前回(第25回『2つ以上の年金が受けられるようになったら?』)の解説で、すでに障害年金を受けている人が、別の傷病で新たに障害年金を受けられるようになったときの「併合認定」というケースに触れましたが、この「併合認定」について、もう少しくわしく知りたいというご質問がありました。障害年金は、障害の状態の変化によって受けられる年金の取り扱いが変わるケースがいくつかありますので、併せて説明します。

1障害は重くなったり軽くなったり、増えたりもする

障害認定日に認定された結果が固定されるわけではない

 おさらいになりますが、障害年金を受給するには、「初診日要件」「保険料納付要件」「障害認定 日要件」の3つの要件を満たしていることが必要です(第23回『収入が多いと障害基礎年金はもらえない?』参照)。
 障害認定日要件に着目した言い方をしますと、障害認定日(初診日から1年6ヵ月を過ぎた日などの障害の状態を定める日)に、障害の状態が「障害等級表」に該当していたときに障害年金を受給することができます。
 しかし、障害認定日時点で認定された障害の状態は、将来にわたって固定されるわけではありません。次のようなケースが生じえます。

① 障害認定日には障害の程度が軽く、「障害等級表」で定める障害の状態になかったが、その後悪化して、「障害等級表」で定める障害の状態になった

② すでに障害年金を受けているが、障害の程度が悪化して該当する障害等級が上がった、また、障害の程度が軽くなって該当する障害等級が下がった(該当しなくなった)

③ 障害認定日には障害の程度が軽く、「障害等級表」で定める障害の状態になかったが、別の傷病で新たな障害が発生し、その障害と前の障害を併せると、はじめて「障害等級表」で定める障害の状態になった

④ 2級の障害年金を受けているところに、別の傷病で新たに3級以下の軽い程度の障害が発生し、その障害と前の障害を併せた障害の程度が増進した

⑤ 2級の障害年金を受けているところに、別の傷病で障害が発生し、その障害だけで2級の障害年金を受けられる要件を満たした

 この5つのケースを、パターンによって整理しますと、図表1のように分類されます。年金用語を用いていますが、その内容については説明していきます。

【図表1】障害の状態の変化等による障害年金の取り扱いの分類

【図表1】障害の状態の変化等による障害年金の取り扱いの分類

 この5つのケースについて、障害年金がどのような取り扱いになるのかを解説していきます。
 なお、以下の解説で、「障害年金を受けられるようになる」というときは、「初診日要件」「保険料納付要件」を満たしているものとします。障害基礎年金・障害厚生年金の支給要件については、第13回『もらい忘れ(請求漏れ)が多い障害年金』などでご確認ください。

①後から障害が悪化したとき

 障害認定日には障害の程度が軽く、「障害等級表」で定める障害の状態になかったが、その後悪化して、65歳に達する日の前日までの間に「障害等級表」で定める障害の状態になったときには、本人が請求することによって、その請求の翌月分から障害年金を受けることができます。このことを「事後重症」による障害年金の請求といいます。

【図表2】「事後重症」による障害年金の例

【図表2】「事後重症」による障害年金の例

②障害が重くなったとき、軽くなったとき

 障害年金を受けている人の障害の程度がその後悪化したり、または軽くなったときは、現況届などによる厚生労働大臣の審査や、本人の請求により年金額が改定されます。
 障害の程度が「障害等級表」の3級程度より軽くなった場合は、65歳になるまでの軽快している期間について障害厚生年金の支給が停止され、65歳に到達する前に再び障害の程度が悪化して3級程度以上になった場合は年金の支給が再開されます。悪化しないで65歳に達したときは受給権を失います

【図表3】「障害の重度化・軽度化」による改定の例

【図表3】「障害の重度化・軽度化」による改定の例

③新しい障害を併せると、はじめて2級以上に該当したとき

 障害の状態が障害認定日に「障害等級表」の1級または2級に該当していなかった人が、別の傷病で新たな障害が発生し、その障害と前の障害を併せると、はじめて「障害等級表」の1級または2級に該当したときは、本人が請求することによって、その請求の翌月分から障害年金が支給されます。(このことを「はじめて2級」といいます。)
 65歳に達する日の前日までに障害等級がはじめて2級以上に該当していれば、65歳になってからでも請求できます。

【図表4】「はじめて2級」による障害年金の例

【図表4】「はじめて2級」による障害年金の例

④2級の障害年金受給者に新たな障害が発生して1級に該当したとき

 障害の程度が2級以上の障害厚生年金の受給権者に3級以下の軽い程度の障害(「その他障害」といいます)が発生し、「その他障害」の障害認定日から65歳に達する日の前日までの間に、前後の障害を併合した障害の程度が増進した場合、年金額の増額改定の請求をすることができます。

【図表5】「その他障害」による改定の例

【図表5】「その他障害」による改定の例

⑤2級の障害年金受給者に別の傷病で2級以上の障害が発生したとき

 障害の程度が2級以上の障害厚生年金の受給権者が、その後、別の傷病で障害が残り、それだけで1級または2級の障害厚生年金の受給要件を満たしている場合、2つの年金が支給されるわけではありません。後の障害の障害認定日に、前後の障害を併せた障害の程度によって障害等級が定められ、新たな障害厚生年金が支給されることになります(障害基礎年金についても同様に扱われます)。これを「併合認定」といいます。

【図表6】「併合認定」による支給の例

【図表6】「併合認定」による支給の例
point

1.障害認定日に障害等級に該当していなくても、その後悪化して、障害等級に該当したときに障害年金を請求できる

2.障害年金を受けている人の障害が重くなったとき、または軽くなったときは、現況届などによる厚生労働大臣の審査や、本人の請求により年金額が改定される

3.障害認定日に1級・2級に該当していなかった人が、別の傷病で新たな障害が発生し、その障害と前の障害を併せると1級・2級に該当したときに障害年金を請求できる

4.2級以上の障害厚生年金の受給権者に、さらに3級以下の軽い障害が発生した場合は、前後の障害を併合した障害の程度により、年金額の増額改定が請求できる

5.2級以上の障害年金の受給権者が、別の傷病で障害が残り、それだけで2級以上の障害年金の受給要件を満たしている場合、前後の障害を併合した障害の程度により、新たな障害年金が支給される

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