福井年金事務所(福井県福井市)
東尋坊(坂井市)は国の名勝・天然記念物に指定されている。
曹洞宗の総本山・永平寺(永平寺町)。
福井県は国内随一、恐竜の化石が多く採取される県。福井駅前には、県内で発見された恐竜の実寸大模型(一日中動いて吠える)や、恐竜の足跡の化石などが置かれ、人々の目を楽しませている。
職員みんなの意見を聞く。役員会議も毎朝開催
野ッ俣一郎所長は、平成22年1月の日本年金機構発足時には近畿ブロック本部(大阪)、その後、彦根年金事務所所長、京都西年金事務所所長、京都事務センターのセンター長を経て、今年4月より福井年金事務所に着任した。福井県出身。機構発足後に初めて県外勤務を経験し、7年3カ月の単身赴任を経て、今回久しぶりに福井に戻ってきたことになる。
同事務所は、総務調整課、厚生年金適用調査課、厚生年金徴収課、国民年金課、お客様相談室の4課1室の体制で、職員数は全53名(正職員25名、准職員1名、有期職員26名、アシスタント職員1名)となっている。管轄地域は、福井市、大野市、勝山市、あわら市、坂井市、永平寺町の5市1町(人口約46万人)。いまは高速道路ができ、管内の移動は車ではしやすくなったが、公共交通は少ない。そのため、大野市、坂井市、勝山市では月1回出張相談を行っている。
機構発足からこれまでを振り返り、「以前よりも増してお客様の立場に立って、お客様ファーストで考え、丁寧に接するようになってきた」と野ッ俣所長は語る。
いま力を入れていることの1つは、予約率のアップ。業務やサービスの向上についてもソフト面とハード面の両方から対策を考えており、ハード面では所内のレイアウトの変更を検討している。
「この事務所に来て一番驚いたのは、事務所内のレイアウトが社会保険庁時代のものを引きずっていることでした。普通は同じフロアにあるはずのお客様相談室と国民年金課が1階と2階でわかれており、お客様の利便性に配慮するうえでも改善の余地があります。ただ、レイアウトや配置を見直すにも、お客様にとって利用しやすいことはもちろんですが職員にとっても仕事がしやすくなるように『コピー機の配置』『総合案内の場所』など現在、職員の意見を取り入れながら検討している最中です」(野ッ俣所長)。
ソフト面の課題は人員の不足をどう補うかということ。本当はフロア全体を見るフロアマネジャーのような人がいて、待っているお客様が増えてきたときに予約を勧めたりできるとよいが、今いる職員から出すだけの人的余裕はなく、新たに人を雇おうにも福井県は共働き率が高く、すでに仕事を持って働いている人が多いので求人倍率が高く、求人をかけても応募がないという実情もある。
また、フロアが1階と2階にわかれており、お互いの階の様子がわからないため、毎朝所長室に課室長が集まって役職会議を開き、その日の各課室の職員の出勤状況や、昨日の窓口の混雑状況、だれが何時に出かけるかなどを確認し、人手が足りないところにはどこの課から何人応援を出すかなどを話し合っている。「状況はその日によって違うからこそ、毎朝行う必要があります。なかなか結論が出しにくい課題もありますが、先送りはせず、その日のうちに結論を出すことにしています。だから、15分で終わる日もあれば、1時間近くかかるときもある。結論は先送りはせず、いったん決めてやってみて、それでだめなら修正するというようにしています」(野ッ俣所長)。
出張相談も、10月1日からは市町の協力を得て予約制を導入した。事前に資料の準備や読み込みができるので、説明不足を防ぐことができ、事務所職員にとってもお客様にとっても便利となる。徐々に完全予約制にしていく考えで、現在、市町の窓口を回りながら協力をお願いしている。
市町とは、意見交換の場を設けたいと考えている。社会保険庁時代は定期的に市町と打合会を開催し、意見交換する機会がありましたが機構になってからそうゆう機会がないのでつくりたい。まずは年2回、市町の国年の担当を集め、事務所の国年課長とお客様相談室長が各市町の要望を集めたり情報を提供したりする場を設けていく予定である。
職員のスキルアップ対策については、混雑時には他課からの支援が必要となるので、月曜日(延長相談のある日)に相談業務の経験のない職員を集め、半年で相談業務ができるようにお客様相談室の職員が講師となって養成研修を考えている。座学だけでは身につかないため、お客様相談室の職員が後ろに付き添いながら実際に窓口で研修し、端末の操作方法なども学ばせる予定。
事業実績については、同事務所は国年保険料の納付率も厚生年金・健康保険の保険料の収納率もかつてはトップクラスだったが、現在は上位3分の1にかろうじて入っている状況。職員も減っているなかで取り組んでいくことの難しさもあるが、再び上位に入るようめざしており、徐々に実績は上がってきている。今年度は昨年度よりもさらによい成果を出したい。
所長と課長全員は福井県出身で、機構発足を機に初めて県外勤務を経験し、いわば世界や知識を広げて久々に福井に戻って来たことになる。またお客様室長は、所長が京都西年金事務所時代に一緒に勤務した。課室長たちが各地で得てきた経験や知識・良い取り組みを福井年金事務所に取り入れ、福井の改善すべきところは改善し、良いところは伸ばしていきたいと所長は考えている。毎朝の役職会議も、所長が大阪勤務時代に経験したことから導入した。「福井の人はまじめで、それだけに前例や慣習を愚直に保ち続けてしまうところがあります。でも、合理化や効率化ができるものはしていくことが必要。もちろん、手を抜くというのではなく、時代に合わせて、伝統にとらわれずにより良く変化していくことが大切で、職員みんなで知恵を出し合いながらやっていきたいです。特に気を使っていることは、職員からの提案に対しては聞きっぱなしにせず何らかの答えを出して応えていきたいと考えています。それが事業実績の向上へもつながると思っています」(野ッ俣所長)。