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年金・社会保険
掲載:2019年12月13日

“目で見る”年金講座【第15回】
繰下げ受給のデメリットとは?

第6回の記事で、『年金の繰上げ受給は慎重に』と題して「繰上げ受給」のデメリットを取り上げました。では、「繰下げ受給」はどうでしょう? 日本年金機構から届く「ねんきん定期便」の記載内容を見ると、繰下げ受給を後押しされているように感じる人も多いようですが…。今回は、繰下げ受給を検討する際のポイントについて解説します。

手取り額がいくらになるのかの確認が大切

繰下げすると額面で最大42%増える

 本来65歳から受け取れる年金を、66歳以後に繰り下げて受け取るようにすると、繰り下げた期間の1ヵ月あたりで0.7%が増額されます。増額されるのは60ヵ月(5年)が上限になっており、60ヵ月繰り下げて70歳から受け取る場合は、42%(=0.7%×60ヵ月)増額されることになります。
 ここからは、Aさんを例にとって解説していきましょう。

【事例1:Aさんと繰下げ受給①】繰下げ受給による増額率と年金額

今年65歳になるAさん(繰下げ受給を検討中)

  老齢基礎年金 年額 78万円
  老齢厚生年金(報酬比例部分)年額 122万円
  合計 年額 200万円

●1年単位でみる「繰下げ受給」による増額率と年金額

繰下げ受給の開始年齢 増額率 200万円から
増額した年金額
66歳から受給(12ヵ月繰下げ) 8.4% 216万8千円
67歳から受給(24ヵ月繰下げ) 16.8% 233万6千円
68歳から受給(36ヵ月繰下げ) 25.2% 250万4千円
69歳から受給(48ヵ月繰下げ) 33.6% 267万2千円
70歳から受給(60ヵ月繰下げ) 42.0% 284万円
65歳から受給すると ⇒ 年額200万円(月額16万7千円)
70歳から受給すると ⇒ 年額284万円(月額23万7千円)
 Aさんの場合、70歳からの受給に繰り下げることで、月額にして7万円多い年金を受け取れる計算です。ずいぶんトクに見えますが、65歳から70歳になるまで年金を受け取っていませんので、増額した年金を何年か受け取らなければトクとは言えません。では、何歳の時点からトクになるでしょうか。

【事例2:Aさんと繰下げ受給②】繰下げ受給にした場合の損益分岐点

Aさんが65歳から受給した場合と70歳から受給した場合の比較

●Aさんが65歳から70歳まで受け取れるはずの年金額は?

200万円 × 5年 = 1,000万円

●70歳からの繰下げ受給にした場合、増額分で1,000万円を何年で回収できる?

1,000万円 ÷ 84万円(1年の増額分) = 11.9年

⇒ 増額した年金を約12年受給すると、65歳から70歳になるまでの年金額を超える。
⇒ 82歳(70歳+12年)より長生きすると、総額で繰下げ受給のほうがトクとなる。

 つまり、82歳より長生きするかどうかが分岐点になります。
 厚生労働省の「平成30年簡易生命表」によると、65歳の男性の平均余命は19.70歳となっていますので、平均余命まで生きると仮定すれば、繰下げ受給は生涯年金額でトクになります。
 では、Aさんが平均余命の85歳まで生きると仮定して生涯年金額を比較してみましょう。なお、同じ年齢の女性の場合も見てみます。65歳の女性の平均寿命は24.5歳なので、90歳まで生きると仮定してみます。

【事例3:Aさんと繰下げ受給③】繰下げ受給をした場合の生涯年金額の比較

Aさんの本来の年金額と繰下げ受給による年金額の生涯年金額の比較(単純計算)

※下表の「男性」「女性」とも、Aさんの年金額(年額200万円)を用いています。

受給開始年齢 本来の年金額に対する割合 男性 女性
余命 生涯年金額 余命 生涯年金額
65歳 100.0% 20年 4,000万円 25年 5,000万円
66歳 108.4% 19年 4,119万円 24年 5,203万円
67歳 116.8% 18年 4,205万円 23年 5,373万円
68歳 125.2% 17年 4,257万円 22年 5,509万円
69歳 133.6% 16年 4,275万円 21年 5,611万円
70歳 142.0% 15年 4,260万円 20年 5,680万円

 Aさんが69歳からの繰下げ受給をして85歳になったところで亡くなった場合の生涯年金額は4,275万円、70歳からの繰下げ受給をして85歳になったところで亡くなった場合の生涯年金額は4,260万円と、年金額が多くても生涯年金額では逆転するケースもあり得ることには留意してください。

額面ほど手取り額は増えないことに要注意

 Aさんを例に、繰下げ受給によって年金額がどれくらい増えるのか見てきました。「繰下げ受給をした場合、82歳より長生きすると生涯に受給する年金総額が上回る」「最大5年、70歳からの繰下げ受給にすると、年金額は42%アップする」「65歳からの平均余命(男性なら約85歳)まで生きると、生涯年金額は大幅に多くなる」──。これらは、額面上だけで言えばそのとおりです。
 しかし、実際の手取り額は、そこまで増えないことに注意してください。
 ひと言で言うと、年金が増えた分だけ、税金(所得税や住民税)と社会保険料(国民健康保険料や介護保険料)も増えるのです。
 税金や社会保険料は、その他の収入の有無や家族状況、各種控除など、また自治体によっても変わってきますので簡単には計算できませんが、年金額が増えるほど手取り額への影響が大きくなるのは間違いありません。たとえば、5年繰り下げた場合の増額率42%は、実際には10%近く下がって、35%以下になる可能性もあります。そうなると、「ソン・トク」の分岐点も遅くなり、85歳まで生きたとしても繰り下げた分が回収できないようなケースも出てきます。
 本来の年金額がいくらであったかにもよるので一概には言えませんが、繰下げ受給にしたからといって額面ほど手取り額が増えるわけではないことは肝に銘じておきましょう。

point

1.年金の受給開始年齢を66歳以後に繰り下げると、年金額は繰り下げた期間の1ヵ月あたりで0.7%が増額される(最大42%増額される)

2.年金が増えた分だけ税金や社会保険料も増えるので、繰下げ受給をしても額面ほど手取り額が増えないことに注意する

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