本来もらえるはずの年金がもらえなかったり支給額が低かったり、あるいは、もらえないはずの年金が支給されていたために後から返納請求されたという話を聞いたことがある方もいるでしょう。こうしたケースは事務処理ミスによっても発生しているのですが、今回は、制度の仕組みとして通常に発生する「未支給年金」と「過払い年金」と呼ばれるものについて解説します。
1年金受給者が亡くなったとき、もらえる分が残っている
年金の支給は2ヵ月に1回の後払い
「未支給年金」や「過払い年金」とは何のことかを説明する前に、これらが発生する要因である“制度の仕組み”について説明します。その仕組みとは、年金は2ヵ月に1回、前2ヵ月分が支払われるというものです。
【図表1】年金の支払い期月
支払い月 | 支払い日 | 支払い対象月 |
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2月 | 15日 ※15日が土曜日・ 日曜日、または 祝日のときは、 その直前の平日 |
12月・1月の2ヵ月分 |
4月 | 2月・3月の2ヵ月分 | |
6月 | 4月・5月の2ヵ月分 | |
8月 | 6月・7月の2ヵ月分 | |
10月 | 8月・9月の2ヵ月分 | |
12月 | 10月・11月の2ヵ月分 |
図表1のとおり、年金が支払われるのは、2月・4月・6月・8月・10月・12月の年6回で、それぞれの前2ヵ月分が支払われます。たとえば、10月分の年金は、11月分の年金と一緒に12月15日に支払われます(2019年の場合、12月15日は日曜日なので、12月13日に支給されます)。
逆にいうと、「今月分の年金は1ヵ月先か2ヵ月先でないともらえない」ということです。このことをまず理解しておいてください。
未支給年金は必ず発生する
年金は、「支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月」から「受給権が消滅した日の属する月」まで支給されます。たとえば老齢基礎年金の受給権は、原則として65歳に達した日に発生し、亡くなった日に消滅します。つまり老齢基礎年金は、65歳に達した翌月から、亡くなった日の月分まで支給されます。
それでは、10月に亡くなった場合に10月分の年金(あるいは11月分の年金)がどうなるのかを例にして、「未支給年金」「過払い年金」とはどのようなものなのか、図表2に示してみます。
【図表2】未支給年金・過払い年金とは?
図表2のとおり、亡くなった人が本来もらえるはずの(亡くなったためにもらうことのできない)年金を「未支給年金」といい、遺族が受け取る(請求する)ことができます。また、亡くなった人に支給されてしまった、本来はもらう権利のない年金を「過払い年金」といい、遺族は返納しなければなりません。
図表2でわかるように、受給者は死亡した月分の年金をもらう権利があるのですが、その年金を本人が受け取ることは当然できないので、仕組み上、必ず未支給年金が発生するわけです。したがって、年金受給者が亡くなったときに遺族は必ず届出をしなければなりません。その手続きについて次項で説明します。
1.年金は2ヵ月に1回、前2ヵ月分が支払われる
2.亡くなった人が本来もらえるはずの(亡くなったためにもらうことのできない)年金を「未支給年金」という
3.亡くなった人に支給されてしまった、本来はもらう権利のない年金を「過払い年金」という
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① 年金受給者が亡くなったとき、もらえる分が残っている