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都城年金事務所(宮崎県都城市)

 宮崎県の南西部に位置し鹿児島県と隣接する都城市。都城年金事務所はJR日豊本線・都城駅から車で10分ほどの距離にある。各課では目標を上回る事業展開を目指すとともに、外部の関係団体との連携強化を図り、地域住民に対するサービス向上に積極的に取り組んでいる。都城市は畜産業と酒造業が盛んで、“肉と焼酎の町”として知られる。2015年度・2016年度にはふるさと納税額日本一になったことでも有名だ。

お客様でも職員同士でも相手を思いやる気持ちが仕事の向上につながる
――田平兼康所長

田平兼康所長。

田平兼康所長。

 田平兼康所長は2016年4月に赴任し、今年度で3年となる。2012年4月から宮崎県の延岡年金事務所副所長を務め、2014年4月から広島県の三次年金事務所所長となった。地元都城市の出身だ。だが、「都城市に勤務するのは初めてなんです」と笑う。都城年金事務所は総務課・厚生年金適用調査課・厚生年金徴収課・国民年金課・お客様相談室の4課1室体制からなり、38名の職員で業務を行っている。
 2010年1月に社会保険庁から日本年金機構に生まれ変わり、10年目を迎えた。この間、不正アクセスによる情報流出や扶養親族等申告書の外部業者による入力漏れ・誤りなど、様々な課題に直面しながら問題解決に取り組んできた。こうした経緯を踏まえたうえで、組織としての変化を田平所長は次のように見ている。
 「いくつかの変化の中で大きく変わったと思うことが3点あります。1点目は、お客様に対するサービスの向上です。お客様への対応がかなりよくなりました。2点目は、個人情報を含め情報セキュリティの意識が高まったことです。3点目は、事業実績の向上に対する職員の意識が高くなったことです。各事務所でも目標達成が求められており、私どもでも課ごとに目標を立て、職員が一丸となって日々業務に取り組んでいます。課ごとの対策会議でも、常に目標達成を念頭に置いて協議を行っています。その成果は2017年度の事業実績の評価にも表れました」
 2018年度も前年度並みの実績に近づいているという。

都城年金事務所の管轄区域(ピンク色の区域)。

都城年金事務所の管轄区域(ピンク色の区域)。

 

民生委員やハローワーク職員の一言の重みを実感

 都城年金事務所の管轄は、都城市、小林市、串間市、えびの市、西諸県郡高原町、北諸県郡三股町の4市2町だ。地図を見るとわかるように、東西南北の広範囲にわたっている。都城市の人口は宮崎市に次いで県内2番目に多く、管轄内の総人口も27万9,000人に及ぶ。こうした地域的な状況もあり、田平所長が就任以来重視してきたのは、市町、ハローワーク、労働基準監督署など関係団体との協力連携だ。
 「事務所内にプロジェクトチームを作って、関係団体と連携してできることはないか検討してきました。その中で、『トップ同士の理解がまず必要』との話が出て、私自身が市町やハローワーク、監督署に出向いて協力要請の依頼をしました」と田平所長は振り返る。
 特徴的な取り組みは市町職員に対する研修だけでなく、民生委員に対する説明会も開催していることだ。
 「民生委員の方は生活保護にも関係しています。年金制度全般の話に加え、国民年金の保険料納付と免除制度の話を必ずします。保険料の納付が難しくても、免除の手続きをしておけば将来有利になるというメリットを知らない方が多いのです」
 管轄内には都城市と小林市にハローワークがある。ハローワーク都城では、毎週木曜日に年金事務所職員がハローワークに出向き、失業給付の説明会で国民年金保険料の免除制度の話をするようにしている。また、2018年度には、年金制度をより深く理解していただくため、ハローワーク全職員に対する職員研修会を小林で2回、都城で3回実施した。
 その後田平所長は実際にハローワークの現場を訪れ、その様子を見て「確かな手応えを感じた」と次のように話す。
 「失業給付の話の後、ハローワーク職員の方が自ら出席者に対し、『国民年金の保険料は必ず納めなければなりません。ただし、納付困難な方には保険料の免除制度があります』『免除の手続をしておかないと、障害者になった場合に障害年金が支給されないこともあります』と、一言も二言も付け加えてくれたのです。私たちからそこまで話してほしいとお願いしていないにも関わらずです。ハローワーク職員の方に尋ねると、『研修会で免除制度や障害年金のことを勉強しましたのでそう伝えました』と言っていただきました。内部事務も大事ですが、対外関係も重要だと改めて実感しました。収入のない方にどう寄り添っていくかを考えたとき、私どもの一言と民生委員やハローワークの職員の方の一言は重みが違います」
 関係団体との連携強化という点で、田平所長が実践していることがある。公務などで出掛けた折は、時間を見つけて市町の役場やハローワークに立ち寄ることだ。
 「短時間でも立ち寄って、現在の年金事務所の状況など簡単な情報提供をしています。逆に、市町の職員からの要望を聞く機会にもなっており、お互いの理解を深めることにもつながります。3、4ヵ月に1回くらいは行きますので、市町の職員で私を知らない人はいないと思います」

関係団体の協力も得て相談予約は90%を超える

 都城年金事務所での年金給付の予約相談は90%を超えている。ここでも関係団体との協力が実を結んでいる。バスや電車など交通機関の待合室や駅の入り口付近に、予約を促すポスターを貼ってもらっている。病院や金融機関にも協力を呼びかけ、市町の窓口にも予約の電話番号を記した名刺大の用紙を置いてもらっているのだ。
 都城事務所では市役所での出張相談も実施している。串間市は毎月第1木曜日、えびの市は毎月第2木曜日、小林市では毎月第3木曜日だ。専用端末を持参し、すべて職員が対応する。
 「完全予約制のため、年金記録を事前に打ち出していき、具体的な相談を簡潔に行うことができます。事務所での相談でも待ち時間の緩和につながりますし、さらにアピールして事前予約を100%に近づけることが目標です」と田平所長は意気込みを見せる。

職員のモチベーションが上がる環境づくりを目指す

 事務所職員向けには、機構本部指定と事務所独自のテーマで内部研修を行っている。さらに相互研修の形で、労働基準監督署から講師を招き、労働基準法等の労働関係の講義を実施する。
 「現在、力を入れて取り組んでいるのは、今年4月から施行される第1号被保険者の産前産後期間の保険料免除制度です。通常の研修だけでなく、週1回8時15分から行う全体朝礼でも、気づいたことは職員に伝え、情報共有に努めています」
 と話す田平所長が今後の課題として挙げるのが、基幹業務のさらなる強化だ。
 「やるからには上を目指していきたい。やはり良い職場環境が良い仕事につながりますので、職員のモチベーションが上がるような環境づくりが大事です。私から見ても当事務所の職員は前向きで明るく、職場の雰囲気も良いと思います。さらにチームワークを深めるため、定期的にボウリング大会や懇親会も開いています。もちろん私も参加します」

書類の向こうにもお客様がいることを忘れてはならない

 田平所長が職員に求めているのは人に対する優しさだ。
 「職員には、常に相手を思いやる気持ちを大事にしてほしいと言っています。窓口だけでなく、書類の向こうにもお客様がいます。その方のことを考えながら仕事に取り組んでほしいと思っています。それは職員同士でも同じです。相手を思いやることができれば、相手も同じように自分に接してくれます。アットホームな関係で、明るく楽しく仕事をしていきたいと考えています」
 田平所長は、職員との個別面談も欠かさない。
 「仕事やハラスメント、コンプライアンスなど、何でも話せる環境が大切です。もし子どもが受験で大変なら、『仕事でもみんなで協力するから頑張って』と配慮してあげたいですから。職員にはいつでも相談してほしいと話しています」

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