本来65歳から受け取れる老齢基礎年金・老齢厚生年金は、受給の開始を最大70歳まで(2022年4月からは75歳まで)繰り下げることができます。老齢基礎年金と老齢厚生年金のどちらかのみを繰り下げることもできますし、両方を同時に繰り下げることもできます。今回は、その組み合わせ方による選択パターンを整理してみます。
1老齢年金の受給の組み合わせは大きく4パターン
5年繰り下げると年金額は42%増額される
まずは、繰下げ受給による増額率をおさらいしておきます。
本来65歳から受け取れる年金を、66歳以後に繰り下げて受け取るようにすると、繰り下げた期間の1ヵ月あたりで0.7%が増額されます。現在、増額されるのは60ヵ月(5年)が上限になっており、60ヵ月繰り下げて70歳から受け取る場合は、42%(=0.7%×60ヵ月)増額されることになります。(2022年4月からは繰下げ受給の受給開始年齢の上限が75歳に引き上げられます。)
【図表1】繰下げ受給による増額率と受給率
●年金の増額率=(65歳になる月~繰下げ請求月の前月までの月数)×0.7%
繰下げ請求月 | 増額率 | 受給率(本来の年金に対して) |
---|---|---|
66歳0ヵ月~11ヵ月 | 8.4~16.1% | 108.4~116.1% |
67歳0ヵ月~11ヵ月 | 16.8~24.5% | 116.8~124.5% |
68歳0ヵ月~11ヵ月 | 25.2~32.9% | 125.2~132.9% |
69歳0ヵ月~11ヵ月 | 33.6~41.3% | 133.6~141.3% |
70歳0ヵ月 | 42.0% | 142.0% |
※繰下げ受給ができるのは66歳到達以降(受給権発生の1年後から)になります。
※改正後(2022年4月施行)の繰下げ受給については、第20回『繰下げ受給の上限年齢が75歳に』をご参照ください。
老齢基礎年金・老齢厚生年金それぞれが繰り下げられる
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、言うまでもなく両方を65歳から受け取ることができますし、どちらかのみを繰り下げることも、両方を繰り下げることもできます。これを表にすると、図表2のとおり、4つの組み合わせになります。
【図表2】老齢年金の本来受給と繰下げ受給の組み合わせ
A.老齢基礎年金も老齢厚生年金も65歳から受給
65歳になる3ヵ月前までに日本年金機構から年金請求書が送られてきますので、65歳の誕生日を迎えたときに、必要事項を記入して必要書類を添えて提出(郵送)します。老齢厚生年金は老齢基礎年金といっしょに請求できます。
66歳に達する前に請求した場合は、65歳にさかのぼって受給することになります。
66歳を過ぎてから、繰下げ受給の申出をせずに、65歳にさかのぼって年金を請求することもできます。この場合は、増額されない本来受給の年金額を一括して受け取ることになります。
B.老齢基礎年金は65歳から受給、老齢厚生年金のみ繰り下げる
日本年金機構から送られてきた年金請求書の『老齢厚生年金のみ繰下げ希望』欄に○印を記入して提出(郵送)します。そして、老齢厚生年金を受け取る時点で「繰下げ請求書」を年金事務所または年金相談センターに提出します。
なお、老齢厚生年金に「加給年金額」が加算される人については、繰下げをしても「加給年金額」が増額されることはありません。また、繰下げを待機している期間(65歳~繰下げ受給の開始まで)に「加給年金額」のみを受け取ることもできないことに注意してください。(第15回『繰下げ受給のデメリットとは?』及び後述の事例をご参照ください。)
「加給年金額」は対象となっている配偶者が65歳になるまで支給され、その後は配偶者自身の老齢基礎年金に「振替加算」が経過的に上乗せされます(配偶者が大正15年4月2日〜昭和41年4月1日生まれの場合)が、この「振替加算」も、繰下げを待機している期間は支給されません。
C.老齢厚生年金は65歳から受給、老齢基礎年金のみ繰り下げる
日本年金機構から送られてきた年金請求書の『老齢基礎年金のみ繰下げ希望』欄に○印を記入して提出(郵送)します。そして、老齢基礎年金を受け取る時点で「繰下げ請求書」を年金事務所または年金相談センターに提出します。
D.老齢基礎年金も老齢厚生年金も繰り下げる
日本年金機構から送られてきた年金請求書の提出は必要ありません。老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取る時点で「繰下げ請求書」を年金事務所または年金相談センターに提出します。
この場合、66歳以降、老齢基礎年金と老齢厚生年金を異なる時期に繰り下げて請求することも可能です。
1.老齢基礎年金・老齢厚生年金は、66歳以後に繰り下げて受け取るようにすると、繰り下げた期間の1ヵ月あたりで0.7%が増額される
2.老齢基礎年金と老齢厚生年金は、どちらかのみを繰り下げることもできますし、両方を同時に繰り下げることもできる
3.老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰下げ受給を希望する時点で、「繰下げ請求書」を年金事務所または年金相談センターに提出する
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① 老齢年金の受給の組み合わせは大きく4パターン