平成25年10月1日現在、日本全国の総住宅数6,036万戸のうち13.5%(約820万戸)が空き家となっています(総務省「平成25年住宅・土地統計調査」)。空き家率は年々増加しており、平成10年には1割を超え、平成25年は過去最高となっています(全国平均13.5%)。ところで、空き家には2種類あります。別荘など、通常の生活を営むこと以外の目的で所有している住宅(二次的住宅)と、以前は住んでいた人がいるけれど、その人が亡くなり空き家のまま放置されている住宅です。いま「空き家問題」とされているのは、後者の場合です。所有者はその家族である相続人なのですが、きちんと手続きされていなかったり、遠方にいて放置されたままになっていたりで、様々な問題を引き起こしています。とは言え、親から引き継いだ家の対処に困り持て余している人も少なくないでしょう。今回は、そんな方たちのために「親からもらった家をどうしたらよいか」について考えてみます。
1放置しておくとトラブルのもとに
空き家はなぜ増えているか
全国で空き家率が最も高いのが山梨県で、最も低いのが宮城県となっています(表1)。空き家が高い都道府県には地方が多く、低い都道府県には東京都をはじめ、その近郊県が多くなっています。ここで国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計」を見ると、空き家率の高い都道府県には高齢単身または夫婦のみ世帯が高い県が多く含まれています。昨今の空き家率の増加は少子高齢化と強い関連がありそうです。
つまり、子どもが独立した後、夫婦あるいは単身となった高齢者が亡くなり空き家としたまま残されているパターンが多いと思われます。また、介護施設等に長期入所となり所有者が不在となっている家も増えているようです。
■表1 空き家率の高い都道府県と低い都道府県
順位 | 都道府県 | 空き家率 | 75歳以上の人がいる世帯のうち 単身または夫婦のみ世帯の割合 | 順位 | 都道府県 | 空き家率 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 山梨県 | 17.2% | 65.7% | 37 | 愛知県 | 12.0% | |
2 | 愛媛県 | 16.9% | 74.0% | 38 | 千葉県 | 11.9% | |
3 | 高知県 | 16.8% | 74.1% | 39 | 滋賀県 | 11.6% | |
4 | 徳島県 | 16.6% | 68.2% | 40 | 福島県 | 11.0% | |
5 | 香川県 | 16.6% | 69.7% | 41 | 東京都 | 10.9% | |
6 | 鹿児島県 | 16.5% | 77.0% | 42 | 神奈川県 | 10.6% | |
7 | 和歌山県 | 16.5% | 73.0% | 43 | 埼玉県 | 10.6% | |
8 | 山口県 | 15.6% | 72.6% | 44 | 山形県 | 10.1% | |
9 | 岡山県 | 15.4% | 69.1% | 45 | 沖縄県 | 9.8% | |
10 | 広島県 | 15.3% | 73.4% | 46 | 宮城県 | 9.1% |
※空き家率は平成25年、75歳以上の単身または夫婦のみ世帯の割合は平成27年の数値。
〈総務省「平成25年住宅・土地統計調査、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計〉
相続した家、所有するにも売却するにも面倒が
別居していた親から引き継いだ家をどうするか。選択肢は3つあります。一つはその家に移り住むこと。ただしこれは、仕事や子どもの学校のことなどを考えると簡単なことではありません。もう一つは相続人の住まいとは別に所有すること。この場合、いわゆる「空き家」状態にしておくケースと他の形で有効利用するケースがありますが、いずれにしても固定資産税がかかります。固定資産税は所在地の都道府県が毎年決定しますが、相続人は自分の住まいの分と引き継いだ家の分の両方を負担しなければならなくなります。残りの一つは売却することです。しかし、更地にするには多額の費用がかかりますし、また、地方になるとなかなか買い手がつかないといった問題があります。売却時にはもちろん所得税がかかります。
このようにいずれのケースをとっても費用や手間がかかるのが事実です。
そもそも「相続しない」という方法も
亡くなった人の財産を相続するかしないかは、相続人個々が決定します。ですから、たとえ子どもであっても「親の財産を相続しない」という選択をすることも可能です。これを「相続放棄」といいます。ただし、相続放棄は一切の財産が対象となります。「借金は相続放棄するけれども資産は欲しい」「家の相続は放棄するけれども他の資産は欲しい」といった選択はみとめられません。
被相続人である親も事前に配慮したい
相続という行為は、相続人にとって財産が増える可能性がある一方で、同時に手続きや税金、管理などといった面で負担も増えるということを被相続人は認識しておくべきでしょう。特に家については相続人の生活にも深く関わってくることですから、事前にどうするのかを相続人と十分話し合い、例えば、預金は長男に、土地・家屋は近くに住む次男にといった形で決めておき、遺言書といった形でその意思を残しておくことができれば、相続人の負担をある程度軽減することができます。
空き家が引き起こすさまざまな問題
相続した家を空き家のまま放置しておくとどうなるでしょうか。
●犯罪の対象に
人の目が行き届かない空き家は不法侵入、窃盗、放火などといった犯罪の対象になりやすいものです。
●事故の原因に
老朽化すれば倒壊や屋根や一部飛散などの可能性があり、近隣の人にとっても危険が及びます。
●環境の衛生に悪影響
家が腐食したり植栽が管理されていないことで害虫が発生するなど、近隣に衛生上で悪影響を及ぼします。
町の景観が悪化
空き家が古くなって荒れたまま放置されていれば、町の景観にも悪影響を及ぼします。
このように管理されずにそのままの状態となっている空き家はさまざまな問題を引き起こしやすく、それは所有者だけの問題だけではなく、近隣に住む人々の暮らしにも大きく関わり、ひいては地域の問題ともなりかねません。離れていれば、つい現実の問題として意識が薄くなりがちですが、空き家の所有者はできるだけ早くに対策を検討することが望まれます。
① 放置しておくとトラブルのもとに