2万一のときの年金

対策1 まずは自分が死んだときのことを考える

 まずは自分が亡くなったときのことを、客観的に考えてみましょう。人が死ぬということはお金がかかることです。まず葬儀代が必要です。国民健康保険からは「葬祭費」として5万円程度(市区町村により異なります)が支給されますが、葬儀代すべてを賄えるものではありません。葬儀代は地域によって大きく異なりますが、全国平均は約200万円(通夜などの接待費や寺院への費用を含む。日本消費者協会平成29年度調査より)となっています。夫名義の預貯金があるから大丈夫と思った方、預貯金は名義人の死亡が確認されると同時に凍結されることをご存じでしょうか。家族であっても、相続手続きが完了するまで一切の引き落としはできなくなります(★)。

 こうした緊急の費用に対して、すぐ利用できるのが「生命保険」です。葬儀費用や当面の生活費だけでなく、相続税など相続資金としても活用することができます。

(★参考「もしかして遺産、あてにしている?-相続のハナシ」http://kurassist.jp/anshin/anshin21-1.html

対策2 妻の生活に配慮した相続

生命保険を活用することのメリット

〇預貯金のように名義人の死亡とともに凍結される恐れがなく、万一のときに比較的速やかに現金化できる。

〇予め受取人を指定しておくことで、死亡保険金は受取人固有の財産となり相続のトラブルを避けることができる。

〇死亡保険金500万円までは非課税として扱われる。

 財産について何も手段を講じなければ、「法定相続分」といって決められた割合で妻や子ども等に財産が分け与えられることとなります(妻1/2、子ども全員で1/2)。ただし、規定に沿った遺言書を残すことで、この内容や割合を変えることができます(★)。

 子ども達はこれからも就労収入があるが、妻には年金しかないと思ったら、より妻に配慮した相続を考えてみてはいかがでしょうか。例えば、「現金として預貯金は妻に、将来の資産として土地は子どもたちに」といったことも一つの例ですし、「生命保険の受取人を妻に指定して、財産は子どもに譲る」ということも一つの例です。あくまでもご自身の家庭の状況に応じて検討してみましょう。

(★参考「遺言書を書く」http://kurassist.jp/anshin/anshin68-1.html

対策3 生命保険の種類は遺族(妻)と一緒に検討する

 公的年金を補う手段として、数ある個人保障(預貯金、生命保険、損害保険、有価証券など)の中でも万一のときに非常に有効な生命保険ですが、種類はさまざまです(表1)。遺される妻のために夫の生涯を通して保障するか、一定期間の保障にするか、また一時金として受け取るか、年金形式で受け取るのか、運用型が良いのか、商品は非常に多様化していますので、妻がどんな形を望むか、どんな形が安心か、夫婦でよく相談して決めましょう。

表1 生命保険の種類と保障期間の例

種類 保障期間 受取形式
定期保険 一定期間 一時金
 収入保障保険 一定期間 年金形式
養老保険 一定期間 一時金
終身保険 一生涯 一時金
 三大疾病保障保険 一定期間又は一生涯 一時金
 変額保険 一生涯 運用型

家族で情報を共有することが大切

 65歳以上でもらう老齢年金については、日本年金機構から年に1回送付される「年金定期便」などでおおよその額の見当がついていても、万一のときについては「年金定期便」にも記載されていません。ですが、自分が加入している公的年金制度は何か、どれくらいの期間、どれくらいの保険料を納めていたか(会社員ならばどれくらいの収入があったか)で、妻はどんな年金をどれくらい受け取れるのかを試算することができます(1ページ目参照)。

 まずは基礎となる年金額(老齢年金、遺族年金)のおおよその額を把握し、その結果、妻の毎日の生活を支えていくためにはどれくらい補えばよいのか、病気や介護等に備えるためにはさらにどれくらいあれば安心できるかを検討しましょう。

 こうした試算や計算結果は自分だけで把握するのではなく、妻やあるいは子どもも含めて情報を共有しておくことが大切です。情報の共有が、自分に万一のことがあったときの対策として家族の安心につながります。

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