年金シミュレーション
年金シミュレーション
『遺族年金』を学ぶ

「年金はいくらもらえるのか?」を学ぶシリーズもいよいよ最終回です。
今回は老齢年金のよくあるQ&Aをまとめてみました。
ちょっとした疑問をここで解消しておきましょう。

【老齢年金Q&A①】
年金は自動的にもらえるの?

老齢年金は65歳になったら、自動的にもらえるの?

年金は自動的にもらうことはできません。
老齢年金に限らず、年金の受給は申請主義となっています。
そのため、きちんと申請(手続き)をしないと受け取れないのです。

【老齢年金Q&A①】を
ちょこっと解説

「障害」や「死亡」を要件とした年金と違い、「年齢(高齢になる)」は自動的に来るものなので、そんな面倒くさいことしなくてもいいじゃないか、と思うかもしれません。
しかしながら、個々の事情によって、年金受給の可否や受け取るタイミングが変わるため、役所としても自動的に年金を配るというわけにはいかないのです。

老齢年金は、その受給開始年齢に到達する3カ月前に日本年金機構から「基礎年金番号」、「氏名」、「生年月日」、「性別」、「住所」および「年金の加入記録」をあらかじめ印字した『年金請求書(事前送付用)』と『請求手続きの案内書』を本人あてに送付されます。

その『年金請求書』に記載されているご自身の年金情報を確認したうえで、内容を記入し、必要書類を添えたうえで最寄りの年金事務所等へ提出します。

なお、必要書類は下記のとおりです。

・戸籍謄本(または戸籍抄本、住民票の写し)
※『年金請求書』にマイナンバーを記入することで省略できます。

・本人名義の金融機関通帳、キャッシュカードのコピー
※『年金請求書』に金融機関の証明印を受けた場合は不要です。

・その他、状況によって提出を求められる書類 等

詳しくは弊協会サイトの下記ページをご覧下さい。
「はじめて老齢年金をもらう人の手続き」

年金を受け取れる時期が近づいてきたら、ご自身のマイナンバーカードはもちろん、ご家族のマイナンバーカードもご用意された方が良いでしょう。

【老齢年金Q&A②】
年金の請求書類は、届いたら直ぐに返送してもいいの?

老齢年金の請求手続き書類を受け取りました。
すぐに返送して良いのでしょうか。

老齢年金の手続きができるのは、ご自身の誕生日前日以降です。
誕生日前に書類を郵送すると、返送されることもあります。

【老齢年金Q&A②】を
ちょこっと解説

私もこのような書類は忘れないようにすぐに提出したい性格なのですが、実は、年金の手続き自体がその権利が発生した後でないとできないのです。
それに、年金事務所で保管すると言っても大量の書類を事前に受け取ることになるので、限界があるのかもしれません。

もし、誕生日前に請求手続き書類を郵送した場合には、原則返送されてしまいます。
ご注意ください。

なお、誕生日の前日以降であれば、郵送でも年金事務所の窓口でも手続きは可能です。
また、提出先は下記となります。お間違えのないようにしてください。

●『年金請求書』の提出先

『年金請求書』の提出先

【老齢年金Q&A③】
年金は手続きして、いつからもらえるの?

実際に手続きしてから年金は、いつから入金されるのでしょうか。

支給の対象となるのは、誕生日月の翌月分からです。
年金は年6回、原則として偶数月の15日(休日分は前倒し)に支給される後払い制です。

【老齢年金Q&A③】を
ちょこっと解説

例えばですが、3月15日に65歳の誕生日を迎える方(下図を参照)では、誕生月の翌月4月から支給対象となります。

年金は、年6回、原則として偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)の15日前月と前々月の2ヶ月分が支給されます。

ということは、誕生日の前日:3月14日に手続きをしても、年金を受給できるのは6月15日になります。
『年金は必ず後払いになる』というのは、覚えておいた方が良いでしょう。
少し時間がかかっているようにも思えますが、年金は支給が“確定”してから受け取れるものであるため、ご容赦ください。

ちなみに、なぜ、偶数月なのかというと、社会保険が年度で考えられているためです。
4月からスタートするので、4月が開始月になるのですね。

●まとめ

年金の支給日

【老齢年金Q&A④】
年金は現金でもらえるの? 振込先を変更したいときは?

年金を現金で受け取ることはできますか?
もし、できないのなら、私以外の口座名義人あてに送金してもらうことはできるのかしら?

年金は現金で受け取ることは可能です。
ただし、年金の振込先はご自身の口座に限られます。
そのため、他の方の口座への送金はできません。

【老齢年金Q&A④】を
ちょこっと解説

実は、年金を現金で受け取ることは可能なのです。
通常は振込で受け取るものなので意外かもしれません。
ただし、事前に日本年金機構へ申し込みをしておくことが必要になります。
実際に現金を受け取ることができるのは、本人が指定した郵便局(ゆうちょ銀行)のみになります。 毎回、年金支給月の10日頃に届く「年金送金通知書」を持って指定の郵便局(ゆうちょ銀行)に行って受け取ることになります。

また、年金の受給権とは、そもそも他人に譲れない、という理由で、自分以外の口座へ年金が送金されることはありません。そのため、ご自身で管理するのは面倒だからといって、お子さんやお孫さんにまかせるという訳にはいかないのです。

なお、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」を別々の口座で分けることは不可です。
同じ種類の年金は一つの口座しか指定できません。
ただし、2つの種類の年金(老齢+障害の組み合わせなど)の場合は別口座にすることも可能です。

●年金の受取銀行や住所を変えるとき

年金の振込先の銀行やご自身の住所を変更される場合は、日本年金機構への届出が必要になります。
変更する事由が生じた場合は、忘れずに書類を提出しましょう。

届出書類は、下記の日本年金機構のホームページをご覧ください。
「年金を受けている方が年金の受取機関や住所を変更するとき」

【ご注意】
実際には、口座が変更されるまで相当な時間を要します。
年金を受給されている方には増えすぎた口座を整理される方もいらっしゃると思います。
変更後の口座に年金が振り込まれるのを確認した後に、前の口座を解約するようにしましょう。

年金事務所に相談を

【老齢年金Q&A⑤】
老齢年金を受け取っていた人が亡くなった場合の手続きは?

老齢年金を受給している方が亡くなった場合、どうなりますか?

最初に行う事は、遺族が「死亡の届出」を提出することです。
そして、必ず発生する「未支給年金」を請求し、最後に「遺族年金」を受け取れるのかを確認することです。

【老齢年金Q&A⑤】を
ちょこっと解説

年金の受給権は亡くなったときに消滅します。
しかしながら、「死亡届」を提出しないと、いつまでも支給されてしまいます。
もし、過払い年金(もらい過ぎの年金)が発生した場合は返納しなければなりません。
したがって、年金をもらっている人が亡くなったとき、遺族はすみやかに死亡届を提出する必要があります。

●「死亡届」の提出

届出用紙 年金受給者死亡届(報告書)
添付書類 ①亡くなった人の年金証書
②死亡の事実を明らかにできる書類(戸籍抄本、死亡診断書のコピー等)
提出期限 国民年金は死亡日から14日以内
厚生年金保険は死亡日から10日以内
提出先 最寄りの年金事務所または街角の年金相談センター
備考 日本年金機構にマイナンバーが収録されている場合は提出が省略できる。

また、「未支給年金」とは、受給する権利はあるけど、実際に受け取れていない年金のことです。
Q&A③で年金は後払いであることを説明しました。
つまり、最後に年金を受け取ってから亡くなるまでの未支給年金が発生するということです。

年金は死亡月まで支払われます。例えば7月中に亡くなった場合、最後に6月15日に年金を受給したことになります。内訳は4月と5月の分です。
つまり、6月と7月の分が「未支給年金」となります。(下図参照)

●未支給年金

未支給年金

なお、「未支給年金」の請求者は、死亡日において亡くなった人と生計を同じくしていた遺族に限られます。
子どもであっても、既に生計を同一にしていないという場合には未支給年金の受給はできません。
もっとも、生計は別でも子どもなら「生計同一申し立て書」を記載することで、比較的認められやすい傾向にあります。生計同一にあたるかどうかは、最寄りの年金事務所等で確認しておきましょう。

なお、「未支給年金」の受給の有無にかかわらず、死亡の届出をしておかないと、引き続き年金が振り込まれ、後でその年金の返還を求められる可能性があります。
人が亡くなった直後というのは相続等で慌ただしい時期になりますので、その手続きは忘れないようにしておきましょう。

また、今回のテーマとはずれてしまうのですが、年金受給者が亡くなったときには遺族年金の確認も重要です。
遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)は、現役の被保険者だけでなく年金受給者が亡くなった場合にも、条件が合えば遺族に支給されます。
年金受給者が亡くなったときには、死亡届の提出と未支給年金の請求に続いて、遺族年金が受給できるかどうかを確認するようにしましょう。

※「遺族年金」の詳しい内容は下記ページの「遺族年金を学ぶ」をご参照ください。
「『遺族年金』を学ぶ① ~誰が受け取れるのか?~」

【老齢年金Q&A⑥】
老齢年金を受け取らずに亡くなってしまった場合は?

老齢年金を受け取らずに亡くなってしまった場合はどうなりますか?

亡くなった方の遺族は「死亡一時金」を受け取ることができます。

【老齢年金Q&A⑥】を
ちょこっと解説

要件は死亡日前日において国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある方で、老齢基礎年金(老齢障害年金)を受け取ることなく亡くなった時です。
生計を同じくしていた遺族が受け取れます。

●「死亡一時金」の年金額

保険料納付済期間+免除期間(月) 死亡一時金の額
36月以上180月未満 120,000円
180月以上240月未満 145,000円
240月以上300月未満 170,000円
300月以上360月未満 220,000円
360月以上420月未満 270,000円
420月以上 320,000円

※死亡した人が付加保険料を36月以上納付していた場合は、8,500円加算されます。

※「死亡一時金」の詳しい内容は「くらしすと」サイトの下記ページをご覧ください。
「子どもがいない第1号被保険者の妻は、夫が亡くなっても何も給付されないのですか?」

老齢年金を学んで、安心の老後を

6ヶ月に亘って、老齢年金の解説をさせていただきました。
これでも、解説しきれない例外事項などもあります。
特にこれから年金を学ぶ方には複雑怪奇に見えるかもしれません。

私も年金を学んでわかることは、年金の制度は理不尽にはできていないということです。
例えば、特定の方が受け取れなかったり、払い損になっていたりという抜け穴が無いように設計されています。複雑になっているのは、必ずその理由があるのです。

皆さんがその例外をすべて学ぶ必要は無いと思います。
ご自身に関わる部分だけを理解して、おおよその支給額を把握してください。
受け取れる年金額を把握したうえで、老後のマネープランを立てていきましょう。
その一助としてこのコラムがあれば幸いです。

- 次回予告 -

『2024年度の年金額改定』について学ぶ①
~改定の内容~

次回、くらしすとEYEの年金を学ぶ【第26回】では、
"『2024年度の年金額改定』について学ぶ① ~改定の内容~"
を更新予定でございます。
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