平成29年8月から老齢基礎年金の受給資格期間が25年から10年に短縮されます。受給資格期間とは、年金を受給するために保険料を納めていなければならない最低限の期間のことをいいます。平成29年7月以前は、25年に満たないからとあきらめていた人も、受給資格期間の短縮により受給できる可能性が出てきたわけです。ここで一つのポイントとなるのが「カラ期間」です。受給資格期間にはカラ期間が含まれます。カラ期間の内容は複雑なため、正しく認識できている人は多くありません。ですから自分にも、知らなかったカラ期間が存在する可能性があります。保険料を全く納めてこなかったという人でも、カラ期間を算入することで年金を受給できる可能性が出てくるわけです。この制度改正を機会にご自身にカラ期間がないか確認されてみてはいかがでしょうか。

※保険料の納付を免除された期間や猶予を受けた期間も含まれます。

カラ期間とは?1カラ期間とは?

何がカラなのか?

そもそもカラ期間の「カラ」とは何を指すのでしょうか。カラ期間は正確には「合算対象期間」といいます。
 つまり受給資格期間への合算の対象となる期間という意味ですが、本来、年金制度への加入が制度上義務付けられておらず任意とされていた人が、任意加入しなかった特定の期間を指します。単なる保険料未納期間のことではありません。「カラ」とは保険料を納めていないことを言っていますが、通常の未納とは異なり、制度的に未納(未加入)であることを容認していた特殊な期間であるため、受給資格期間には算入できる措置が取られています(図1)。

図1 カラ期間の合算例

図1 カラ期間の合算例

カラ期間はなぜ導入されたか

カラ期間を理解するうえで年金制度の変遷は重要です。国民年金の制度はいつできたか、ご存知でしょうか。実は、厚生年金や共済年金よりも遅く、昭和36年4月に創設されました。この時点での国民年金は基礎年金ではなく、それぞれの制度に被保険者が分離していました。それならば、専業主婦はどこに加入していたのでしょうか。専業主婦は国民年金に属しますが、加入はあくまでも任意でした。つまり専業主婦は加入が義務付けられていなかったのです。ですから、年金には入っていないという女性(専業主婦)が当時大勢いました。昭和61年4月に基礎年金制度が確立され、すべての国民は国民年金に加入することになりましたが(図2)、これまで(昭和36年4月から昭和61年3月までの間)任意加入してこなかった多くの専業主婦たちは非常に不利な立場となってしまいました。受給資格期間が足りずに無年金に陥る可能性が出てきたからです。こうした事態を救うべく導入されたのが「カラ期間」の考え方で、受給資格期間に算入することが定められました(年金額には反映されません)。こうした歴史を振り返ると、「カラ期間」と呼ばれる意味がイメージできたのではないでしょうか。

図2 基礎年金制度の考え方(昭和61年4月以降)

図2 基礎年金制度の考え方

カラ期間の分類は複雑

カラ期間に分類されるのは上記の専業主婦のようなパターンだけではありません。カラ期間となる具体的なものを下記(図3)に表示しましたので、ご自身に該当するものがないか確認してみましょう。

図3 カラ期間の分類(下記の時期に国民年金に任意加入しなかった)

厚生年金保険の被保険者だった人

船員保険の被保険者だった人

共済組合等の組合員だった人

その他

備考

□昭和36年4月~昭和61年3月で20歳未満または60歳以上の被保険者(組合員)期間

□昭和36年3月以前の被保険者(組合員)期間

平成36年4月以後も引き続き加入していることが条件。

□脱退手当金を受けた期間のうち、昭和61年4月から65歳になるまでに保険料を納付し、または免除された期間

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〈専業主婦だった人〉
昭和36年4月~昭和61年3月に被用者年金加入者の配偶者(専業主婦)だった期間

配偶者は20歳以上60歳未満であることが条件。

〈専業主婦だった人〉
昭和36年4月以後に年金受給者の配偶者(専業主婦)だった期間

配偶者は20歳以上60歳未満であることが条件。

〈海外に居住していた人〉
昭和61年4月以後で海外に移住していた期間

20歳以上60歳未満であることが条件。

〈学生だった人〉
昭和61年4月~平成3年に学生だった期間

20歳以上60歳未満であることが条件。

〈任意脱退した人〉
昭和61年3月以前に任意脱退をした期間

〈帰化した人など〉
日本に帰化または永住権を取得して保険料が未納の期間

20歳以上60歳未満であることが条件。

カラ期間はねんきん定期便で確認できる

 カラ期間は、年1回、誕生月に送付される「ねんきん定期便」でも確認することができます。ねんきん定期便は、50歳未満の人、50歳以上の人、節目年齢(35歳・45歳・59歳)の人で様式が異なりますが、いずれの場合にも「合算対象期間」として表記されています。ねんきんネットでも確認することができます。

〈例〉50歳未満の人に届くねんきん定期便(35歳・45歳以外の人)

50歳未満の人に届くねんきん定期便(35歳・45歳以外の人)

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