お探しのご質問に当てはまるものが見つからない場合は、直接ご質問も受け付けておりますので、「年金のワンコイン質問箱(有料)」をご利用ください。
年金の種類
私は56歳の専業主婦です。夫は9歳年上の65歳です。先日、夫が定年退職とともに年金生活に入りました。私は、今まで第3号被保険者だったのですが、何か手続きが必要ですか?(2019年 女性56歳)
ご質問の回答です
第3号被保険者から第1号被保険者へ切り替える必要があります。 それは、厚生年金保険や共済組合に加入している配偶者(本件の場合は夫)が65歳に到達(誕生日の前日)した日において第3号被保険者ではなくなってしまうからです。
国民年金の被保険者は3種類あります。
① 第1号被保険者:自営業者・学生・プロ野球の選手等
② 第2号被保険者:会社員・OL・公務員等
③ 第3号被保険者:会社員等の妻(専業主婦)
ご主人は上記②:第2号被保険者ではなくなってしまうので、60歳未満の配偶者は第1号被保険者に種別変更をしなければなりません。
また、届出は本人が行うよう義務付けられています。
ご本人がお住まいの市(区)町村国民年金窓口またはお近くの年金事務所へ「第1号被保険者への種別変更届」をご提出ください。
なお、届出が遅れてしまったり、手続き自体を行わなかったりした場合には、将来、受け取れる年金額が少なくなったり、場合によっては年金を受け取れないケースも発生します。早急にお手続きをしてください。
年金はいくらもらえるの?
来年の5月に65歳になります。年金がいくらになるのか?知りたい(2020年 女性 64歳)
ご質問の回答です
年金の金額は、一言で申し上げますと“人それぞれ”です。
そして、もらう時になるまで、“わからない(確定しない)”ものです。
国民年金の「老齢基礎年金」は加入していた期間によっては、ある程度わかりますが、厚生年金保険の「老齢厚生年金」は、「どれくらいの期間、厚生年金保険に加入していたのか?」・「加入期間中の収入がどれぐらいあったのか?」によって年金額が変わります。
つまり、“人それぞれ”なのです。
毎年、誕生月に日本年金機構から郵送される「ねんきん定期便」をご存じでしょうか。
「ねんきん定期便」は、年齢にもよりますが、ご自身のこれまでの『年金加入記録』や『年金の見込み金額』が記載されています。お手元にありましたら、一度、内容をご確認ください。
もし、「ねんきん定期便」が届くのは年1回のため、それまで待てないということでしたら、インターネットサービスの「ねんきんネット」をご活用ください。
「ねんきんネット」は、オンラインで自分自身の年金記録等を確認できるサービスです。いつでも最新の情報を確認することができ、また、年金の見込み額も試算できます。
なお、「ねんきんネット」を利用する際は、ご自身の登録が必要です。
そんなに複雑ではありませんので、この機会に登録してみては、いかがでしょうか。
学生納付特例制度
今春、社会人になり、現在は厚生年金保険に加入しています。
学生だった期間は、国民年金保険料の納付免除をしていました。免除された期間の保険料は支払わなければならないのでしょうか?(2019年 女性 23歳)
ご質問の回答です
公的年金制度は国が運営しており、年をとったとき・障害を負ったとき・死亡したときに本人またはその家族への生活保障を行う強制加入の社会保険です。
「学生納付特例制度」は、収入のない20歳以上の学生を対象として、卒業して自分で収入を得られるようになるまで国民年金保険料の支払いを一時的に猶予する制度です。
簡単に言いますと「保険料の出世払い制度」なのです。
また、「学生納付特例制度」の保険料免除期間は、年金の受給資格を確認する際はカウントされますが、将来受け取る「老齢基礎年金」の年金額には反映されません。満額の「老齢基礎年金」を受け取るためにも納めておいた方がいいでしょう。
なお、猶予された保険料は、免除申請した時から10年以内であれば納めることができます。これを「追納」といいます。追納した場合は、その期間は「納付」期間として取り扱われます。
また、猶予された月の属する年度の翌々年度以内に追納された場合は、遅れたことで納付額の加算はありませんが、時期が遅れるほど一定の加算が行われます。
少ない金額ではないので大変だとは思いますが、「追納」で納めることを考えてみましょう。
65歳時の年金請求手続き
私は63歳から「特別支給の老齢厚生年金」を受け取っています。65歳の年金を受け取る時には、何か手続きがいりますか?(2022年 男性64歳)
ご質問の回答です
65歳になった際、年金の『再請求手続き』をすることになります。
ただし、手続き方法は簡便なものです。「特別支給の老齢厚生年金」を受け取る際に、一度、請求手続きを済まされていますので、必要事項を書き込んだ「はがき」の投函で済ますことができます。
65歳になる月の1ヶ月前、初旬頃に「年金請求書(はがき形式)」が日本年金機構から郵送されます。その「年金請求書」に必要事項を書き込み、投函するだけです。住民票や戸籍謄本の添付も必要ありません。そのため、事前に準備しておく書類もありません。
(※ただし、「配偶者の加給年金額」を申請する場合には別途書類を提出しなければなりません。その際は事前に最寄りの年金事務所へお問合せください。)
「年金請求書」をポストへ投函した後は、しばらく様子をみてください。後日、日本年金機構から「年金決定通知書・支給額変更通知書」がお手元に届くはずです。
また、ポスト投函後、1ヶ月位を過ぎても「通知書」がお手元に届かない場合には、ねんきんダイヤル(0570-05-1165)、または、最寄りの年金事務所へお尋ね下さい。「通知書」送付の有無を確認することができます。
公的年金の保険料
毎月納めている厚生年金保険の保険料は、高所得者でも低所得者でも料率は一緒なのでしょうか?(2019年 男性44歳)
ご質問の回答です
公的年金の被保険者は3種類です。自営業者等が加入する「第1号被保険者」、サラリーマンや公務員が加入する「第2号被保険者」、そして、専業主婦が加入する「第3号被保険者」の3つになります。
また、日本の公的年金制度は、1階が国民年金、2階が厚生年金保険の「2階建て」です。
「第1号被保険者」と「第3号被保険者」は国民年金のみに加入し、「第2号被保険者」は国民年金と同時に厚生年金保険に加入します。
保険料に関しては、「第1号被保険者」は国民年金保険料(2023年度:16,520円)を納めます。また、「第2号被保険者」は収入に応じた金額が保険料として計算され、「第3号被保険者」は保険料の負担がありません。
「第2号被保険者」が納める厚生年金保険料は、所得によって納める金額が変更されます。それは、ボーナス(賞与)を含む給与の金額を厚生労働省が定める「標準報酬月額等級表」にあてはめ、その対象金額に厚生年金保険料率18.3%を掛けた金額が厚生年金の保険料になるからです。高所得者も低所得者も料率自体は同じです。
なお、保険料はお勤め先とご自身が折半して納めることになります。実質的な本人負担の料率としては18.3%の半分、9.15%とお考えください。
再雇用された時の社会保険料(同日得喪)
60歳で定年になります。退職後は4月1日付けで嘱託として再雇用されることが決まりましたが、給料は下がります。その場合、厚生年金や健康保険の保険料も同日付けで下がりますか?年金はまだもらえないので給料だけでは厳しいです。(2022年 男性 64歳)
ご質問の回答です
厚生年金保険や健康保険の社会保険料の計算のもとになるのが「標準報酬月額」です。
「標準報酬月額」は昇給や降給などによる給与額の著しい変動がある場合、変更されます。この方法を「随時改定」といいます。「随時改定」は、通常、変動後4ヶ月ほどの期間を要します。
しかしながら、60歳以上の方が再雇用(1日も空くこともなく同じ会社に再雇用されること)された場合には、その雇用された“月”から再雇用後の「標準報酬月額」が適用されます。この方法は『同日得喪』と言われています。
本件の場合は、60歳以上で再雇用のため、その月、つまり4月給与の「標準報酬月額」が適用されます。そのため、厚生年金等の社会保険料も4月から下がりますので、ご安心ください。
ただし、『同日得喪』を行うためには、事業主の届出が必要です。
事業主は、「厚生年金保険等の被保険者資格喪失届」と「被保険者資格取得届」を同時に年金事務所へ提出します。また、その書類には様々な添付書類が必要です。「就業規則」や「退職辞令の写し等」、「再雇用されたことが判る書類」等となりますので、少々、面倒です。
「自動的に計算しなおしてくれる」とお考えの方も多く、念のため、お勤め先に事前に確認された方が良いでしょう。
被扶養者控除と年金の加給年金額
主人は年金をもらっており、配偶者の加給年金も受け取っています。また、私は主人の被扶養者として配偶者控除の対象になっています。実は、ある理由があって子供の被扶養者へ変更したいと思っています。その場合、主人は加給年金を受け取れなってしまうのでしょうか。(2019年 女性 63歳)
ご質問の回答です
「扶養控除」は、世帯を持っている方が家族を扶養している場合、その扶養している人数に応じて課税所得から一定金額を控除する制度です。所得税・住民税の納税額を計算は、受け取っている収入にそのまま税率をかけるのではなく、収入から一定額を控除したうえで税額を計算します。その控除の一つが「扶養控除」なのです。
一方、年金の「配偶者の加給年金額」の支給要件は、『厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が老齢厚生年金を受け取れるようになったとき、その方に“生計を維持されている”配偶者(65歳未満)がいる場合に加算される。』とあります。
つまり、年金の「配偶者の加給年金額」は、“生計を維持されている”ことがポイントです。
本件の場合、“生計を維持されている”とは、「配偶者(夫)と同居していること」と「扶養控除の対象になっていること」の2つと解釈できます。
「ある理由があって」とありますので深く詮索はいたしませんが、子供の被扶養者へ変更された場合は相応の「理由」がない限り、「配偶者の加給年金額」は支給されなくなる可能性が高いです。
育児休業による時短と標準報酬月額
私は、現在、4歳の女の子を育てています。会社では未就学児童がいる場合、最大4時間までの時短勤務が認められています。私も、育児時短勤務の制度を利用し、1日5時間の勤務体系に変更しました。
ただ、時短によって給料は減額されています。でも、「標準報酬月額」を確認すると時短前の給料に社会保険料が計算されています。手取り額が減っているのに、社会保険料が減っていないのはなぜでしょうか?(2021年 女性 36歳)
ご質問の回答です
日本年金機構の時短勤務に関する見解は、「給料から単に勤務していない時間分(不就労分)が差し引かれている場合は、固定的賃金(基本給等)の変更とはならない。そのため、「標準報酬月額」は変更しない。」とされています。そのため、手取り額が減っても、社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料)は以前のまま引かれてしまうという事象が起こります。
お勤め先の就業規則や給与規定に「短時間勤務制度」があって、その規定に基づいて基本給等の契約を再締結する場合は固定的賃金の変更とみなされます。その場合は「標準報酬月額」も変更され、保険料も下がることになります。ただし、「標準報酬月額」自体の等級自体が下がることになるため、将来の年金(老齢厚生年金)の年金額も少なくなります。
現在のように「標準報酬月額」が従前のままであるということは、社会保険上は育児休業していない人と同じ処遇をしてくれているとも言う事ができます。
「将来のことも大事だけど、今の生活も大事」というお気持ちは充分わかります。
ただ、社会保険料の半額をお勤め先が負担していることも事実です。
一度、お勤め先に本内容をご相談されてはいかがでしょうか?
就業規則における育児時短勤務制度がどのような内容であるのか?また、実態に即しているものなのか?そして、どのように実務運営をされているのか?等、お話し合いをされることが一番大切なことと思います。
海外赴任中の年金請求手続き
3年前からフィリピンに海外赴任しています。今年で65歳になりますが、海外赴任中でも年金は受け取れますか。また、受け取れるとすれば、海外での手続きはどうすればいいでしょうか?(2022年 男性 64歳)
ご質問の回答です
海外赴任中であっても年金の請求手続きはできます。
まずは、日本年金機構のホームページから「年金請求書(国民年金・厚生年金保険 老齢給付)」をダウンロードし、必要事項をご記入ください。
記入が完了しましたら、添付する本人確認書類(戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明書、住民票の記載事項証明書のいずれか)をご用意ください。
入手方法としては、例えばですが、戸籍謄本は戸籍を置いてある市役所等への郵便による取り寄せか、日本に住んでいるご家族の方に入手してもらいます。ただし、入手するのは65歳の誕生日以降にしてください。年金事務所では、誕生日前の証明書を受け付けてくれません。
また、外国の銀行で年金の受け取りを希望される場合には、届書「年金の支払いを受ける者に関する事項」を提出します。同書類は日本年金機構のホームページよりダウンロードできます。ダウンロード後、ご自身の基礎年金番号、年金コード等、外国の銀行名、支店名、所在地、口座番号を記入します。提出時には口座番号が確認できる書類(通帳の写し等)を添付してください。
全ての書類の準備ができましたら、日本の最終居住地を管轄している年金事務所へ書類を郵送してください。
なお、海外の方は年金を受給された後も書類の提出を求められます。
それは、「年金受給者現況届」という書類です。
「年金受給者現況届」は、本人の確認証明という位置づけです。書類自体は、誕生月の前月下旬に日本年金機構から郵送されます。また、提出時には「在留証明書」や「居住証明書」の添付が必要です。誕生日が近づいてきましたら、事前に準備しておいた方が良いでしょう。
「年金受給者現況届」は年1回の提出です。また、提出には期限(誕生月の末日)が設けられています。もし、提出が遅れてしまったり、提出自体をしなかった場合には、年金の支給が停止されてしまうこともあります。ご注意ください。
海外での手続きは、漠然として不安が募ります。
日本に住んでいる時は、最寄りの年金事務所に相談すれば足りますが、海外ではそうはいきません。もし、お困りの事等が生じましたら、その際は大使館または日本国領事館にご相談ください。ご相談に応じていただけます。
厚生年金保険の適用拡大(年収106万円の壁・130万円の壁)
パートで働いている主婦です。
世間では「106万円の壁」とか「130万円の壁」と言われていますが、どういう内容ですか。(2022年 女性 60歳)
ご質問の回答です
「106万円」とは、一般的に主婦がアルバイトやパートで働くときに年収106万円を超えると夫の扶養から外れ、ご自身が厚生年金保険や健康保険等の社会保険に加入しなければならない年収をいいます。
厚生年金保険と健康保険は、①従業員数が101人以上 ②週労働時間が20時間以上 ③月収8.8万円(年収換算で106万円)以上 といった条件を満たす場合には加入しなければなりません。
また、「130万円」は、①の会社規模が小さい会社(従業員数101人未満)に勤めるパートやアルバイトの方は130万円を超える場合に厚生年金保険等の加入義務が発生する年収です。
厚生年金保険や健康保険に加入するということは、当然、お給料から、それぞれの保険料が差し引かれることになります。その分、手取り額に影響が出るため、「106万円の壁」・「130万円の壁」と呼称されているのです。
現在、厚生年金の加入対象は拡大されています。
このことを「厚生年金保険の適用拡大」といいます。
わかりやすく言いますとパート労働者を厚生年金に加入できる方向に制度を改めるということです。
2022年10月には短時間労働のパートやアルバイトが加入する企業規模を501人以上から101人以上の中小規模の会社まで拡大しました。2024年10月以降は51人以上まで引き上げる予定です。
厚生年金に加入することは、将来の年金額が増えることです。老後の生活に関しては大きな安心を得られることにもなります。給与の手取り額が減額されるというマイナス面だけがクローズアップされていますが、決してそういうことではないのです。
人生100年時代、目先の損得だけではなく、長い目で見たライフプランをお考えいただき、そして、仕事の「やりがい」やご自身の健康状態等、総合的に検討することが求められているのです。
特別支給の老齢厚生年金・時効
特別支給の老齢厚生年金を受け取ると老齢基礎年金も自動的に繰上げ受給されてしまいますか?(2021年 女性 60歳)
ご質問の回答です
公的年金制度は2階建ての構造です。
1階部分は「老齢基礎年金」、2階部分は「老齢厚生年金」になります。
2つの年金は、本来、65歳から支給されます。
しかしながら「特別支給の老齢厚生年金」は65歳前に受け取れる年金です。「特別支給の老齢厚生年金」は「報酬比例部分」と言われ、65歳になると本来の年金である「老齢厚生年金」に変わります。
つまり、「特別支給の老齢厚生年金」と「65歳からの本来の老齢厚生年金」は別物なのです。そのため、「特別支給の老齢厚生年金」を受け取ったからといって、自動的に「老齢基礎年金」が繰上げ受給されることはありませんし、減額されることもありません。もちろん、「65歳からの本来の老齢厚生年金」が減額されることもありません。
ただし、1点、注意点があります。
「年金は請求手続き完了しないともらえない」ということです。
減額させると思い違いをして「特別支給の老齢厚生年金」の請求手続きをしない方が多くいらっしゃいます。請求せずに、そのままにしておくと「時効」によって受け取れなくなることもありますので、受給できる年齢になりましたら、速やかに手続きをしてください。
雇用保険の失業給付と年金の調整
現在、私は63歳です。正直、仕事を辞めようか悩んでいます。64歳からは「特別支給の老齢厚生年金」が支給される予定です。退職したら失業給付(基本手当)を申請する予定ですが、「特別支給の老齢厚生年金」と一緒にもらえないことは知っています。そのため、失業給付の受け取りが終わってから年金を受給したいと思っています。一番良いタイミングというものはあるのでしょうか。教えてください。(2020年 男性 63歳)
ご質問の回答です
現在、受給されている「特別支給の老齢厚生年金」は、昭和60年の法律改正で厚生年金保険の支給開始年齢が60歳から65歳への改定により、その開始年齢を段階的に引き下げるという目的の“特別”の年金です。
一方、「雇用保険の失業給付(基本手当)」は65歳未満の雇用保険の被保険者が退職・失業した場合に受け取ることができます。
「年金」は老後における生活給付であり、「雇用保険の基本手当」は失業時の生活保障給付です。2つの給付は“生活を守る”という共通の目的を持っています。そのため、2つ同時に受け取ることはできません。
このような措置を『年金と失業給付の調整』といいます。
「年金」と「雇用保険の基本手当」の両方の権利を持っている場合は、どちらか一つを選択することになります。
一般的には「年金」の方を選択します。
それは、「年金」の金額の方が多いからです。「雇用保険の基本手当」の受給期間は最長でも150日(倒産等会社都合で退職した場合は240日)です。また、支給額は1日単位とした給与の5割~8割だからです。
また、「雇用保険の基本手当」には厳しい要件があります。
支給を受けるためには、①積極的に就職しようという意思があること ②いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があること ③積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業に就いていないことという、①~③の要件です。
これは4週間に1回、公共職業安定所(ハローワーク)へ出頭された際に数社に対して実際に就職活動等をしていたという証拠を提出することで確認がなされます。
以上のとおり、「雇用保険の基本手当」は「年金」を受け取るまでの“つなぎ”という制度ではありませんので、ご質問にあります「一番良いタイミング」という考え方はありません。
特に、「雇用保険の基本手当」は、就職活動を行った会社へハローワークが電話する場合もありますので、慎重な対応が必要になります。
在職老齢年金・特別支給の老齢厚生年金
今、私は嘱託で働いています。「特別支給の老齢厚生年金」が64歳からもらえるようになりましたが、働いて収入があると年金がカットされると会社の同僚から聞きました。カットされるのはもったいないので、請求を遅らせて65歳から年金をもらおうかと思っています。そんなことってできますか?(2022年 男性 63歳)
ご質問の回答です
厚生年金に加入している方が働いて給与(報酬)を得ている場合、その給与と年金を合計した金額が決められた基準額(2023年度:48万円)を超えると、年金額の一部または全部が支給停止されます。この制度を「在職老齢年金」といいます。
たとえ、年金の請求手続きを遅らせたとしても基準額を超えてしまうと、年金はカットされます。また、後から遡ってカットされた年金がもらえる訳でもありません。
むしろ、請求手続きが遅れることで「時効」が成立し、年金を受け取れないケースも発生します。もらえる時にもらうのが一番です。
なお、65歳前に支給される「特別支給の老齢厚生年金」は、65歳から支給される「老齢厚生年金」とは別物です。現在加入されている厚生年金保険の期間は、65歳からの「老齢厚生年金」に加算されます。つまり、年金額は増えることになりますので、ご安心ください。
在職老齢年金
私は、「特別支給の老齢厚生年金」をもらいながら嘱託として働いています。ただ、年金は「在職老齢年金」によって減額されています。 会社からは、10月以降に給料が下がると連絡がありました。これからは、年金は全額もらえることになると思いますが、いつから変わりますか?(2022年 女性 63歳)
ご質問の回答です
「在職老齢年金」は、老齢厚生年金(本件の場合は「特別支給の老齢厚生年金」)の額と給与や賞与(ボーナス)の額に応じて、年金の一部または全額が支給停止される制度です。
給与の変更による「在職老齢年金」のタイミングは、その仕組み自体を理解する必要があります。
まずは、「在職老齢年金」の計算方法についてです。
【在職老齢年金による支給停止額の計算式】(2023年度)
・『総報酬月額相当額』+『基本月額』 < 48万円 ⇒ 年金は全額支給
・上記の合計額が48万円を超える場合
支給停止額=(『総報酬月額相当額』+『基本月額』-48万円)÷2×12月
年金の用語は、少々難しく、当たり前のように『総報酬月額相当額』や『基本月額』と記載されていますが、その金額は「何を指すのか?」と迷うと思います。
それでは、ひとつひとつ確認していきましょう。
『総報酬月額相当額』は、「その月の標準報酬月額」+「直近1年間の賞与の合計額÷12」で算出されます。
また、『基本月額』は老齢厚生年金(年額)を12で割った金額のことです。
では、「標準報酬月額」とは、どのような金額なのでしょうか。
「標準報酬月額」は、給与(報酬)の額によって1~32等級の「標準報酬月額等級表」にて区分された金額を指します。通常は、毎年4月・5月・6月の3ヵ月間の平均給与に基づき、「標準報酬月額」は決定されます。
この方法を「定時決定」といいます。「定時決定」で決定された「標準報酬月額」は、その年の9月から翌年の8月まで適用されます。
また、昇給や降給などにより給与の額が著しく変動した場合、「随時改定」という方法で「標準報酬月額」が変更されます。給与の変動された月以降、引き続き3ヵ月間の平均月収に該当される「標準報酬月額」と、現在の「標準報酬月額」との間に2等級以上の差が生じた場合には、その“翌月”から改定されます。この方法を「随時改定」といいます。
以上のとおり、給与の額が10月から著しく減額される場合には、10月から12月の給与の額によって、「標準報酬月額」は1月から改定されることになります。
年金は偶数月に支給されていますので、この場合は2月から「在職老齢年金」が変更されるとお考えください。
ただし、このタイミングは、お勤め先がスムーズに届出を完了した場合に限ります。実際の届出は会社によって違ってきますので、あらかじめ、お勤め先に確認しておいた方がよろしいかと存じます。
繰上げ受給
63歳の時に「繰上げ受給」を請求しました。でも、厚生年金分の年金は、今まで一度も受け取っていません。現在も働いているおり、「在職老齢年金」が適用されているからです。もったいないので、厚生年金の分だけ65歳からの受給に変更できないでしょうか?(2022年 男性 64歳)
ご質問の回答です
「繰上げ受給」を請求された後、年金を取り消したり変更したりすることはできません。
残念ですが、「繰上げ受給」を請求した時点で年金は減額され、その減額が一生涯続くことになります。「在職老齢年金」により支給停止されている厚生年金分(老齢厚生年金)も同じく減額されてしまいます。一度、「繰上げ受給」により年金を受け取ってしまうと、その後はやり直しがきかないのです。
「繰上げ受給」の請求により、一生涯、年金は減額されると申し上げました。
しかしながら、「老齢厚生年金」は少し増額される可能性はあります。現在、「在職老齢年金」が適用されているということは、厚生年金保険に加入していることを意味します。その加入期間は、将来の「老齢厚生年金」に加算されます。年金は65歳時に再計算されます。その金額に「繰上げ受給」の減額率を掛けることになりますので、少額ですが、年金は増額されることになります。
また、65歳以降もお勤めを継続される場合は、「65歳以上の在職定時改定制度」が適用されます。この制度は、2022(令和4)年10月から開始され、厚生年金の加入期間分を毎年決まった時期に改定する仕組みです。つまり、毎年、年金額が増額することになります。
「もったいない」というご心中はお察ししますが、「繰上げ受給」の請求をした以上、どうしようもありません。今後は、現在の収入や資産(貯蓄)、また、これから受け取る予定の年金見込み額等を総合的に検討したうえで、ご自身のライフプランをお考えいただきたいと思います。
繰下げ受給
繰下げ受給を使って、70歳から年金をもらおうと思っています。
もし、72歳で亡くなった場合、65歳からもらえるはずだった年金は保証されるのでしょうか?(2020年 女性 64歳)
ご質問の回答です
老齢年金は、年金を受け取っている方が亡くなった際に、その権利が消滅します。
「繰下げ受給」によって70歳から年金を受け取った場合、72歳で亡くなられると、受け取れる年金は2年分です。「繰下げ受給」は、受け取りが遅くなれば遅くなるほど年金が増額するというメリットがあります。仮に、70歳で年金を受け取る場合は42%(0.7%×60ヶ月)増額されますが、本人が亡くなれば老齢年金は消滅します。
「遺族年金がある。」と思われるかもしれません。しかしながら、「遺族厚生年金」は繰り下げによって増額された年金額を基に計算するのではなく、65歳時点で受け取るはずだった年金額を基に計算します。早く亡くなってしまうと「繰下げ受給」のメリットは半減してしまいます。
生涯で受け取れる年金を総額で考え、【65歳から受け取った総額】と【70歳から受け取った総額】を比較すると、80歳11ヶ月より長生きした場合に年金の増額が多くなります。つまり、長生きしないと「繰下げ受給」の効果は薄まるのです。
また、「繰下げ受給」で年金額が増えれば、納める税金も増えます。税金が増えれば、介護保険や国民健康保険等の社会保険料も増額します。「繰下げ受給」は、ご自身が思っていたより年金の手取り額が増えないという側面もあるのです。
「将来のことは分からない。」と言ってしまえば、それまでですが、長期的なスタンスで老後の生活(セカンドライフ)をお考えになることは、とても大切なことです。
人生100年時代と言われている現代において、年金(お金)は欠かせません。
年金の請求手続きは、原則、65歳です。
「繰下げ受給」をするか、しないかは、あくまで本人の選択です。65歳までに、ご自身の健康面を含め、様々な検討を行う必要があると思います。
障害年金
現在、障害年金を受給しながら働いています。今の会社では20年勤めています。その間は厚生年金に加入していますが、私が65歳になったら厚生年金はどうなるのでしょうか?(2021年 男性 60歳)
ご質問の回答です
公的年金には、老齢・障害・遺族の3種類の給付があります。
それぞれ、「老後」「障害をもったとき」「家計の支え手が亡くなったとき」という支給事由に該当したとき年金として受け取ることができます。
また、日本の年金制度は1階が国民年金、2階が厚生年金保険の「2階建て」です。
例えばですが、老齢給付の場合は、①「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」という2つの年金は同時に受け取ることができます。現在、受け取られている②「障害基礎年金」+「障害厚生年金」も同じ事由で支給される1つの年金とみなされます。
本件のように、2つ以上の支給事由に該当した場合は、いずれか1つの年金を選択することが原則です。これを「一人一年金」の原則といいます。
しかしながら、この原則は65歳以降になると特例が生じます。
「65歳以上であれば」という条件のもと、支給事由が異なる年金でも併給することができます。そのため、③「障害基礎年金」+「老齢厚生年金」の組み合わせが可能になります。
その結果、65歳以降は上記①②③の3パターンから、ご自身が一つ選択することになります。
65歳になる少し前になりましたら、「障害年金と老齢年金、どちらが多く年金を受け取れるのか?」、最寄りの年金事務所等でご確認ください。
また、選択される際には税金についてもお考えください。
老齢年金は所得税がかかりますが、障害年金は税金がかかりません。こちらも重要なポイントになります。
私は障害年金受給者です。働いたら年金が減らされることはあるのでしょうか?(2022年 女性 42歳)
ご質問の回答です
原則、障害年金は所得による制限はありません。そのため、働いて得た収入により障害年金が減額されることはありません。ご安心ください。
しかしながら、1つだけ例外があります。それは、「20歳前の傷病による障害基礎年金」という年金です。長い名前の障害基礎年金ですが、こちらの障害年金を受け取っている場合には所得による制限があります。
「20歳前の傷病による障害基礎年金」とは、20歳に達する前に初診日(初めて医師の診療を受けた日)がある方で病気やケガによる年金法上の障害等級1~2級に該当する場合に支給される年金です。初診日が20歳前にあるために年金に関しての保険料を納付した実績がありません。そのため、所得制限が設けられています。
上記のとおり、原則、働いて収入を得たとしても障害年金が減額されることはありません。『働く=経済的な安定』へとつながりますので、ご体調に合わせて働くことは好ましいことです。
ただし、障害年金は、その障害により勤労収入を得ることが出来ない方のためにある制度でもあります。働く前に、例えばですが、市区町村の国民年金窓口担当の方や福祉相談員等、障害年金でお世話になっている方々には、事前に報告をしておきましょう。きっと、応援してくれることと思います。大切なことは一人では決めない、そして、決して一人で悩まないことだと思います。
遺族年金
私は現在、国民年金をもらっています。先日、75歳の夫が亡くなりました。
夫は会社員として30年以上勤めて「老齢厚生年金」を受給していました。遺族年金をもらえるとは思うのですが、おおよその支給額を教えてください。また、受け取るためにはどのような手続きが必要でしょうか。これからの事が不安です。(2019年 女性 74歳)
ご質問の回答です
ご主人は厚生年金保険に25年以上加入されており、また、「老齢厚生年金」を受給されていましたので、奥様がご主人に生活を支えられていた場合には「遺族厚生年金」支給の対象になります。
また、「遺族厚生年金」の金額につきましては、ご主人が65歳以上だったので、下記の(A)と(B)を比較し、いずれか高い方が「遺族厚生年金」の金額になります。
(A) 死亡した方(ご主人)の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額
(B) 死亡した方(ご主人)の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1と自身(奥様)の老齢厚生年金の額の2分の1の額の合計」
奥様は国民年金(老齢基礎年金)のみを受給されているとのことですので、上記(A)の額を受給されることになります。
また、「遺族厚生年金」の手続きに関しては、下記の手順が必要になります。
まずは、「死亡診断書(市長村長へ提出した書類)または死体検案書」を「年金受給者死亡届(※年金事務所の備え付け書類)」とともに最寄りの年金事務所または街角の年金相談センターへ提出します。
※「死亡診断書」はコピー提出が可能です。何枚かコピーを取り、お手元に保管された方が良いでしょう。年金以外でも生命保険金の請求手続きで使用します。
上記の書類を提出後、「遺族厚生年金」の受給手続きに入ります。
まずは、年金事務所等備え付けの「年金請求書」を取り寄せ、下記書類と一緒に年金事務所等へ提出してください。
【提出書類】
①年金請求書
※年金事務所または街角の年金相談センター備え付け書類
②死亡診断書または死体検案書のコピー
③年金手帳等、基礎年金番号がわかる書類
④戸籍謄本(記載事項証明書)、または法定相続一覧図の写し
※戸籍謄本は受給権発生日以降で書類提出日から6ヶ月以内に交付されたもの)
⑤世帯全員の住民票の写し
※マイナンバー記載により省略可
⑥請求者の所得証明書または課税(非課税)証明書、源泉徴収票等、収入がわかるもの
※マイナンバー記載により省略可
⑦本人名義の金融機関通帳等(「年金請求書」に金融機関の証明印を受けた場合は不要)
上記以外でも年金事務所から提出を求められた場合には、その指示に従ってください。
「未支給年金」は、亡くなった方が本来もらえるはずだった年金のことをいいます。「未支給年金」は必ず発生します。忘れずに手続きしてください。
【未支給年金の提出書類】
①未支給年金・保険給付請求書
※年金事務所または街角の年金相談センター備え付け書類
②戸籍謄本(記載事項証明書)
③年金手帳等、基礎年金番号がわかる書類
④亡くなった方と請求する方が生計を同じくしていたことがわかる書類等(住民票等)
※「未支給年金」が請求できる方は、亡くなった方と生計を同じくしていた配偶者、子、父母、祖父母、兄弟姉妹、それ以外の3親等内の親族に限ります。
以上のとおり、「遺族厚生年金」の手続きには非常に多くの書類を準備しなければなりません。内容も複雑ですので、年金事務所または街角の年金相談センターでご相談された後に書類を取り揃えることの方がよろしいかと存じますが、
お手続き前に、年金事務所等へお電話にて問合せることをお勧めします。
年金生活者支援給付金
老齢基礎年金を受給中です。年金生活者支援給付金の話を聞いたのですが、私はもらうことができますか?(2022年 女性 68歳)
ご質問の回答です
「年金生活者支援給付金」は2019(令和1)年の消費税率引き上げ分(8%→10%)を活用した福祉的な給付金です。
公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準額以下の方に対し、生活の支援を図ることを目的に老齢年金に上乗せされています。
給付額は、月額5,140円(2023(令和5)年度)を基準に保険料納付済期間等に応じて算出され、下記の①と②の合計額になります。
① 保険料納付済期間に基づく額(月額)=5,020円×保険料納付済期間/被保険者月数480月
② 保険料免除期間に基づく額(月額)=10,802円×保険料免除期間/被保険者月数480月
また、支給要件は次のとおりです。
・65歳以上の老齢基礎年金の受給者であること
・前年の公的年金等の収入金額とその他の所得(給与所得や利子所得など)との合計額が老齢基礎年金満額相当(約78万円)以下であること
・同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
なお、「年金生活者支援給付金」の対象者には、毎年9月頃に日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書」と印字された「はがき」が郵送されます。その「はがき」に氏名を自著したうえで返送すると手続きは完了します。所得を証明するような書類や住民票等を添付する必要はありません。
「年金生活者支援給付金」の対象者でありながら書類が到着しない場合には、お近くの年金事務所へお問合せください。転居等により日本年金機構の住所データが更新されてない場合もあります。少しでも思い当たる点がある場合には、年金事務所でご自身の年金記録等をお確かめください。
年金と税金(医療費控除)
私は、現在、年金暮らしです。最近、体調を崩して手術をしました。そのために医療費が結構かかり、何か申請すればお金が戻ることはありますか?(2021年 男性 72歳)
ご質問の回答です
医療費が高額になってしまった場合、「医療費控除」という制度にて税金の還付を受けることができます。
「老齢年金」は税法上「雑所得」という扱いになり所得税の対象です。1月1日から12月31日までの間に医療費が10万円を超える、または、所得が200万円未満の場合に所得の5%を超えた場合に税金還付の対象になります。その年の翌年に「確定申告」をすることで所得税の精算を行い、その際、払い過ぎた税金を還付(払い戻し)されます。
まずは、その年の1年間にかかった手術代や入院代等の明細、または病院発行の「領収書」を集め、その内容を明細書に記します。
また、医療費の実額から生命保険の入院保険金や医療保険の入院給付や手術給付を受けた場合は、その医療費から差し引いた実質的な自己負担額が「確定申告」の対象になります。手続きの方法についてわからない場合には、税務の専門家である税理士に手続きを依頼されたり、直接、税務署へ問合せする等を行ってください。
なお、「確定申告」は税務署への申告期間が毎年2月中旬から3月15日までと決められていますが、医療費控除に関する還付申告期間については、医療費がかかった年の翌年から5年間という長い期間になります。「5年もあるから、後でもいいや」と思う方も多くいらっしゃいますが、億劫がらずに、一つ一つの手続きを進めることが必要です。
直接ご質問も受け付けております。
「年金」に係るご質問を「専門家」が回答させていただきます。
ご質問フォームはこちら