2受給権者の年齢等によって遺族年金を受給できる期間が異なる

遺族厚生年金は、夫と妻で受給の扱いが異なる

 前項で説明したとおり、遺族基礎年金については夫と妻の扱いに違いはないので、仕組みとしてわかりやすいです。簡単に言えば、受給権者が夫であっても妻であっても、「子」がいる間は遺族基礎年金が受けられます。(※なお、寡婦年金を受けられるのは妻だけです。)
 しかし、遺族厚生年金は、受給権者が夫の場合と妻の場合とで扱いが異なり、さらに受給権者の年齢によっても受給期間に違いがあります。フローチャートにすると、次のようになります。

【図表4】遺族厚生年金を受けられる配偶者

【図表4】遺族厚生年金を受けられる配偶者

 図表4のA~Eについて、以下に説明していきます。

A.夫死亡時に30歳未満の妻

遺族厚生年金の支給は5年間

①遺族基礎年金と遺族厚生年金をもらっていた「子」のある妻が、30歳になる前に「子」を亡くすなどして遺族基礎年金をもらう権利を失ったとき、5年を過ぎると遺族厚生年金をもらう権利もなくなります。

②30歳になる前の「子」のない妻が遺族厚生年金のみをもらえる権利を得た場合、その権利は5年を過ぎるとなくなります。

B.夫死亡時に30歳以上の妻

遺族厚生年金は生涯支給

 「子」の有無にかかわらず、遺族厚生年金を生涯受給することができます。
ただし、65歳以上で遺族厚生年金と自分自身の老齢厚生年金を受けられる場合は、次のような扱いになります。

①まず、自分の老齢厚生年金が全額支給される。

②そのうえで、次の(a)(b)のうち高い方との差額が「遺族厚生年金」として支給される。

(a) 死亡した配偶者の老齢厚生年金の4分の3の額

(b) 死亡した配偶者の老齢厚生年金の2分の1と自分の老齢厚生年金の2分の1とを合算した額

第25回『2つ以上の年金が受けられるようになったら?』参照

C.夫死亡時に40~65歳の妻など

65歳になるまで「中高齢の加算」が支給される

 まずBに該当しているので、遺族厚生年金を生涯受給することができます。そのうえで、夫死亡時に妻が40歳以上で子どもがいない、あるいは、夫死亡後で妻が40歳に達した当時は子どもがいたが、その子どもが18歳到達年度の末日を超えた(1・2級障害がある場合は20歳以上になった)ために遺族基礎年金がもらえなくなった場合、妻に支給される遺族厚生年金には「中高齢の加算」が65歳になるまで加算されます。
第10回『遺族年金、もらえる人ともらえる額は?』参照

D.妻死亡時に55歳未満の夫

遺族厚生年金は受けられない

 夫の場合、遺族厚生年金を受けるには、妻死亡時に55歳以上であることが条件になります。したがって、妻死亡時に55歳未満の夫には遺族厚生年金の受給権が発生しません。

E.妻死亡時に55歳以上の夫

遺族厚生年金は60歳から支給

 妻死亡時に夫が55歳以上であれば、遺族厚生年金の受給権が発生します。ただし、受給開始は60歳からになります。以降、生涯受給することが可能ですが、65歳になって自分の老齢厚生年金を受けられる場合は、Bと同様、次のような扱いになります(再掲)。

①まず、自分の老齢厚生年金が全額支給される。

②そのうえで、次の(a)(b)のうち高い方との差額が「遺族厚生年金」として支給される。

(a) 死亡した配偶者の老齢厚生年金の4分の3の額

(b) 死亡した配偶者の老齢厚生年金の2分の1と自分の老齢厚生年金の2分の1とを合算した額

第25回『2つ以上の年金が受けられるようになったら?』参照

 以上のように、遺族厚生年金は夫と妻で扱いが異なるのでご留意ください。
 今回は、「配偶者が受け取る遺族年金」について解説しましたが、遺族年金を受け取れる遺族については、第10回『遺族年金、もらえる人ともらえる額は?』をご参照ください。

point

1.遺族厚生年金は、受給権者が夫の場合と妻の場合とで扱いが異なり、さらに受給権者の年齢によっても受給期間に違いがある

2.遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金が受け取れる場合、まず自分の老齢厚生年金が全額支給されたうえで、遺族厚生年金のほうが多ければ、その差額が遺族厚生年金として支給される

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