ご質問に関するご回答【ご質問】在職老齢年金は繰上げ受給・繰下げ受給ができますか?
在職老齢年金も繰上げ受給・繰下げ受給の両方ができます。ただし、特別支給の老齢厚生年金については繰下げ受給ができません。また、給与(総報酬月額相当額)との関係で支給停止の調整を行った後の年金額が減額分・増額分の計算対象となります。ですから繰上げ・繰下げ受給の効果がなかったり、生活設計に誤算が生じてしまうこともありますから、十分な注意が必要です。
特別支給の老齢厚生年金(在職)の場合
【繰上げ受給】
就労しながら老齢年金を繰り上げると、老齢基礎年金には影響がありませんが、老齢厚生年金の本来の年金額は繰上げ受給で減額され、さらにその年金額に対して在職による支給調整が行われます。
〈例〉1962(昭和37)年4月2日生まれの女性の場合
※年金制度改正法により、2022(令和4)年4月以降は1962年4月2日以降生まれの方を対象に繰上げ期間は減額率:1ヵ月あたり0.4%に緩和されました。
上記の支給率は、老齢厚生年金の減額率は14.4%、老齢基礎年金の減額率は24.0%になります。
なお、1962年4月1日以前生まれの方の減額率は0.5%のままです。
【繰下げ受給】
〈例〉1957(昭和32)年4月2日生まれの男性の場合
65歳以上の老齢厚生年金(在職)の場合
【繰上げ受給】
就労しながら老齢年金を繰上げた場合、老齢厚生年金の年金額は「繰上げ受給」により減額され、そして、更に、その年金額に対して「在職による支給調整」が行われることになります。
なお、老齢基礎年金の年金額は、在職による支給調整は行われません。
〈例〉1965(昭和40)年4月2日生まれの男性の場合
【繰下げ受給】
〈例〉1965(昭和40)年4月2日生まれの男性の場合
【在職しながら「繰上げ受給」を請求する時の注意点】
就労している方が「繰上げ受給」を請求した場合、在職により支給調整された年金額(在職老齢年金)が「繰上げ受給」による減額率の対象となります。
在職老齢年金により支給停止分がある場合は、ご自身が思っている以上に年金が減額されてしまうので、ご注意ください。
就労しながら繰上げ受給を行うと、在職により支給調整された年金額(報酬比例部分)が繰上げの減額の対象となります。支給停止分がない人は影響を受けませんが、支給停止分がある人はご注意ください。
誤りやすい例:在職で繰下げ受給をする場合
※年金は2024(令和6)年度の価格
〈例〉Aさん(会社員・57歳・男性)の場合
Aさんは1965(昭和40)年4月2日生まれで65歳から老齢年金を受け取れる。Aさんの会社は65歳以降も給料月額40万円(総報酬月額相当額)で就労可能。69歳までは同じ賃金条件で就労できるため、70歳まで年金の受給を引き下げる予定。
老齢基礎年金は満額(816,000円)、老齢厚生年金を1,500,000円(基本月額12.5万円)とする。
誤り
70歳までは40万円で就労すると、支給停止分は〔(12.5万円+40万円−50万円)×0.5〕=1.25万円となり、在職老齢年金は11.25万円となる。退職して70歳からは42%増額の老齢厚生年金を受け取れるので老齢基礎年金は1,158,720円、老齢厚生年金は2,130,000円〔(12.5万円+12.5万円×42%)×12月〕になる。
老齢基礎年金 + 老齢厚生年金 = 3,288,720円
正解
70歳までは40万円で就労すると、支給停止分は〔(12.5万円+40万円−50万円)×0.5〕=1.25万円となり、在職老齢年金は11.25万円となる。70歳まで繰下げるとこの額の42%分47,250円(月額)が増額されます。つまり、退職歳からは42%増額の老齢厚生年金を受け取れるので老齢基礎年金は1,158,720円、老齢厚生年金は2,067,000円〔(12.5万円+11.25万円×42%)×12月〕になる。
老齢基礎年金 + 老齢厚生年金 = 3,225,720円
ご自身が思っているより、年金額が増えない
なお、2022(令和4)年4月以降に70歳を迎える人から、繰下げ受給による年金開始時期の選択肢が75歳までに拡大されています。