総務省行政評価局のあっせん事例1 ~年金請求時に添付する戸籍謄本等の原本返却の推進
総務省行政評価局のあっせん事例を紹介する。1つ目は「年金請求時に添付する戸籍謄本等の原本返却の推進」について。未支給年金の請求者が戸籍謄本の原本の返却を求め市から拒否された事案に対して、総務省行政評価局は、行政苦情救済推進会議の「未支給年金の請求者から提出された戸籍謄本等について原本の返却を求める申出があった場合には、原本のコピーを取り、これに原本証明したうえで請求者に原本を返却する」との意見を踏まえて、平成27年12月11日、日本年金機構と厚生労働省にあっせんした。
行政相談と実態
死亡した父の国民年金未支給分を請求した際に、添付していた戸籍謄本の原本を返却するよう市に求めたが返却されず、金融機関の処理等にあらためて費用をかけて戸籍謄本を取得しなければならなかった。年金事務所では請求時等の戸籍謄本等の原本は返却されるようなので、市にも返却を実施してほしい。
日本年金機構では、平成24年に年金事務所に宛てて、請求者から求めがあれば返却することを市町村に対して周知・勧奨するよう指示を出したが、市町村ではこれを認識していないことが調査(平成27年4~5月)で判明した。また、「未支給年金請求書」上にも返却の記載はない。 |
この事案に係る制度の概要
国民年金法(昭和34年法律第141号。以下「法」という。)に基づく老齢基礎年金の給付を受ける権利を有する者(以下「受給権者」という。)が死亡したときに給付されていない年金(以下「未支給年金」という。)がある場合、受給権者と生計を同じくしていた配偶者又は子等の3親内の親族は、法第19条の規定に基づき、当該未支給年金を請求することができるとされている。
未支給年金の請求においては、国民年金法施行規則(昭和35
年厚生省令第12号)第25条に規定する請求書及び当該請求書に添付することとされている書類(以下「請求書等」という。)を日本年金機構に提出することとされている。
ただし、市町村においても、国民年金法施行令(昭和34
年政令第184号)第1条の2の規定等に基づき、法定受託事務として、次の未支給年金の請求書等を受理し、請求に係る事実を審査し、日本年金機構に回付することができることとされている。
① 障害基礎年金のみの受給に係る未支給年金
② 遺族基礎年金のみの受給に係る未支給年金
③ 寡婦年金に係る未支給年金
関係機関の対応と意見
- 厚生労働省
厚生労働省が国民年金事務の処理基準として定めている「事務処理基準」や、ホームページ上の「国民年金市区町村業務支援ツール」には請求書の求めに応じて原本を返却することについての記載がない。今後は「国民年金市区町村業務支援ツール」のハンドブック等に記載することを予定している。 - 日本年金機構
「未支給年金請求書」の記載要領に、原本返却の取扱いについて記載するかどうか検討する。
行政苦情救済推進会議(総務省)の意見を踏まえたあっせん
① | 日本年金機構は、請求者の求めに応じて原本を返却することについて、請求書や請求書の記載要領にわかりやすく記載するなど、請求者及び市町村の国民年金事務担当者への周知について工夫する必要がある。 |
② | 厚生労働省は、請求者の求めに応じて原本を返却をする取扱いが市町村に徹底されるよう、事務処理基準及び国民年金市区町村業務支援ツールを見直す必要がある。 |