一元化がスタートして、3か月が過ぎました。
ある共済組合では、一元化後の最初の年金支給日である昨年の12月15日は、電話が鳴りっぱなしだったと言います。一元化の影響で、支給額が減額になった受給者から、「振り込まれる年金額が減っている。間違っているのではないか?」という問い合わせや苦情が大半だったようです。
予想どおりのそれなりの混乱と、必ずしも予定どおりに進んでいないワンストップサービス。徐々に改善されていくとは思いますが、まだまだ手続面では、「これはどうするの?」という手探りの状態が続いています。今月は手続面での情報を共有していきたいと思います。
共済組合の年金見込額を知りたいが、どうすればいいのか?
〜年金事務所では共済組合の年金見込額がわかりませんでした〜
(1)年金事務所では共済組合の年金見込額がわからない、と言われた
昭和29年11月30日生まれの男性です。大学卒業後、数年間だけ市役所に勤務し、いまは自営業を営んでいます。ワンストップサースが始まったということを聞き、交通の便のいい年金事務所で年金請求の手続きをし、あわせて、共済組合からの年金見込額を教えてもらおうとしたところ、年金事務所の職員は、何回もウインドウマシンを操作してくれたのですが、共済組合からの特別支給の老齢厚生年金の見込額は出ないということです。
通常、年金事務所では、国からの厚生年金は瞬時に見込額が出て、印字した用紙を渡してくれるというのに、共済組合が支給する厚生年金の年金見込額は、年金事務所ではわからないというのでは、とても不便ですし、共済組合に行かないとわからないとなると、ワンストップサービスの効果は半減だと思います。
共済組合が決定・支給する年金見込額を知りたい場合はどうすればいいのですか?
(2)共済組合の場合、【年金額試算依頼書】を提出する
実は、この相談者の場合、年金事務所の担当者が、相談者の加入していた共済組合に電話をしてくれ、「年金見込額を知りたい場合、どういう手続きをすればいいか」を聞いてくれたとのことです。
その結果、相談者の自宅に、共済組合から、【年金額試算依頼書】(【資料3】)が郵送されてきたとのことです。
資料3「年金額試算依頼書」
【資料3】【年金額試算依頼書】をみると、基礎年金番号を記入する欄はありません。また、下の※印をみると、「基礎年金の繰上げ請求等を含めた年金額の試算は行わず」との文言があります。
記入自体はむずかしくありません。
手続きは【年金額試算依頼書】に必要事項を記入し、共済組合に郵送すればいいということですが、相談者はなるべく早く知りたいということで、共済組合に直接持参しました。
しかし、年金事務所では、厚生年金に加入していた期間(1号厚年期間)の年金見込額は瞬時に出せるのに、共済組合の場合、共済組合に加入していた期間(3号厚年期間)の年金見込額は時間を要するということで、郵送で自宅に送ってくれるということでした。
この事例の場合は、12月7日に提出して、共済組合から年金見込額を記載した書類が郵送された、その書類の日付は、12月28日だったということです。おおむね3週間程度かかっているということになります。
(3)共済組合の場合、見込額が記載してあるのみ
共済組合から届いた『老齢厚生年金概算書』『退職共済年金概算書』(旧3階部分、旧職域年金相当部分のこと)を拝見させてもらうと、年金支給開始年齢からの見込額が記載してあるのみで、平均標準報酬額
や平均給与月額が記載してあるわけではなく、加入期間中の「みなし標準報酬月額」や「みなし標準賞与額」も記載してあるということはありませんでした。
ただ、これらの情報については、相談者(申請者)が知りたいという旨を、【年金額試算依頼書】に記入してなかったからであって、「備考欄」にその旨が明記してあれば記載されていたかもしれません。
(4)共済組合の提供する年金情報の質と量
年金事務所では、相対で相談に対応し、その場で年金見込額を打ち出してくれます。加入期間中の標準報酬月額も印字してくれます。求めれば、本来水準と従前額保障の年金額も資料提供してくれます。
しかし、ある共済組合では、その場で、年金見込額すら出ないというのは、高齢社会にふさわしい年金情報の提供のあり方といえるのでしょうか?
加入期間中の「みなし標準報酬月額」や「みなし標準賞与額」についても、「求められれば、年金見込額の用紙に記載します」のひと言(注意書き)ぐらいあっておかしくないと思いますが、いかがなものでしょうか?
(5)ワンストップサービスの真価が問われる
いずれにしましても、年金事務所でも、共済組合が決定・支給する年金額についても、その見込額がわかるように早期に実施・実現してもらいたいと筆者は考えています。また、被用者年金一元化の制度設計においては、そのようにグランドデザインが描かれていたと認識しています。
複数の実施機関に加入期間のある年金受給予定者からすると、在職年金の支給停止の試算をするにも、1号厚年期間に基づく厚生年金(一般厚年)と3号厚年期間に基づく厚生年金(地方公務員の厚生年金)の見込額がわからなければ、試算そのものにも困りますし、遺族年金の試算をするのも困難です。
関係実施機関の早期の調整を強く期待したいと願っています。