2水分を取るだけでは不十分
熱中症を事前に防ぐ
熱中症は完全に予防が出来る病気です。そして、予防には3つポイントがあります。
【ポイント1:水分の補給】
1つめは脱水対策で最も大切です。水やお茶などでこまめに水分補給をします。入浴時や睡眠時にも汗はかきますので、入浴前後や寝る前、起床時も水分を補っておきましょう。体の熱を体内に籠らせないためにも、水分は冷やした水や麦茶がおすすめです。
水分を摂りすぎると電解質の排出が心配だという人がいますが、3食きちんと食事を食べていれば塩分をはじめとする電解質が不足することはありません。しかし、大量に汗をかいた場合には水分とともに塩分補給が必要になります。そんな時はスポーツドリンクを利用しても良いでしょう。ただし、スポーツドリンクは飲み味を良くするために糖分が多めです。
レクリエーションとしてスポーツをしたあとに、ビールなどアルコール飲料を飲むことがあります。ですが、お酒類は水分補給にはなりません。むしろアルコールの影響で脱水が進んでしまいます。運動直後にはアルコールではなく、必ず「水分となる飲料」を飲んでおきましょう。
熱中症予防での水分補給は「のどが乾いたな」と感じてからでは遅いのです。1日3食の食事の時のほか、起床時、入浴前後、就寝前は必要最低限です。これに午前と午後に1~2回程度水分を摂るようにしましょう。1回の量はコップ1杯(200cc)程度。ただし、高齢者は一気に飲むとむせてしまうことがあるので、3~4回に分けて飲むと良いです。
話題の「経口補水液」とは?
経口補水液は、水分の吸収を良くすることに特化した飲料です。糖分が少なく塩分が多めになっています。熱中症予防のための水分補給にはスポーツドリンクよりも効果が早く出る補水液がおすすめです。薬局、ドラックストアで販売されていますので、家庭で常備しておくのが良いでしょう。また冷蔵庫で冷やしておくのがおすすめです。
特にスポーツや労働で大量の汗をかいた時は冷たい経口補水液が優秀です。水泳など水中でのスポーツも一見汗をかいているようには思えませんが、シッカリ汗はかいています。運動前、運動中、運動後と飲みましょう。
運動後の飲み会では…
運動後に飲み会などに参加するといつも以上にのどが渇いた気持ちになって飲酒量が増えてしまいがちです。こののどの渇きは、まだ体が水分を欲しがっている証拠。お酒でのどを潤すのではなく、まずは水やお茶類を飲んで、渇きを感じないようにするようにします。また飲み過ぎは熟睡を妨げるので睡眠不足や二日酔いを招きます。この2つは熱中症を呼び込む原因なります。翌日の暑さを考えてお酒は「気持ちが明るくなり、さわやかに感じる程度」にしておきましょう。
【ポイント2:体温の調節】
2つめは体の内部の温度を上げないことです。
外出する時は11時~15時ごろの暑い時間帯を避けます。特に天気予報で最高気温や猛暑日などのチェックを怠らないようにしましょう。日傘やつば付きの帽子、扇子の利用も良いです。こまめに涼しい場所に移動し、水分補給を忘れないようにしましょう。
【ポイント3:室内の温度・湿度調節】
3つめは室内を涼しくする工夫です。
熱中症の約40%は室内で起きているというデータがあります(国立環境研究所「熱中症患者情報」(平成22年、東京都の熱中症患者の発生場所)。部屋はカーテンで直射日光のひざしをさえぎり、エアコンと扇風機を併用して温度を下げましょう。
湿度も高いと脱水症状を招きやすくなるので、扇風機で室内の風を循環させると湿度が上がりにくくなります。エアコンの除湿モードを使うのも良いでしょう。
熱中症になってしまったら
暑い日にしゃがみこんでしまう、ふらついてしまう、という症状がでれば熱中症が疑われます。まず意識がシッカリしているかの確認が必要です。自分で意識があった場合は周囲の人に手助けを求めて涼しい場所に早く移動しましょう。逆に呼びかけたり、肩をたたいても反応がなかったり、反応がおぼろげであると緊急事態です。すぐに救急車を呼びましょう。
涼しい場所に移動したら、服を緩めたりして、服と体の間の風通しを良くします。そして冷たい飲料を自分で飲むようにします。その後安静にし、回復すれば大丈夫です。しかし、しばらく安静にしても復調しない、飲料を自分で飲めない場合は医療機関に受診する必要があります。
熱中症の症状を起こしたのなら緊急時と考えるべきです。軽い初期症状であっても応急処置をして、症状を悪化させないことが重要です。自分が動けなくても、適切な方法を知っておくと周囲に手助けをお願いするときに役立ちます。
冷たい飲料の入ったペットボトル(500ミリリットル程度)を両脇の下、左右の足のつけね、首筋にあてます。首筋は枕のように差し込むと良いでしょう。あとで水分補給として飲む飲料にも使えますので、水や麦茶類、スポーツドリンクが良いでしょう。
炭酸飲料はのどごしが良くさわやかな印象がありますが、熱中症になっている時にはふさわしくありません。胃に膨満感を与えて必要な水分量を飲む邪魔になってしまいます。また糖分が多すぎて水分補給としても向いていないのです。
高齢の人は特に注意
高齢になると「暑さ」と「のどの渇き」を感じにくくなっていることがあります。そのほか、初期症状を熱中症が原因であると考えずに見逃してしまいがちです。高齢になると自分自身では気づきにくい、自覚しにくいということをしっかり知ることが熱中症予防の第一歩です。
「もったいない」という気持ちからエアコンを使わなかったり、扇風機だけで過ごそうとすると予想外に熱中症の危険性が高まります。窓際から離れておき、室内に差し込んでくる日光を直接浴びないようにするのも良い方法です。レースのカーテンなど薄いタイプはあまり効果がありません。室内に薄い日陰を作るぐらいのものが良いでしょう。
こまめに天気予報をチェックし、猛暑日は外出を控える、あるいは比較的気温が低い夕方に外出するなど調節をしましょう。日常の買い物などで外出は避けられませんが、通信販売や宅配などを利用して外出の回数を減らしましょう。外出時間を短くして暑さから身を守ることが大切です。
暑さに鈍くなっている高齢者は、どの程度室温を下げれば良いのか判断がつきにくくなっています。室内の温度計や湿度計を設置し、温度は28℃、湿度は70%を越さないようにします。
エアコンの使用で肩や関節が痛くなる場合や二の腕だけ寒くなるというケースがあります。こういった時は、エアコンの温度を下げすぎずに扇風機を同時に使うと冷えすぎることを防ぐことが出来ます。
高齢者イコール熱中症弱者であることを本人だけでなく、家族も理解しておくのが何よりです。暑い日に高齢者がひとりになる場合は、家族が配慮してエアコンの使用とこまめな水分補給を促しておきましょう。高齢者だけが遠隔地に住んでいるような場合は頻繁に電話連絡をしてエアコンと水分補給の話題をしておくことが未然に熱中症を防ぐことにつながります。
室内は温度28℃、湿度70%を越さないようにしましょう
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② 水分を取るだけでは不十分