『2024年度の年金額改定』について学ぶ

2024(令和6)年度が始まりました!
年金事業は基本的に「年度」で動きます。
1月~3月は実際の年と「年度」が違うので、ちょっと混乱しますよね。

そして、年金は年度の開始に合わせて各種年金額も改定します。
それでは、早速、本題の2024(令和6)年度の年金額改定について見ていきましょう。

老齢基礎年金は増額で切り良くなります。老齢厚生年金も増額

私が住んでいる東京では、ランチを外食で取ろうと思ったら、1,000円では足りないことが珍しくありません。
物価上昇の傾向を肌で感じ取れるのは私だけではないでしょう。
昨年(令和5年度)は円安もあって、物価上昇の傾向は止まりませんでした。そんな現況も相まって、老齢年金の受給額も増額となっています。

まずは、国民年金の「老齢基礎年金」を見てみましょう。
2024(令和6)年度の老齢基礎年金の満額は68,000円(年額816,000円)です。切りが良くなりましたね。
なお、昭和31年4月1日以前生まれの方(69歳以上)は、67,808円(年額813,700円)です。

2023(令和5)年度
《月額》
2024(令和6)年度
《月額》
増加額
新規裁定者満額
(67歳以下)
66,250円 68,000円 1,750円
既裁定者1満額
(68歳)
66,050円 68,000円 1,950円
既裁定者2満額
(69歳以上)
66,050円 67,808円 1,758円

「年金額改定率」は昨年度に比べると2.7%の上昇(下図参照)です。
今回は、賃金変動率が物価変動率を下回っているため賃金変動率を用いています。(※1)
また、昨年度に引き続き今回も「マクロ経済スライド」は適用されました。
「マクロ経済スライド」は、現役世代の人口減や平均余命の伸びに合せて、年金の給付水準を自動的に調整するシステムです。

(※1)上記の詳しい内容につきましては、弊協会サイト:「年金額の改定ルールを学ぶ」をご覧ください。

ちなみに昨年の上昇率は1.9%なので、さらに加速して受給額が上がったことになります。

●2024(令和6)年4月からの年金額改定(イメージ)

2024(令和6)年4月からの年金額改定(イメージ)

※厚生労働省:令和6年1月19日プレスリリースをもとに弊協会で作成

なお、68歳到達年度の受給者(「新規裁定者」といいます)はその金額を決めるために、「名目手取り賃金変動率」という指標を使います。後に述べる68歳以上の方に比べて、現役世代に近いので、賃金の変動をある程度加味させていることになります。

それに比べて68歳到達年度以降の受給者(「既裁定者」といいます)はその金額を決めるために、既出の名目手取り賃金変動率ではなく、物価変動率の指標が使われます。

一昨年まではこの二者の金額は同一額でした。
しかし、昨年の改定に賃金上昇率が物価上昇率を上回ったため、新規裁定者の方が高くなったのです。

前述のとおり、2024(令和6)年度の年金額決定においては物価上昇率が賃金上昇率を上回ったため、既裁定者も賃金上昇率を取ります。
何度かこのページでもご紹介している年金額の改定ルールによれば、今回は「」のパターン(※2)となり、最終的には同じ年金額改定率となります。

(※2)昨年度は「」のパターンでした。詳しくは弊協会サイト:「『2023年度の年金額改定』について学ぶ」をご覧ください。

●年金額の改定(スライド)のルール

年金額の改定(スライド)のルール

※厚生労働省:令和6年1月19日プレスリリースより抜粋

また、「老齢厚生年金」も同パーセンテージで上昇しました。
「老齢厚生年金」は、収入に応じた保険料の総額で年金額が決まります(※3)ので、「老齢基礎年金」とは違い、どのくらい増額になるのかを言うことはできません。

厚生労働省の試算によると、平均的な収入(平均標準報酬(賞与を含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合、受け取り始める年金(「老齢厚生年金」と2人分の「老齢基礎年金(満額)」は月額230,483円になるとしています。この金額は前年度より6,001円の増額です。

年金を受給している方の「年金額の通知」は、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」とセットで通知されますので、だいたい同じくらいの割合で上がったと認識していただいても結構です。

(※3)「老齢厚生年金」の計算方法につきましては、弊協会サイト:「「年金はいくらもらえるのか?」を学ぶ③~老齢厚生年金の計算の仕方~」をご覧ください。

物価は上昇しているが、その伸びは鈍化傾向

厚生労働省の資料によりますと、2023(令和5)年の消費者物価指数は生鮮食品をのぞく総合指数が前年より3.1%の上昇となっており、これは第2次石油危機の影響があった1982(昭和57)年以来の水準ということです。実質消費はマイナスに転じており、この上げ幅で物価上昇をカバーしきれるかというと疑問であるというのが正直なところでしょう。

●指数の動き

指数の動き

※総務省:2020年を100とした消費者物価指数より抜粋

また、冒頭で物価上昇が肌で感じられると申し上げましたが、月毎に見ると、2022(令和4)年度に比べて、2023(令和5)年度はその勢いが鈍化しています。

●生鮮食品を除く総合の消費者物価指数の前年同月比

●生鮮食品を除く総合の消費者物価指数の前年同月比

※総務省:2020年基準消費者物価指数 全国2023年(令和5年)平均の表から作成

消費者物価指数を月単位で見ると、2023(令和5)年1月をピークに緩やかな鈍化傾向にあります。エネルギー料金の政府の抑制策に効果が出てきており、生鮮品以外の食料品高も一服感がみられたりしています。

年金の受給金額はこれらの指標を元に、遅れて施策が取られます。
よって、今後は昨年や今年のような年金受給額の伸びは期待できない可能性があることも押さえておきましょう。

国民年金保険料も変更です

こちらは受け取る方ではなく、払う方です。
2023(令和5)年度は月額16,520円でしたが、2024(令和6)年度は16,980円、2025(令和7)年度は17,510円となります。2年前納という制度があるので、翌年分も毎回発表になります。

◆【国民年金保険料の金額】

2024(令和6)年度 2025(令和7)年度
法律に規定された保険料額
(2004(平成16)年度水準)
17,000円 17,000円
実際の保険料額
*( )は前年度との差額
16,980円(+460円) 17,510円(+530円)

●保険料額の計算方法

保険料額の計算方法

※日本年金機構「将来の国民年金保険料額」の決め方より

ここで言う「2004(平成16)年の制度改正で決められた保険料額」というのは、2019(令和1)年度以降17,000円です。
つまり、17,000円を基準に、物価変動、賃金変動に合わせて調整されるもの、という理解で間違いないでしょう。

ちなみに、10年前となる2014(平成26)年度の国民年金保険料は15,250円、20年前となる2004(平成16)年度だと13,300円でした。お金の価値がそれだけ変わっているのですから、ランチが1,000円で食べられないのも仕方ないかもしれません。

今年度変わったものはこれだけではない

他に金額が変わったものもあります。
まだまだ変更点はありますので、次回はこの続きの解説をさせていただきます。

年金額の額面は確かに上がりますので、既に受給者である方は、それを楽しみにしていただいて良いと思います。
では、次回もお楽しみに!

- 次回予告 -

『2024年度の年金額改定』について学ぶ②
~老齢年金以外の改定内容~

次回、くらしすとEYEの年金を学ぶ【第27回】では、
"『2024年度の年金額改定』について学ぶ② ~老齢年金以外の改定内容~"
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