国民年金の第2号被保険者が加入する厚生年金保険の保険料は、毎月の給与や賞与という「報酬」の額をもとに計算されますが、必ずしも固定していない「報酬」の額そのもので毎回計算し直すのは非常に煩雑です。では、どのような仕組みで保険料額は決められるのか、また、定年退職のあと継続して再雇用される場合の保険料額はどうなるのか、などについて解説します。
1「報酬」を一定の幅で区分した金額に保険料率を掛ける
「標準報酬月額」と「標準賞与額」
国民年金の第1号被保険者の保険料の額は、収入の多寡に関わらず誰もが同じ定額制で、令和2年度は16,540円、令和3年度は16,610円となっています。(※経済的に保険料を納めることが困難な人などのために保険料免除や学生納付特例などの制度があります。)
しかし、第2号被保険者が加入する厚生年金保険の保険料の額は、収入に応じて変わります。一人ひとりの収入は千差万別ですから、計算を簡単にし、事務を正確に速く行うため、「標準報酬月額」および「標準賞与額」というものが決められ、これに共通の保険料率を掛けることで、保険料額が決められます。保険料率は18.3%です(※厚生年金基金の加入者の保険料率は別に定められています。)
【図表1】標準報酬月額と標準賞与額
対象となる報酬 | 区分等の概要 | |
---|---|---|
標準報酬月額 | 基本給のほか、能率給、役付手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業手当等、労働の対償として現金または現物で支給されるもの。 年4 回以上支給される賞与を含む。 | 税引き前の給与の額を、1等級8万8千円)から32等級(65万円)までの区分に当てはめる |
標準賞与額 | 年3回以下の回数で現金または現物で支給されるもの。 役員賞与を含み、ボーナス、期末手当、年末一時金、もち代等、名称は問わない。 | 税引き前の賞与の額から1,000円未満の端数を切り捨てた額(150万円を超えるときは150万円とする) |
保険料は被保険者本人と事業主が折半で負担
保険料は被保険者本人と事業主とが半分ずつ負担することになっています。事業主は、被保険者の支給する給与や賞与から本人負担分の保険料を天引きし、翌月の末日までに事業主負担分と合わせて納付します。
なお、第2号被保険者の国民年金の保険料は、厚生年金保険から国民年金に拠出金として支払われますので、別途に国民年金保険料を負担する必要はありません。
標準報酬月額の等級とそれに応じた保険料額は、図表2のとおりとなります。
【図表2】厚生年金保険料額表
標準報酬 | 報酬月額 | 保険料 | ||
等級 | 月額 | 全 額 (18.3%) |
本人負担額 (9.15%) |
|
(以上)(未満) | ||||
1 | 88,000円 | ~ 93,000円 | 16,104円 | 8,052円 |
2 | 98,000円 | 93,000円 ~ 101,000円 | 17,934円 | 8,967円 |
3 | 104,000円 | 101,000円 ~ 107,000円 | 19,032円 | 9,516円 |
4 | 110,000円 | 107,000円 ~ 114,000円 | 20,130円 | 10,065円 |
5 | 118,000円 | 114,000円 ~ 122,000円 | 21,594円 | 10,797円 |
6 | 126,000円 | 122,000円 ~ 130,000円 | 23,058円 | 11,529円 |
7 | 134,000円 | 130,000円 ~ 138,000円 | 24,522円 | 12,261円 |
8 | 142,000円 | 138,000円 ~ 146,000円 | 25,986円 | 12,993円 |
9 | 150,000円 | 146,000円 ~ 155,000円 | 27,450円 | 13,725円 |
10 | 160,000円 | 155,000円 ~ 165,000円 | 29,280円 | 14,640円 |
11 | 170,000円 | 165,000円 ~ 175,000円 | 31,110円 | 15,555円 |
12 | 180,000円 | 175,000円 ~ 185,000円 | 32,940円 | 16,470円 |
13 | 190,000円 | 185,000円 ~ 195,000円 | 34,770円 | 17,385円 |
14 | 200,000円 | 195,000円 ~ 210,000円 | 36,600円 | 18,300円 |
15 | 220,000円 | 210,000円 ~ 230,000円 | 40,260円 | 20,130円 |
16 | 240,000円 | 230,000円 ~ 250,000円 | 43,920円 | 21,960円 |
17 | 260,000円 | 250,000円 ~ 270,000円 | 47,580円 | 23,790円 |
18 | 280,000円 | 270,000円 ~ 290,000円 | 51,240円 | 25,620円 |
19 | 300,000円 | 290,000円 ~ 310,000円 | 54,900円 | 27,450円 |
20 | 320,000円 | 310,000円 ~ 330,000円 | 58,560円 | 29,280円 |
21 | 340,000円 | 330,000円 ~ 350,000円 | 62,220円 | 31,110円 |
22 | 360,000円 | 350,000円 ~ 370,000円 | 65,880円 | 32,940円 |
23 | 380,000円 | 370,000円 ~ 395,000円 | 69,540円 | 34,770円 |
24 | 410,000円 | 395,000円 ~ 425,000円 | 75,030円 | 37,515円 |
25 | 440,000円 | 425,000円 ~ 455,000円 | 80,520円 | 40,260円 |
26 | 470,000円 | 455,000円 ~ 485,000円 | 86,010円 | 43,005円 |
27 | 500,000円 | 485,000円 ~ 515,000円 | 91,500円 | 45,750円 |
28 | 530,000円 | 515,000円 ~ 545,000円 | 96,990円 | 48,495円 |
29 | 560,000円 | 545,000円 ~ 575,000円 | 102,480円 | 51,240円 |
30 | 590,000円 | 575,000円 ~ 605,000円 | 107,970円 | 53,985円 |
31 | 620,000円 | 605,000円 ~ 635,000円 | 113,460円 | 56,730円 |
32 | 650,000円 | 635,000円 ~ | 118,950円 | 59,475円 |
【事例1】Aさんの厚生年金保険料
標準報酬月額は毎月の給与の額に応じて変わるわけではない
事例1は、10月支給の給与が328,000円だったAさんの保険料の計算例ですが、実際には、必ずしもAさんの標準報酬月額が20等級であるとして計算されるとは限りません。標準報酬月額は、毎月の給与額に応じて毎月改定するわけではないからです。
標準報酬月額の決定や改定の基本的な仕組みは、①厚生年金保険に加入時の決定、②定時決定、③随時改定の3つです。
【図表3】標準報酬月額の決め方
加入時の決定 | 入社時など、厚生年金保険に加入(被保険者の資格を取得)したときに、月給、週給、その他の賃金に基づいて報酬月額を決め、これをもとに標準報酬月額が決定される。 |
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定時決定 | 毎年4月・5月・6月の3ヵ月間の平均月収に基づいて、9月から翌年8月までの標準報酬月額が決定される。 |
随時改定 | 昇給・降給などで固定的賃金に変動があり、それ以後の引き続く3ヵ月間の平均月収に該当する標準報酬月額と、従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたとき、その翌月から標準報酬月額が改定される。 |
【事例2】定時決定の仕組み(Bさんの例)
【事例3】随時改定の仕組み(Bさんの例)
1.厚生年金保険の保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に共通の保険料率(18.3%)を掛けて計算される
2.厚生年金保険の保険料は、被保険者本人と事業主とが半分ずつ負担する
3.厚生年金保険の保険料の計算のもととなる標準報酬月額は、加入時に決定され、毎年1回定期的に決め直されるほか、その間に平均月収が大きく変動した場合には随時改定がなされる
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① 「報酬」を一定の幅で区分した金額に保険料率を掛ける