自営業や専業主婦の人、アルバイトの人など国民年金第1号被保険者は、会社員などの第2号被保険者に比べると、どうしても公的な老齢年金が少なくなってしまいます。保険料を全額40年間納めても、平成28年度の老齢基礎年金の額は780,100円。月額にすると約65,000円程度です。また、第2号被保険者の人でも将来の年金額に不安を抱いている人は少なくありません。少しでも老後資金を増やして、老後の不安を払拭しゆとりある暮らしにしたいものです。付加保険料を納める、受給開始年齢を繰り下げるなどの方法については前回(http://kurassist.jp/anshin/anshin89-1.html)に掲載しましたが、今回は「個人型確定拠出年金」をご紹介します。平成29年1月からは加入できる人の範囲が拡大しました。これを機会に加入を検討してみてはいかがでしょうか。
1専業主婦や公務員、企業年金加入者に加入対象者が拡大
私的年金が個人型確定拠出年金
国民年金を1階部分、厚生年金保険を2階部分だとすると、個人型確定拠出年金は3階部分のひとつの私的年金です。個人ごとの任意の加入により年金に上乗せした給付を行うことで老後保障を手厚いものとすることが目的です。平成28年12月までは自営業者などに加入が限られていましたが、制度改正により平成29年1月からは専業主婦、公務員、私学職員、企業年金(企業型確定拠出年金、確定給付企業年金など)※を実施する企業に勤務している人に加入対象者が拡大しました。いずれも60歳未満であること、保険料を納めていることが条件です。
※企業が規約で個人型確定拠出年金への加入を認めている場合に限ります。
図 年金の体系
※1 第1号被保険者と第3号被保険者を合わせた人数。第2号被保険者は含まれない。
※2 船員を含む人数。
<日本年金機構「主要統計(平成28年6月現在)」より>
愛称はiDeCo
平成28年9月に個人型確定拠出年金の愛称が「iDeCo」(イデコ)に決定しました。「i」はindividual-type(個人型)、「De」はdefined、「Co」はcontribution pension(defined contribution pensionで確定年金)を意味します。公的年金制度は、「世代間扶助」という考え方のもと、現役時代が高齢者(年金受給者)を支えるために「保険料」を納付しますが、個人型確定拠出年金では、自分のための積立金として「掛金」を支払います。もちろん運用商品の選択も、個人の運用プランに従って個人が決めます。
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個人型確定拠出年金(iDeCo)は障害状態になったときや遺族への給付も
個人型確定拠出年金には老齢給付金だけではなく障害給付金と遺族給付金もあります。老後の生活保障としてだけではなく、加入者が障害状態になったときの保障や、加入者が万が一死亡した場合の遺族の生活保障も行っています。
老齢給付金と障害給付金は5年以上20年以内の有期年金※、遺族給付金は死亡一時金として支給されます。また、企業年金を実施している企業に転職した場合には、積み立てた資産を転職先の企業年金に移管することもできます。
※年金の全額または一部を一時金として受け取ることもできます。また、個人型確定拠出年金の運営管理機関によっては終身年金を扱っている場合もあります。
掛金や運用益などは税制優遇の対象
【掛金は全額控除の対象】
毎月の掛金は全額が社会保険料控除の対象となります。
例 年間の所得総額が500万円で、毎月3万円の掛金を支払った場合
⇒500万円の所得税率は20%で通常は100万円の所得税がかかる。掛金の分(年額36万円)を控除すると464万円が課税対象額。20%を掛けると928,000円が所得税となり、通常よりも72,000円所得税が低くなる。
【運用益は非課税】
通常の金融商品の運用益は、利子所得として20.315%の税金(源泉分離課税)がかかります(所得税15.315%・地方税5%)。ところが、個人型確定拠出年金の運用益は非課税ですから、税金がかかりません。
【受取金も控除の対象】
受取金(一時金・年金)も所得税に対して控除の対象となります。
○一時金:退職所得控除が適用されます。
勤続年数 | 退職所得控除 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数 (80万円に満たない場合は80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20万円) |
○年金:公的年金等控除が適用され、雑所得として所得税が計算されます。
受け取る人の年齢 | 受取金額 | 受取金額に係る雑所得の計算 |
---|---|---|
65歳未満 | 70万円以下 | 0円 |
70万円超130万円未満 | 収入金額-70万円 | |
130万円以上410万円未満 | 収入金額×0.75-375,000円 | |
410万円以上770万円未満 | 収入金額×0.85-785,000円 | |
770万円以上 | 収入金額×0.95-1,555,000円 | |
65歳以上 | 120万円以下 | 0円 |
120万円超330万円未満 | 収入金額-120万円 | |
330万円以上410万円未満 | 収入金額×0.75-375,000円 | |
410万円以上770万円未満 | 収入金額×0.85-785,000円 | |
770万円以上 | 収入金額×0.95-1,555,000円 |
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① 専業主婦や公務員、企業年金加入者に加入対象者が拡大