HOME ≫ 年金広報 ≫ 実務担当者のための年金講座 ≫ ② 激変緩和措置の適用が終了する契機とは、どのような場合ですか? 〜市議会議員が任期満了で、再選した場合はどうなるのか〜
年金広報タイトル

︱2016.3.15 3月号 (通巻681号) Vol.36

掲載:2016年3月15日
年金講座

判断に迷う激変緩和措置の適用と終了について

筆者プロフィール 長沼 明(ながぬま あきら)

浦和大学総合福祉学部客員教授。志木市議・埼玉県議を務めたのち、2005年からは志木市長を2期8年間務める。日本年金機構設立委員会委員、社会保障審議会日本年金機構評価部会委員を歴任する。社会保険労務士の資格も有する。2007年4月から1年間、明治大学経営学部特別招聘教授に就任。2014年4月より、現職。主な著書に『年金一元化で厚生年金と共済年金はどうなる?』(2015年、年友企画)、『年金相談員のための被用者年金一元化と共済年金の知識』(2015年、日本法令)

 一元化が施行されておよそ半年が経過しました。
 実務の年金相談では、年金事務所で共済組合の決定した特別支給の老齢厚生年金の年金額をウインドウマシンでみることができないなど、当初設計したとおりにシステムが稼働していない情報を聴きます。
 今月号では、ご質問をいただいた事例について回答を申し上げます。引き続き、質問については受け付けておりますので、最後のご意見欄にご記入ください。なお、質問は一般論ではなく、具体的な事例で、対象者の生年月日・年金額・年金加入歴等をご記入ください。

激変緩和措置の適用が終了する契機とは、どのような場合ですか?
〜市議会議員が任期満了で、再選した場合はどうなるのか〜

(1)読者からの質問内容

【質問内容】

 一元化後の在職老齢年金にかかる激変緩和措置の適用が終了となるのはどのような場合でしょうか? 厚生年金を受給している人が市議会議員さんの場合、任期満了の前に選挙があり、当選すれば引き続き議員さんで変わりませんが、そのような場合も、激変緩和措置は終了となるのでしょうか?


 貴重なご質問をいただきました。激変緩和措置が適用になる場合、いつ終了となるのか、簡単なようでむずかしいテーマです。
 退職した場合や死亡した場合はイメージできるとしても、それ以外の場合、どんな事例が考えられるのでしょうか?
 ここでは、まず、どういう場合に激変緩和措置が適用され、また適用されないかを確認しておきましょう。

(2)激変緩和措置の適用が受けられる事例

  たとえば、共済年金を受給している65歳未満の人が、厚生年金保険の被保険者で働いていると、一元化前は「高在老」(支給停止ライン47万円)が適用されていました。しかしながら、一元化後は「低在老」(支給停止ライン28万円)の適用に変わります。そのため支給停止されていなかった共済年金の受給額が一部支給停止されるようになったり、支給停止の年金額が増加したりするようになることがあります。
 このような制度変更に伴い、支給停止額の急激な増加を緩和するため、一定の要件を満たしている場合には、激変緩和措置が適用されます。
 また、厚生年金を受給している人が、私学事業団の加入者となっている場合や地方議会議員に在職している場合、あるいは地方公務員や国家公務員の組合員になっている場合も、一元化前は支給停止の対象になっていなかった厚生年金が、「支給停止なし」から「支給停止の対象 」となりますので、一定の要件を満たしている場合には、激変緩和措置が適用されます。
 なお、詳細は、本誌『年金広報』平成27年9月号で記してありますので、ご参照ください。

 ▶ http://kurassist.jp/nenkin-kouhou/vol30/pro-lecture/pro-lecture-02.html

(3)激変緩和措置の適用が受けられない場合とは

 一方、厚生年金を受給している人が、一元化前から厚生年金保険の被保険者であることに変わりがないにもかかわらず(一元化後は第1号厚生年金被保険者となる)、総報酬月額相当額が変化したために、一元化後に支給停止額が増えたような場合は、激変緩和措置の対象とはなりません。

 {なお、詳細は、『年金広報』平成27年9月号または長沼明著『年金相談員のための被用者年金一元化と共済年金の知識』(日本法令)をご参照ください。}

(4)激変緩和措置の適用が終了する場合

 退職したり、死亡したりした場合は、原則として、激変緩和措置は終了します。 ここでは、ご質問にあったように、激変緩和措置の適用が、いつ終了になるのかを、一元化の日をまたいで、同じ事業所にそのまま勤務している(原則として、第1号厚生年金被保険者)ということを前提に、整理してみました。
 特別支給の退職共済年金を受給している人(一元化前に共済年金の受給権が発生している)が、一元化の日をまたいで、同じ事業所にそのまま勤務している(原則として、第1号厚生年金被保険者)というイメージですが、もちろん、特別支給の老齢厚生年金を受給している人が、私学事業団に加入している(在職している)ということでもかまいません。あるいは、パターンによっては、昭和12年4月1日以前に生まれた老齢厚生年金の受給者が、自分の会社の社長として継続して経営者としている(第1号厚生年金被保険者となる)というイメージになる事例もありますが、いずれにしても、同じ事業所に勤務している(原則として、第1号厚生年金被保険者)という前提で設定している事例です。

【激変緩和措置が終了する契機】

ⓐ60歳台前半で、激変緩和措置の適用を受けている受給者
 ⇒65歳に到達した日の属する月まで(65歳に到達し、特別支給の老齢厚生年金が失権する。)

ⓑ60歳台後半で、激変緩和措置の適用を受けている受給者
 ⇒70歳に到達した日の属する月まで
(70歳に到達し、厚生年金保険の資格は喪失する。ここで激変緩和措置は終了するため、上限1割の適用は受けられなくなり、以後は本来の支給停止で算定した支給停止額となる。なお、資格を喪失したので、厚生年金保険の保険料は徴収されなくなる。)

ⓒ70歳以上で、激変緩和措置の適用を受けている受給者
 ⇒死亡した日の属する月までまたは厚生年金保険法が適用とならない勤務形態になる日の属する月まで
(死亡した場合は、死亡した日の属する月分までが、激変緩和措置の適用の対象となる。)

(5)市議会議員の任期満了の場合

 一元化前に共済年金または厚生年金の受給権が発生しており、一元化の日をまたいで市議会議員さんでいる場合、激変緩和措置が適用になります。それでは、この激変緩和措置の適用を受けている議員さんが、激変緩和措置の適用を受けているときに、任期満了が到来した場合はどうなるのでしょうか?
 卑近な例を挙げて恐縮ですが、実は、私が市長に就任していた埼玉県志木市では、平成28年4月22日に市議会議員の任期満了を迎えます。4月10日(日)に市議会議員選挙が行われる予定になっています。
 一元化施行日の時点で、仮に、共済年金または厚生年金を受給している議員さん(議員専業、厚生年金保険の被保険者ではない)がいて、平成28年3月15日現在、激変緩和措置の適用を受けている議員さんがいるとすると、改選後は、激変緩和措置の適用はどうなるのでしょうか? 継続されるのでしょうか?
 関係する議員さんには縁起でもありませんが、仮に、再選できないとすると、当然、そこで激変緩和措置の適用は終了します。全額、共済年金または厚生年金を受給できることになります。
 めでたく、再選された場合はどうでしょうか?
 激変緩和措置の適用を受けている議員さんが、引き続き当選した場合、新しい任期の始まる平成28年4月23日以後も、引き続き、激変緩和措置は適用されるということになるのでしょうか、それとも任期が切れたということで、議員という地方公務員法上の非常勤特別職という地位は、表面上継続しているように見えても、激変緩和措置の適用は、ここで終了ということになるのでしょうか?
 どうなるのでしょうか?
 結論は、任期満了とともに、激変緩和措置の適用は終了します。この場合、平成28年4月分までが激変緩和措置の適用となり、平成28年5月分からは、本来の支給停止、すなわち原則が適用されることになります。
 あくまでも一般論ですが、現在の市議会議員さんや区議会議員さん、都道府県議会議員さんの報酬月額や期末手当(賞与)の金額を考慮すると、原則が適用された場合には、共済年金または厚生年金は全額支給停止になる事例が多いような気がします。
 なお、議員年金制度そのものは、すでに平成23年6月1日をもって廃止されています。

(市議会議員に関係する一元化情報の詳細は、長沼明著『年金相談員のための被用者年金一元化と共済年金の知識』(日本法令)281ページ以下をご参照ください。)

(6)同月でA社からB社に転職した場合

現実の社会では、激変緩和措置の適用を受けている人も、転職する場合があると思います。
 たとえば、激変緩和措置の適用を受けている人が、平成28年4月10日にA社を退職し、平成28年4月25日にB社に就職した場合、同月得喪だから、激変緩和措置は継続されるということになるのでしょうか?
 残念ながら、この事例の場合、A社を退職することにより、激変緩和措置は適用されなくなる、と筆者は解しています。

(7)地方公務員などの再任用の場合

 地方公務員などの再任用の任用期間を更新する場合はどうでしょうか?
 再任用職員は、原則として、任用期間は1年間となっています。
 一応、本人が希望すれば、原則として、65歳まであるいは年金が支給開始となるまで、1年更新ですが、再任用される自治体が多くなってきています(自治体により異なります)。
 たとえば、定年退職した市役所の職員が、再任用で市役所で短時間勤務をしている(第1号厚年被保険者)場合の、65歳に到達するまでの激変緩和措置の適用について、考えてみましょう。

【相談事例】

 市職員(昭和29年5月10日生まれ)が、平成26年5月9日に60歳となり、平成27年3月末に定年退職。
 平成27年4月より短時間勤務(第1号厚生年金被保険者となる)で、1年間の任用期間で再任用しました。
 平成27年5月に特別支給の退職共済年金の受給権が発生し、一元化後は激変緩和措置の適用を受けていました(一元化で特別支給の老齢厚生年金の受給権も発生)。
 平成28年4月から1年間、新たに再任用の任用期間を更新する場合(基本的に同じ任用条件となります)、引き続き、激変緩和措置が適用になるのでしょうか? それとも、任用期間が、形式上、いったん切れることになるので、平成28年4月以後は、激変緩和措置の適用は終了すると解すべきなのでしょうか?


 再任用の任用期間を更新する場合は、基本的に、厚生年金保険の被保険者資格を喪失しない取扱いをすることになりますので、引き続き激変緩和措置が適用されることになります。
 なお、再任用制度については、自治体により、異なる取扱いをすることが全く考えられないわけではありませんので、事前に自治体の担当者に相談・確認しておくことをお勧めします。
 年金事務所に相談する場合は、再任用制度についてしっかりと説明すると同時に、基本的に、厚生年金保険の資格喪失届を提出しないこと、1日も空白期間を空けずに在職していることなどを説明することが必要だと思います。

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