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「遺言書」に関する掲載もいよいよ最終回です。
皆さんが感じている疑問をいくつかピックアップして、「遺言書」に関するQ&Aとしてまとめてみました。
短い回答には解説で補足していますので是非活用ください。

【遺言書Q&A①】遺言書内容と遺留分で優先されるのはどっち?

私は、父、母、自分、妹という4人家族です。
父が亡くなり遺言書に全ての資産を母に相続させると記載されていました。
長男の私には相続分はないのでしょうか?

ご自身にも相続分があります。
法令ではそのことを「遺留分」と言います。たとえ遺言が公正証書にしたものであっても遺留分侵害額請求の対象から外れることはありません。遺留分制度はもともと残された人の生活を守る意味合いがあります。

【遺言書Q&A①】の解説

遺留分侵害額請求とは

法定相続人は、遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求権を行使して、特定の財産を継承した受遺者(遺産を受け取る人)や、指定された相続分を受けた相続人、あるいは受贈者(財産を贈与してもらう人)に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。

請求の方法

請求の方法はいくつかありますが、「話し合い」「内容証明郵便」「家庭裁判所に家事調停」「遺留分減殺請求訴訟」があります。決定した場合は遺言書に優先されます。

遺言書は法的に有効であれば基本的に尊重されます。しかし、遺留分を侵害した遺言書は最悪の場合無効となってしまうことがあります。そのため、遺言書は遺留分を侵害しない範囲で遺言を書くことが重要です。

遺留分の時効
遺留分侵害額請求権の時効 相続開始と遺留分の侵害を知ったときから1年(民法1048条前段)
遺留分侵害額請求権の除斥期間 相続開始から10年(民法1048条後段)
金銭支払請求権の時効 遺留分侵害額請求の意思表示をしてから5年(民法166条1項1号)

【遺言書Q&A②】寄与分について

父の介護を全て私が担ってきました。何も手伝わなかった兄弟よりも遺産を多くもらえるのではと考えています。
私は他の兄弟よりもたくさん遺産をもらえるのでしょうか?

他の兄弟よりたくさんの遺産をもらえる可能性があります。
但し、一般的な感覚に頼るとたくさんもらえない場合がありますので、介護についての貢献度合いを行動内容や数字などで具体的に示す必要があります。

【遺言書Q&A②】の解説

たとえば、「亡くなった家族(被相続人)の家業を無報酬で手伝っていた」や「会社を辞めて長期にわたり介護を担当していた」などの事情がある場合です。この制度は「寄与分(きよぶん)」と呼ばれ、被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をした相続人に、法定相続分を超える財産を相続できる権利を与えています。

この寄与分に関しては、しばしばトラブルが発生します。
特に、親の介護を行ってきた子と介護をしなかった子の間で衝突することが多いのです。寄与分の金額は基本的に相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で決定しますが、意見が一致しない場合は、裁判所の調停により話し合い、それでも解決しない場合は裁判所の審判により最終的な判断を仰ぐことになります。

なお、寄与分の対象は相続人に限られます。内縁の妻には相続権がないため、対象外です。ただし、息子の妻などの相続人以外の親族は、相続人に対して「特別寄与料」を請求することができます。

しかしながら、親の介護をしているだけでは寄与分が認められにくいといえます。
寄与分の要件(*)が厳しい点と被相続人と相続人の身分関係から通常期待される程度を超える行為であることが認められなければなりません。「親の食事の世話をしていた」とか「病院の送り迎えをしていた」では弱いです。通常期待される程度を超える行為であることが重要になります。「親の介護をすべて自分で行っていた」とか「仕事を退職して介護をしていた」などは特別の寄与として認められる可能性が高くなります。

(*)特別の寄与と認められるためには

対価を受領していないこと

家族として通常期待される程度を超える行為であること

介護などの行為に専念していたこと

長期間継続したこと

【遺言書Q&A③】 配偶者居住権について

二次相続対策として自宅を娘と息子に相続させる予定ですが、私と妻で建てた家なので、妻が死ぬまでは自宅に住まわせたいと思っています。妻が遺言で家を相続できなくても同じ家に住み続けることはできるのでしょうか?

はい、そのまま住み続けることができます。
その権利を配偶者居住権といいます。
但し、内縁の妻では住めませんので注意が必要です。

【遺言書Q&A③】の解説

配偶者居住権とは

2020年4月1日に施行された改正民法で新設された制度になります。亡くなった方が所有していた不動産に亡くなった方の配偶者が住み続けられる権利です。不動産の所有者が子供など配偶者と別の人になる点が特徴です。また配偶者居住権は原則として亡くなるまで無償で住み続けることができます。
配偶者の住居が確保できることや相続財産に占める不動産が高額である場合、配偶者の老後の生活を考えて預貯金などの金融資産を相続させたい場合など様々な場面で活用され始めています。
ただし、下記のデメリットもありますので、注意が必要です。

配偶者居住権のデメリット

配偶者居住権付き物件は売却が困難

配偶者居住権の権利の売買はできない

配偶者と所有者のトラブルが起こることも

配偶者の住居を確実に確保できるメリットは大きいと思います。また遺産分割を円滑に、また、バランスをとりながら行えることを考えると大きなメリットがあります。設定には法的要件、税務的要件等様々あります。また他人に主張するためには登記手続きを経る必要があります。それぞれの専門家に相談しながら手続きを進めることをお勧めします。

【遺言書Q&A④】遺言書の訂正について

自筆証書遺言を書きましたが、年数が経ち変更したいと考えています。どのような変更の方法が良いですか?

遺言書を変更するには法律で定められているルールがありますので、そのルールに則って変更するか、新しい遺言書を作成するという方法があります。
もし誤った方法で変更した場合、遺言書が無効になることもありますので注意が必要です。

【遺言書Q&A④】の解説

民法では遺言者は、いつでも、遺言の方法に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができると定められています。新しい遺言書の中で修正したい部分を「撤回する」または「変更する」と明記する方法があります。しかし、法律にそった手続きで訂正しなければならず、新しい遺言書を作成してしまったほうが簡単なケースが多くあります。

訂正の方法

修正箇所に二重線を引きます。横書きの場合二重線の上部に正しい文章を、縦書きの場合はその横に正しい文章を記載します。二重線の横に訂正印を押します。訂正印は遺言書で使用した印鑑を使用します。そして遺言書の最後に訂正した内容を書いて署名します。

上記に遺言書の変更例を掲載しましたが、間違いなどによる法的リスクを考えますと新たに遺言書を一から作成することをお勧めいたします。

【遺言書Q&A⑤】法務局による「自筆証書遺言保管制度」とは

最近たまに聞く法務局の「自筆証書遺言保管制度」ってなんでしょうか?

自筆証書遺言を法務局が安全に保管してくれる制度です。
2020年に始まりましたが、「自筆証書遺言の紛失防止」、「改ざんのリスクをなくせる制度」として注目されています。

【遺言書Q&A⑤】の解説

法務局による「自筆証書遺言保管制度」

法務局による自筆証書遺言の預かり制度は、自筆証書遺言の安全な保管と、遺言者の意志の確実な実現を支援するための重要な制度です。この制度の詳細について、以下で解説します。

制度の概要

法務局による「自筆証書遺言保管制度」は、遺言者が自ら作成した自筆証書遺言を法務局に預けることにより、遺言書の紛失や盗難、改ざんを防ぎ、遺言者の死後、スムーズに遺言が発見され、適切に執行されることを目的としています。この制度は、遺言者が生前に自身の遺言書を安心して保管できる場所を提供し、遺言の秘密保持とともに、遺言の安全性を高めます

預かりの手続き
遺言書の作成 遺言者は自筆証書遺言を自らの手で書きます。全文、日付、氏名の記載および署名押印が必要です。
法務局への申請 遺言書を法務局に預けるには、遺言書とともに身分証明書を持参し、遺言書の預かりを申請します。
遺言書の封筒に入れる 遺言書は封筒に入れられ、封印されます。この封印は遺言者自身によって行われ、封筒には遺言者が封印したことを示す印が押されます。
預かり料の支払い 法務局に遺言書を預ける際には、1件につき3,900円の手数料が必要です。
預かり証の交付 法務局から遺言書の預かり証が交付されます。これにより、遺言書が法務局に正式に預けられた証拠となります。

預かりの利点

•安全性の確保:
法務局に預けられた遺言書は、高い安全性を持つ施設で保管されます。これにより、遺言書の紛失や盗難、改ざんのリスクが極めて低くなります。
•遺言の発見が容易:
遺言者の死後、遺言書の存在がすぐに家族や関係者に知らされるため、遺言の執行が迅速に行われます。
•信頼性の向上:
法務局に保管された遺言書は、その公的な記録としての信頼性が高まり、遺言内容に対する異議申し立てが減少します。

注意点

•定期的な更新の必要性:
遺言内容に変更があった場合は、新しい遺言書を作成し、再び法務局に預ける必要があります。旧遺言書は取り消し、新しい遺言書が有効となります。
•預かり手数料:
遺言書の預かりには手数料が伴いますので、この点を事前に確認し、準備しておくことが重要です。

法務局による「自筆証書遺言保管制度」は、遺言者にとって非常に有効な手段であり、遺言の安全性と信頼性を確保する上で大きな役割を果たします。遺言者の意志が確実に実現されるためにも、この制度の利用を検討する価値は大いにあります。遺言の作成と保管に関して不安がある場合や、遺言内容の重要性が高い場合には、特にこの制度の活用が推奨されます。

まとめ

遺言は法律的には単独行為であり、自身の思いを書面で残す法的な手紙と言えます。ご自身の死後自分の意思を家族に伝えるための書類となりますが、生前にご家族にお伝えすることもとても大切だと考えています。また、これまでの私の経験から遺言書を作成する際、配偶者だけでなく大切なご家族と話し合い、相談することで、ご自身がいなくなった後のトラブルが少なくなっていることを知っていただきたいと思います。
ご自身を含めた大切な家族でコミュニケーションを図りながらこの遺言書を作成する事を通じて、将来に向かってさらに良い家族関係が築かれることを遺言書作成に携わる専門家として切に願っております。

本記事に記載されている情報は、公開時点でのものであり、時間の経過と共に変更される可能性があります。記載されている内容は一般的な情報提供を目的としており、具体的な法的アドバイスを提供するものではありません。また、業界間の問題が発生しないように注意を払って作成されていますが、個別の法的問題や疑問に関しては、専門家にご相談いただくことをお勧めします。

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