1「がんを防ぐための12か条」何が変わった?

見直されたのは30年ぶり!

 これまで、いったいどれくらいの"がんを予防する方法"が世に出てきたことか。それでも、がんは依然として日本人の死亡原因の第1位である。効果的ながん予防というものは本当にあるのだろうか。
 そんな疑問もないではない中、2011年に国立がん研究センター研究所の「がんを防ぐための12か条」が改訂された。実に30年ぶりのことである。国立がん研究センター研究所は、以前は国の専門機関であり、現在でも日本のがん研究の最高峰である。そこから提唱されている「がんを防ぐための12か条」は、がん予防の基本的な指針とされている。病院や市役所などさまざまな場所に貼られたポスターやパンフレットなどで目にしたことがある人も多いだろう。
 それにしても、医療進歩の目覚ましい現代において、約30年前に提示されたものがつい最近まで変わらずに使われていたとはちょっとした驚きだ。

旧12か条は日本人向きではなかった

 実は、旧12か条は当時、世界保健機関(WHO)が作成したものを日本がそのまま引用したものであった。いわば、借り物である。
 がんは生活習慣と密接な関係にあることが明らかになっているが、世界全体で見ればそれぞれの国や地域で生活環境は大きく異なっているわけで、世界共通の指針よりも、「日本人の生活習慣」とがんの関係を科学的に踏まえた指針が必要ではないか、そんな動きが12か条の改正につながったようである。


「がんを防ぐための12か条」新旧比較

  がんを防ぐための12か条(1978年) がんを防ぐための12か条(2011年)
1条 バランスのとれた栄養をとる たばこは吸わない
2条 毎日、変化のある食生活を 他人のたばこの煙をできるだけ避ける
3条 食べすぎをさけ、脂肪は控えめに お酒はほどほどに
4条 お酒はほどほどに バランスのとれた食生活を
5条 たばこは吸わないように 塩辛い食品は控えめに
6条 食べ物から適量のビタミンと繊維質のものを多くとる 野菜や果物は豊富に
7条 塩辛いものは少なめに、あまり熱いものは冷ましてから 適度に運動
8条 焦げた部分は避ける 適切な体重維持
9条 かびの生えたものに注意 ウイルスや細菌の感染予防と治療
10条 日光に当たりすぎない 定期的ながん検診を
11条 適度にスポーツをする 身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
12条 体を清潔に 正しいがん情報でがんを知ることから

旧12か条にあった「焦げた部分を避ける」など(赤字)が新12か条ではなくなり、
「たばこ」についての項目(青字)がトップに2つ掲げられた。

「焦げた部分は避ける」が消えた…!?

 焼き魚の焦げたところを箸で避けたり、トーストの焦げはきれいに削ぎ落としたりと、焦げた部分を口にすることは極力避けてきた…、そんな人は少なくないのではないだろうか。「焦げを食べるとがんになる」、それはいわば"常識"とされてきたような気がする。
 一方で、子どものころは夏休みともなれば海やプールで肌を焼いて真っ黒になることが奨励されていたように記憶しているのに、いまでは「UV(紫外線)カット」などの言葉とともに「日光は避けるべきもの」ということが"常識"とされていないか。
 そうした"常識"が、新12か条ではいくつかあえて削除されている。これはどういうことだろう? これらの"常識"は間違っていたということだろうか?

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