年金には、受けられる権利(受給権)はあるけれども支給が停止される場合と、受給権自体が消滅して受けられなくなる場合があります。今回は、それぞれの主な事由について整理してみます。
1年金が支給停止される事由
該当する事由が解消された場合には、年金が受給できるようになる
年金の受給権者が2つ以上の年金を受けられるとき、あるいは特別支給の老齢厚生年金の受給者が就職したときなどの場合に、年金額の全部または一部が支給停止されます。
支給停止となる主な事由を整理すると次のようになります。該当する事由が解消された場合などには、年金が受給できるようになります。
すべての年金に共通
2つ以上の年金を受ける権利があるとき
どれか1つの年金を支給し、他の年金は支給停止
➡【第25回】『2つ以上の年金が受けられるようになったら?』参照
特別支給の老齢厚生年金
厚生年金保険の被保険者であるとき
総報酬月額相当額と年金額の合計額に応じて支給停止(加給年金額を除く)
➡【第17回】『在職老齢年金、退職した後の年金は?』参照
雇用保険法による失業給付を受けているとき
全額支給停止
雇用保険法による高年齢雇用継続給付を受けているとき
原則として標準報酬月額の6%支給停止
老齢厚生年金
65歳以上で厚生年金保険の被保険者であるとき
※65歳以上の厚生年金保険の被保険者で、老齢年金の受給権をもっている人は国民年金の被保険者とはなりません。
総報酬月額相当額と基本月額の合計額が47万円を超える場合は、超える分の2分の1が支給停止
➡【第17回】『在職老齢年金、退職した後の年金は?』参照
障害基礎年金・障害厚生年金
障害等級表に定める障害の状態でなくなったとき
障害の状態に該当しない間、支給停止
➡【第26回】『障害年金、こんな場合はどうなる』参照
労働基準法による障害補償を受けられるとき
6年間、支給停止
20歳前傷病による障害基礎年金
前年の所得が限度額以上のとき
その年の10月から翌年の9月まで全額または半額が支給停止
➡【第23回】『収入が多いと障害基礎年金はもらえない?』参照
刑事施設、労役場、少年院に拘禁・収容されているとき(未決拘留者を除く)、日本国内に住所がないとき
その期間、支給停止
他の制度(労働者災害補償保険法等)の年金を受けられるとき
受けられる間、支給停止
※他の制度の年金額が障害基礎年金の額よりも低い場合は、その差額分だけが支給される。
遺族基礎年金・遺族厚生年金
妻と子に遺族基礎年金・遺族厚生年金の受給権があるとき
妻に受給権がある間、子の遺族基礎年金・遺族厚生年金が支給停止
➡【第10回】『遺族年金、もらえる人ともらえる額は?』参照
労働基準法による遺族補償を受けられるとき
死亡日から6年間、支給停止
遺族基礎年金
受給権者または扶養義務者の前年の所得が限度額以上のとき
その年の10月から翌年の9月まで全額または一部が支給停止
刑事施設、労役場、少年院に拘禁・収容されているとき(未決拘留者を除く)、日本国内に住所がないとき
その期間、支給停止
公的年金等を受けられるとき
受けられる間、支給停止
※公的年金等の年金額が遺族基礎年金の額よりも低い場合は、その差額分だけが支給される。
子に遺族基礎年金の受給権がある場合で、子と生計を同じくする父または母がいるとき
子の遺族基礎年金が支給停止
➡【第10回】『遺族年金、もらえる人ともらえる額は?』参照
妻に遺族基礎年金の受給権がある場合で、妻が1年以上所在不明のとき
遺族基礎年金の受給権のある子の申請により、所在不明のときにさかのぼり、支給停止(➡注1)
遺族基礎年金の受給権がある子が2人以上いる場合で、うち1人以上が1年以上所在不明のとき
他の子の申請により、所在不明のときにさかのぼり支給停止(➡注1)
遺族厚生年金
中高齢の加算がされた遺族厚生年金を受けられる妻が、同一人の死亡について遺族基礎年金も受けられるとき
その間、中高齢の加算が支給停止
➡【第10回】『遺族年金、もらえる人ともらえる額は?』参照
夫、父母または祖父母に遺族厚生年金の受給権がある場合で、60歳未満のとき
60歳に達するまでの該当者分の遺族厚生年金の額が支給停止(➡注2)
妻と子に遺族厚生年金の受給権があり、子に遺族基礎年金の受給権があるとき
子が遺族基礎年金の支給を受けている間、支給停止
子と夫に遺族厚生年金の受給権があるとき
子に受給権がある間、夫の遺族厚生年金が支給停止
配偶者または子に遺族厚生年金の受給権がある場合で、配偶者または子が1年以上所在不明のとき
子または配偶者または子申請により、所在不明のときにさかのぼり支給停止(➡注1)
遺族厚生年金の受給権がある配偶者以外の者が2人以上いる場合で、1人以上の者が1年以上所在不明のとき
他の受給権者の申請により、所在不明のときにさかのぼり支給停止(➡注1)
寡婦年金
60歳未満のとき
60歳に達するまでの、支給停止
労働基準法による遺族補償を受けられるとき
死亡日から6年間、支給停止
●注1:1年以上所在不明のとき
遺族基礎年金・遺族厚生年金の受給権者が1年以上所在不明となったときは、他の受給権者が申請を行うと、所在不明になったときにさかのぼって全額が支給停止されます。所在不明になった人は、届出によって支給停止の解除を受けることができます。
●注2:夫、父母または祖父母が60歳未満のとき
夫、父母または祖父母に支給される遺族厚生年金は、受給権者が60歳に達するまで支給停止されます。たとえば、遺族厚生年金の額が40万円で、父が62歳、母が58歳の場合、父はすでに
60歳以上になっているので、40万円の半額である20万円を受けられます。母は60歳以上になっていないので、60歳に達するまでの2年間は支給停止となり、60歳になったら20万円を受けられるようになります。
1.年金の受給権者が2つ以上の年金を受けられるとき、あるいは特別支給の老齢厚生年金の受給者が就職したときなどの場合に、年金額の全部または一部が支給停止される
2.支給停止となる事由が解消された場合などには、年金が受給できるようになる
-
① 年金が支給停止される事由