『2024年度の年金額改定』について学ぶ

2024年7月より「未来へのしおり」シリーズとして「終活」関連の情報提供を開始します。
「しおり」には「道しるべ」という意味があります。「終活」はどうしてもネガティブなイメージが付きまといますが、未来へ向けた道案内と捉えたとき、人生を豊かに送るための活動に変えることができます。
本シリーズでは、今後の人生を送るための『しおり』として「終活」に欠かせない遺言や相続を中心に解説していきます。
今後とも末永くお付き合いくだいますようお願い申し上げます。

遺産はだれが受け取れるのか?
~相続人になれる人、そして、その順位~

◆遺産とは

「遺産」とは、亡くなった方が残した財産のことです。
一般的には、現金や宝石、不動産などの価値のあるものだけを受け取るイメージがあります。しかしながら、法律上で「相続」で対象になるものは、みなさんが思うような「嬉しい誤算」的なものだけではありません。亡くなった方の借金なども相続の対象になるからです。

遺産とは?

プラス遺産 マイナス遺産 遺産とならない財産
  • 現金や預貯金
  • 株式、有価証券
  • 不動産
  • 自動車やオートバイ
  • 宝石や家具
  • ゴルフ会員券

  • 住宅ローン
  • 借金(ローン・クレジット)
  • 保証債務
  • 未納の税金

  • 遺族給付
  • 生命保険金(受取人指定のあるもの)
  • 墓地や仏壇
  • 香典や葬儀費用

では、「遺産」は、親族であれば誰でももらえるものなのでしょうか。
原則では、「遺産」は被相続人(亡くなった方)が、「遺産を〇〇さんに渡す」と意思を示しておけば誰でももらうことができます。
それは、私有財産制が制度保障されているからです。
つまり、自分の財産の処分は自由に決めることができるのです。

しかしながら、「遺言」により、その意思を残していない場合は、後述する「遺留分」を侵害しないことが前提とはなりますが、「法定相続人」が遺産を相続することになります。

◆法定相続人とは

「法定相続人」とは、民法で遺産を相続することが認められた人のことです。
主には亡くなった方の血族になります。
ただし、全ての血族が「法定相続人」になれる訳ではありません。相続できる順番が決められているのです。(下図を参照)

●法定相続人

法定相続人

◆「配偶者」は必ず「法定相続人」になる

亡くなった方に配偶者(上記の図では妻)がいる場合は、配偶者は必ず「法定相続人」になります。ただし、内縁の妻は配偶者ではないので「法定相続人」にはなりません。ご注意ください。

夫婦間で子どもがいる場合には、その子どもは第1順位として「法定相続人」になります。もし、子どもがいない場合は、優先順位2番目、亡くなった方にとっては両親(父母)が該当します。もし、子どもがいなくて親もいない場合は、第3順位の兄弟姉妹が「法定相続人」となるのです。

◆代襲相続とは

優先順位第1位の子どもが既に亡くなっていて、その子どもに子(被相続人から見たら孫)や孫がいる場合は、相続の権利が、その子どもたちに引き継がれます。
これを「代襲相続」と言います。
もし、優先順位2位、3位と引き継がれ、3位の兄弟姉妹も既に亡くなっている場合などでは、その子(故人からみれば甥や姪)に相続の権利が引き継がれるのです。
ただし、甥や姪が亡くなっている場合は、その権利は消滅します。例え、甥や姪に子がいても、その権利が引き継がれることはありません。

●代襲相続

代襲相続

◆遺産の「法定相続分」~遺産を受け取れる割合~

遺産を受け取る権利がある法定相続人に対して、その割合も民法で決められています。この割合を「法定相続分」と言います。
「法定相続分」は相続人の組み合わせによって異なります。
「法定相続人」が配偶者だけの場合は、全ての遺産を配偶者が相続します。また、子どもがいる場合は、配偶者と子どもが遺産の1/2ずつを相続します。子どもが複数いる場合は、子どもの権利である1/2の遺産を子どもの人数で割ることになります。

法定相続分

相続人の組合せ 相続人 法定相続分
相続人が配偶者 配偶者 全額(全て)
相続人が
配偶者と子(1人)
配偶者 1/2
1/2
相続人が
配偶者と子(2人)
配偶者 1/2
子(1人目) 1/4
子(2人目) 1/4
相続人が
配偶者と親(父母)
配偶者 2/3
1/6
1/6
相続人が
配偶者と兄と妹
配偶者 3/4
1/8
1/8

法律によらない遺産の分け方
~「遺産分割協議書」~

「法定相続分」は、あくまでも法律で決められている内容です。特に「遺言書」がない等の場合では、各相続人が話し合いで、それぞれの遺産の取り分を自由に決めることができます。その話し合いを「遺産分割協議」と言います。

◆「遺産分割協議書」

前述のとおり、亡くなった方が遺言を残していない場合は、相続人たちはどのように財産を分けるか話し合いを行わなければなりません。このような議論を経て合意に至った内容を記録したものが「遺産分割協議書」です。

この書面は、相続における様々な手続きをスムーズに進めるため、また未来における相続人間の紛争を防ぐために重要な書類です。法的な強制力がある訳ではありませんが、一般的に協議が成立した、その内容が推奨されることになるからです。

また、相続税の申告時には、どの遺産を誰が受け継いだかに基づいて税額が計算されるため「遺産分割協議書」が必要になります。相続税の申告期限は、相続の開始日(被相続人の死亡日または相続を知った日)から10ヶ月以内と決められています。その期限までには、「遺産分割協議書」を作成しなければならないと考えておいた方が良いでしょう。

ただし、相続での話し合いが決裂してしまう場合もあります。
その場合は「遺産分割調停」という制度があり、家庭裁判所が調停する制度があります。家庭裁判所の裁判官や調停委員が各相続人の言い分を聞き、各人が納得できるように調停するのが、この制度の目的です。それでも調整ができない場合には裁判官が決定することになります。裁判官が決定した書類を「審判書」と呼び、「遺産分割協議書」の代わりになります。
なお、10年以内に遺産分割の協議が終わらない場合は、家庭裁判所の審判手続きに移行した場合、原則として亡くなる前に受けた贈与分や長年介護に携わっていたことから発生するお金等の主張ができなくなります。

●相続が発生したときの手続きの流れ

相続が発生したときの手続きの流れ

「遺言書」で法定相続人以外の人が全ての相続はできない
~「遺留分」のこと~

◆「遺留分」

「遺留分」とは、法定相続人が被相続人(亡くなった方)から一定量の財産を保証される法的権利のことです。この権利は、主に亡くなった方の配偶者や子どもなど、近親者に認められています。「遺言」で財産の全てを特定の人に与えたとしても、法定相続人は「遺留分」の請求を通じて最低限保証された遺産の一部を受け取ることができるのです。

また、「遺留分」では、受け取れる割合が決まっています。
基本は、法定相続分の「半分(1/2)」です。
配偶者のみが法定相続人である場合、配偶者の法定相続分は遺産の全額となりますが、例えば、遺言書で第三者に遺産の大半が遺贈されてしまう場合では、配偶者は自分の法定相続分の半分(1/2)を「遺留分」として受け取れることになります。
このように、「遺留分」は相続における最低限の保障として機能し、法定相続人が公平に財産を受け取ることを保証しています。たとえ、「遺言書」があってもこの権利により一定の保護が確保されるのです。

もし、遺言書で第三者に遺産を渡すと考えている場合は、残された遺族には一定の「遺留分」があることを前提に作成した方が良いでしょう。法定相続分の1/2を超えない範囲で作成し、遺族から「遺留分侵害額請求」を起こされないよう配慮することが必要です。

なお、「遺留分」は配偶者、子どもや孫(直系卑属)、親や祖父母(直系尊属)など、被相続人の直系親族に認められる制度です。兄弟姉妹や甥姪などは「遺留分」の対象外となります。

「遺言書」は3種類あると覚えておこう

これまでで、遺産を相続するにあたっては、法律で様々に決められていることがお分かりいただけたと思います。
もし、相続をスムーズに行いたいとお考えならば、やはり、「遺言書」は用意しておいた方が良いでしょう。

ただし、「遺言書」は一定の様式に従わないと無効になってしまうというリスクがあります。また、法的に有効な「遺言書」は3種類あります。その3種類の特徴を理解し、自分にあった「遺言書」を選ぶことが必要になります。 ここでは、3種類の「遺言書」を簡単に解説します。

◆自筆証書遺言

「自筆証書遺言」は、全文を自ら手書きで記載し、その文書に日付と氏名を自筆で署名したうえで押印する形式の遺言書です。最大の利点は、他人の介入なく個人で秘密裡に作成できる点です。しかしながら、自筆であるが故に、読みにくい文字や曖昧な表現が原因で内容の解釈に争い(「相続争い」)が生じる可能性はあります。
ただし、財産目録に関してはパソコンで記述しても良いことになりました。また、これまでは自宅等で保管する方法しかありませんでしたが、現在は法務局で保管するという方法もあります。この場合、相続時に家庭裁判所での検認がいらなくなるという利点もあり、利便性が良くなっています。

◆公正証書遺言

「公正証書遺言」は、公証人と証人2人の立会いの下で作成される遺言書になります。遺言者が遺言の内容を公証人に口頭で伝え、公証人がそれを文書化し、遺言者と証人が確認の後に署名押印します。つまり、法律の専門家が書類を作成することになり、そのため法的保護は高く、偽造や改ざんというリスクが非常に低くなるのが特徴です。
公証人(主に法律の専門家:弁護士や司法書士、行政書士等)への手数料が発生しますが、遺言書を一番確実なものにしようとお考えの方には、一番安心できる制度になります。

◆秘密証書遺言

「秘密証書遺言」は、遺言者が遺言の内容を自ら書くことになるため、「自筆証書遺言」とは、その点は一緒です。ただし、その文書を封筒などで密封し、公証人と証人の2人の立会いのもとで、その封印を確認し合い、遺言であることを宣言する必要があります。また、「秘密証書遺言」は、署名さえ自筆であればパソコンで制作しても、代筆してもらっても有効となります。

なお、立会人は利害関係のない方に依頼することが必要です。しかしながら、立会人が法律の専門家であったとしても、遺言の中身自体は立会人にも秘密にされるため、遺言書自体が無効となってしまうリスクはあります。

●3種類の「遺言書」内容の比較表

メリット デメリット
自筆証書遺言

・プライバシー保護は強化される
他人の介入なしに作成できるため、内容を秘密にしておきたい場合に適している。

・手軽に作成できる
特別な手続きを踏む必要がなく、個人のタイミングで任意に作成できるため、お手軽である。

・費用が軽減されている
公証人や弁護士などの専門家を必要としないため、作成にかかる費用がほとんどかからない。

・偽造や紛失のリスクがある
保管が不適切だと文書が紛失したり、偽造されるというリスクがあります。

・内容の解釈で問題になることもある
文字が不明瞭であったり、用語が曖昧であったりすると、遺言の解釈に争いが生じる可能性があります。

・法的に有効であるか確認が必要
死後に遺言の内容が法的に有効であるかどうかの確認が必要になるため、遺産分割が遅れることがあります。

公正証書遺言

・法的保護で強化されている
公正証書遺言は法的な効力が非常に強く、遺言の内容が法的な争いの対象となるリスクを大幅に減少させる。

・偽造や改ざんは困難である
文書の公証人による正式な記録と保管により、偽造や改ざんが困難である。

・遺言の内容は明確である
公証人が関与することで、遺言の内容が法的に明確で、解釈の余地が少なくなる。

・費用がかかる
公正証書遺言を作成するには公証人への手数料が必要であり、費用がかかる。

・手続きが複雑である
公証人の予約、証人の手配など、手続きが煩雑で時間がかかることがある。

秘密証書遺言

・プライバシー保護は強化される
遺言書の存在証明のみを行うため、プライバシーがまもられる。

・費用がかかる
公証人への手数料が必要であり、費用がかかります。

・裁判所の検認が必要になる
遺言者が亡くなった後に裁判所による検認が必要となる。

まとめ

これまで解説したとおり、「遺言書」は書き方を間違えてしまうと無効になるケースもあります。これは注意しておいた方が良いでしょう。
次回(2回目)は、実際に「遺言書」を書くことになった際に、注意すべき点をより詳しく解説していきます。
ご期待下さい。

本記事に記載されている情報は、公開時点でのものであり、時間の経過と共に変更される可能性があります。
記載されている内容は一般的な情報提供を目的としており、具体的な法的アドバイスを提供するものではありません。
また、業界間の問題が発生しないように注意を払って作成されていますが、個別の法的問題や疑問に関しては、専門家にご相談いただくことをお勧めします。

- 次回予告 -

効力のある遺言書を書くために
~書くときに気をつけること~

次回、くらしすとEYEの未来へのしおり【第2回】では、
"効力のある遺言書を書くために ~書くときに気をつけること~"
を更新予定でございます。
くらしすとEYE(終活)は「毎月5日」に更新を行います。

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