2終活の一環として財産リストの作成を

相続税対策としての贈与

 相続税対策といっても一概には言えません。暦年贈与(年間110万円までが基礎控除)を利用することも手段のひとつですが、そもそも贈与税と相続税とでは計算方法が異なりますし、暦年贈与には制約もあるのでどちらが有効かはそのケースで実際に計算してみないことにはわかりません。
 また、相続時精算課税制度は特別控除(2,500万円)が適用されますので、比較的多額の財産の財産譲渡に有効と言われますが、結局、相続の際に財産として加算されるので、そこまで大きな節税効果が見込めるとは限りません。

—二次相続でも贈与が有効でしょうか?

田中 事前に贈与を行い母親の財産を減らしておけば、二次相続における節税効果が期待できます。

前垣内 ただし、死亡日から遡って3年以内の暦年贈与も相続時精算課税制度同様に相続財産に加算されてしまいます。特に二次相続の場合、被相続人(母)が一次相続の被相続人(父)と年代が近いので、3年以内に発生してしまう可能性が高くなります。このように限界はありますから、やはり「適切な一次相続を行うこと」が何よりも重要になってくるでしょう。

「適切な一次相続」とは

 二次相続を考えるとき最も確実なことは、「適切な一次相続を行うこと」が、二次相続の相続税対策につながるということです。一次相続と二次相続を切り離して考えるのではなく、将来の二次相続も念頭において一次相続を考えるということです。具体的にいうと、どのような財産をだれが相続するのかということです。一般的には「これから価値が上がる可能性がある財産」や「収益を生む財産」などは妻(子の母)ではなく、子どもに相続させるのが有利だと言われています。

—具体的にはどのような財産でしょうか?

田中 「これから価値の上がる可能性がある財産」は判別が難しいかもしれませんが、「収益を生む財産」というと、マンションや不動産などの賃貸不動産が考えられるでしょう。

—注意したいことはどんなことですか?

子どもが相続したほうが有利な財産

1.価値が上がる可能性がある財産

2.収益を生み出す財産

3.時間が経過しても価値が変わらない財産

前垣内 一番やってはいけないことは、二次相続の対象となる母親の財産を一次相続の時よりも増やすことです。その意味でも、「これから価値が上がる可能性がある財産」や「収益を生む財産」は一次相続で子どもに遺したほうが良いのです。また、その他にも現金や預貯金など評価額が変わらないものは、基礎控除が多くなる一次相続の時に子どもに優先的に相続させるという考え方もあります。逆に車のように時間の経過とともに価額が下がるものについては、母親が相続したほうが問題が少ないでしょう。

土地は比較的有効

 相続の対象となるのは現金や預貯金、土地、権利などさまざまですが、その中で土地については地目(宅地、田、畑、山林など)ごとに評価して価額を算出します。評価額は宅地の場合、相続税の減額に有効な計算方式が適用されますから、相続税に関して言えば、現金で持っているよりも土地のほうが有利といえるでしょう。

—土地を相続することのデメリットはどんなことでしょうか?

前垣内 土地は相続税対策には有効ですが、財産としては額が大きくなりますからトラブルを引き起こしやすいことも確かです。現金のように土地を明確に分けることは難しいことですし、相続人の1人が以前から住んでいたような場合では相続後の生活もめぐって問題となることが多いようです。

二次相続での兄弟間での争いを避ける工夫
~生前に話し合っておくことを自らも意識すること

 相続の問題は何と言っても、「相続人(親)の財産がどれくらいあるのかわからない」ということになります。
 結論をいえば本人が被相続人(妻や子など)に正確に伝えること、そして今後のことを話し合っておくことが最善の策ということになりますが、相続については家族の「死」が前提となるため、話題にしづらいものです。特に子どもから親に持ちかけることはためらわれることが多いでしょう。そこで本人が残される家族、特に子どもについては親の死によって負担を掛けないということをきちんと意識することをお勧めします。
 いま「終活」が推奨されていますが、相続についても終活の一環として財産をリストなどに整理して、家族と話し合っておくことも大切な「終活」の一つではないでしょうか。

まず、できること

「遺言信託」とは

遺言書は必ず一定のルールに従って作成し、厳重に保管しなければなりません。作成から時間が経てば、内容の修正を行いたくなるかも知れません。いざ執行するときには相続上の様々な手続きが必要となります。こうした煩わしさを避け、遺言書の内容が確実に実行されるよう信託銀行が管理・内容の見直し・実行手続きを行うのが「遺言信託」です。

 親に財産リストの作成するまえに、まず、自分自身のリストを作成してきっかけにしてみてはいかがでしょうか。わらないことは人生の先輩の親に相談してみる形を取りながら、親にもリスト作成の必要性に気づいてもらいましょう

—自分の財産のリスト作成は何歳くらいから始めるのが良いでしょうか?

前垣内 例えば住宅ローンを返済し終えることが多い退職時などはいかがでしょうか。

田中 遺言書や遺言信託を利用することも検討してみるとよいでしょう。特に「遺言信託」は、取り扱っている信託銀行が増えてきていますから、一度調べてみると良いでしょう。

【参考】国体信用生命保険について

相続の手続きは税理士や司法書士に

 相続の手続きは複雑になることが多いので、手続きは税理士や司法書士などの人などにお願いしたほうが良いでしょう。どんな税理士や司法書士が近くにいるのか、紹介してもらえるのか、予め調べておけば安心です。

 健康寿命を延ばすことが大切であるように、「資産寿命」を伸ばすこともまた、終活の大きなポイントです。限りある資産をできるだけ長く活用し、その資産余剰を次の世代に受け渡し(相続)、有効に利用してもらうことは、セカンドライフの大切な課題でしょう。

年金住宅福祉協会のサポートサービス

年金住宅福祉協会では、相続の相談についても受け付けます。税理士や司法書士をご紹介します。困ったときには一度ご相談ください。

http://www.njk.or.jp/support/index.html

電話:03-3501-4761

担当:阿部

 

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