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くらしすとEYE
年金・社会保険
掲載:2020年7月15日

“目で見る”年金講座【第19回】
在職老齢年金は年金改正でどう変わる?

前回に続き、2020年年金改正の解説をします。今回は「在職老齢年金の見直し」です。在職老齢年金見直しのポイントは、①60歳台前半の在職老齢年金の支給停止基準額の引き上げと、②65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者の年金額の毎年改定導入の2点で、どちらも2022年4月に施行されます。どのように変わるのかを見てみましょう。

「60歳台前半の在職老齢年金」の基準額が引き上げに

対象者が限定されている「60歳台前半の在職老齢年金」

 60歳以降、働きながら老齢厚生年金を受け取る場合、給料の額に応じて年金の一部あるいは全額が支給停止される場合があります。この制度のことを「在職老齢年金」といいます。在職老齢年金の仕組みについては、第17回『在職老齢年金、退職した後の年金は?』でくわしく解説していますが、ここでもあらためて説明します。

 在職老齢年金は、年金の支給停止の仕組みが「60歳台前半」と「60歳台後半」で分かれていますので、まずは、60歳台前半の老齢厚生年金について確認しておきましょう。年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)が支給されるのは原則65歳からですが、生年月日によっては65歳になる前に「特別支給の老齢厚生年金」が支給されます。くわしくは、第9回『65歳になる前にもらえる老齢厚生年金って?』を参照してください。(※年金額が減額される「繰上げ受給」とは異なりますので、くれぐれも注意してください)。

【図表1】特別支給の老齢厚生年金である「報酬比例部分」の支給開始年齢

1953(昭和28)年4月2日~1961(昭和36)年4月1日生まれの男性

1958(昭和33)年4月2日~1966(昭和41)年4月1日生まれの女性には

「特別支給の老齢厚生年金」として「報酬比例部分」が下表のとおり支給される。

男性の生年月日 女性の生年月日 報酬比例部分の
支給開始年齢
1953年4月2日~1955年4月1日 1958年4月2日~1960年4月1日 61歳
1955年4月2日~1957年4月1日 1960年4月2日~1962年4月1日 62歳
1957年4月2日~1959年4月1日 1962年4月2日~1964年4月1日 63歳
1959年4月2日~1961年4月1日 1964年4月2日~1966年4月1日 64歳

 60歳以降、働きながら(厚生年金保険に加入しながら)「特別支給の老齢厚生年金」を支給される人が「60歳台前半の在職老齢年金」の対象となります。1961年4月2日以後生まれの男性、1966年4月2日以後生まれの女性には、「特別支給の老齢厚生年金」は支給されません。したがって、「60歳台前半の在職老齢年金」の対象となるのは、それより前に生まれた世代のみとなります。

「60歳台前半」の支給停止基準額が「60歳台後半」と同じ47万円に

 現在の在職老齢年金の仕組みでは、「60歳台前半」では、「月収」と「年金月額」の合計額が28万円を超えると、年金額の一部または全額が支給停止となります。この28万円という基準額が、2022年4月から「60歳台後半」と同じ47万円に引き上げられます。
 なお、説明の中で用いている「月収」「年金月額」については、図表2で定義しておきます。

【図表2】在職老齢年金の支給停止の基準の変更

月  収:「その月の標準報酬月額」+「直近1年間の賞与の合計額÷12」
※年金用語では「総報酬月額相当額」といいます。

年金月額: 老齢厚生年金(年額)を12で割った額
※年金用語では「基本月額」といいます。

 60歳台前半の在職老齢年金の支給停止額の計算方法がどのように変わるのか、現行と改正後で比較してみましょう。(改正後の計算方法は、現在の「60歳台後半の在職老齢年金」の計算方法と同じです。)

【図表3】60歳台前半の在職老齢年金の支給停止額の計算式の変更

支給停止額

計算式①  (月収+年金月額-28万円)÷2×12月
計算式②  月収÷2×12月
計算式③  {(47万円+年金月額-28万円)÷2+(月収-47万円)}×12月 
計算式④  {47万円÷2+(月収-47万円)}×12月

 では、この改正によって年金額がどれくらい変わるのかを事例で見てみましょう。

【事例1】60歳台前半の在職老齢年金:支給額はどう変わる?

Aさん 1958(昭和33)年4月生まれの女性

①2018年4月に60歳で定年後も、月給32万円で働いている。

②2019年4月に61歳となり、一部支給停止された特別支給の老齢厚生年金(在職老齢年金)が支給されている。

③2022年4月に在職老齢年金制度が改正施行される。

●月給32万円・賞与なし(60歳以降変わらないものとする)
●本来の老齢厚生年金額は180万円(年金月額15万円)

① 2018年4月~

月収32万円 + 年金0円/月 = Aさんの合計収入:32万円/月

② 2019年4月~(※図表3の「現行」を参照のこと)

  ・月収と年金月額の合計額が28万円を超えるので年金支給額が調整される。
  ・月収が47万円以下、年金月額が28万円以下なので、
  【計算式①】(32万円+15万円-28万円)÷2×12月により114万円が支給
  停止

  月額9.5万円の支給停止で、年金支給額は15万円-9.5万円=5.5万円(月額)

月収32万円 + 年金5.5万円/月 = Aさんの合計収入:37.5万円/月

③ 2022年4月~(※図表3の「改正後」を参照のこと)

  ・月収と年金月額の合計額が47万円を超えないので年金は全額支給される。

月収32万円 + 年金15万円/月 = Aさんの合計収入:47万円/月

 Aさんは現在、月額にして9.5万円が支給停止されていますが、2022年4月からは全額支給されることになります。今回の改正により大きなメリットがあると言えます。

改正の恩恵は一部の世代に限られる

 該当する人には大きなメリットがある見直しですが、そもそも「特別支給の老齢厚生年金」は、1961年4月2日以後生まれの男性、1966年4月2日以後生まれの女性には支給されないことは冒頭に説明しました(図表1)。つまり、今回の改正は、男性については2025年度、女性については2030年度で終了する制度である「特別支給の老齢厚生年金」を前提としたものであり、改正の恩恵を受けられる世代も、高齢者の就労に与える影響も一部に限られます。

 そういう意味では、高齢者の働き方を考えるうえでは、「60歳台後半の在職老齢年金」を見直すことが本来の課題といえるでしょう。今回の改正にあたっても、現行の47万円という基準額を62万円に引き上げるという案や、在職老齢年金制度そのものを完全に撤廃するという案も議論されました。しかし、年金財政への影響や高所得の高齢者を優遇するものであるとの指摘などもあって見送られました。
 いずれにしても、超高齢社会で労働力人口が減少していく中、「高齢で働くと年金が減るのでソンだ」「働かないほうがトクだ」などと、働きたいと考える高齢者の就労意欲を削ぐことがないような制度が望まれます。

point

1.60歳台前半の在職老齢年金の支給停止の基準となる額が、28万円から47万円に引き上げられることになった(2022年4月施行)

2.この見直しにより、在職中の年金支給額が増える人がいるが、その恩恵を受けられるのは、一部の世代に限られる

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