これまで職場が中心となっていた生活は、退職を機に大きく変わっていきますが、職場という活動場所がなくなることに不安を感じる方もいるかもしれません。でも、変化は大きなチャンス。家庭を生活の基本にしながら、同時にその外にも活動の場を広げていく絶好の機会です。シリーズで、退職後のさまざまな活動の場をご紹介します。
2人と接することが生きがいに
Aさん「自分が健康であることへの感謝が原動力」
Q 病院ボランティアを始めたきっかけは?
東大病院のボランティア活動がスタートしたときから活動員しています。当時、百貨店に勤務していたのですが、ちょうど休日が増えたことから、「誰かの役に立てるなら」という気持ちで参加したのが始まりです。医者にかかることがあまりなかったので、活動を始めてみると病院に来る患者さんの多いことに驚きました。
Q 活動を続けている理由は?
40代後半から始めて、いまは70歳になりました。活動歴は今年で23年目。まさか、こんなに続けることになるとは想像もしていませんでした。最低限の月2回、1回3時間という負担のない活動であることがよかったのだと思います。ありがたいことに私は健康に恵まれており、そのことへの感謝の気持ちがこの活動の原動力です。
Q 現在の活動スタイルは?
65歳で会社を定年退職して、いまはアルバイトをしながら月2、3回活動をしています。あまり無理せず、わずかな時間でも外来に立って、「何か困っているのかな」「聞きたいことがあるかな」とお気持ちを察しながら手助けをしています。出すぎたり、押しつけたりしてはいけません。ただ、困っていてもそれが表に出ていない方もおられますから、察することが大切で、その頃合いが少しずつわかってきたように思います。心温まるサービスを第一に考えて行ってきましたが、この活動が私にとって心安らぐ時間となっていることに気づきました。そのような時間が得られることが、こんなに長く続けられている理由でしょう。
Q 活動するにあたって心がけていることは?
一歩下がりながら接すること。すると、患者さんも私もお互いに安心して接することができます。
Bさん「患者さんの『ありがとう』に癒される」
Q 病院ボランティアを始めたきっかけは?
この活動が始まった当初から携わって23年目になります。その前からボランティア活動に関心があったのですが、一般的に土・日が活動日で、当時、百貨店に務めていた私にはできないものが多かったのです。私にもできる平日の活動を探していたところ、タイミングよく出会えたのがこの活動でした。すぐに参加して、仕事が休みの日にはほとんど活動していました。私も健康に恵まれていますので、やはりそのことへの感謝が活動の力になっていたと思います。
Q 活動を続けている理由は?
お客様に接するという点では百貨店の仕事も同じですが、ボランティア活動には仕事とは違うやりがいを感じていました。患者さんから「ありがとう」と言っていただけることが嬉しく、自分自身のほうが癒され、帰りには心に幸せをいただいた気持ちになれる。その繰り返しで、ここまできているように思います。「私でも人の役に立つことができたんだわ」と思わせていただけることもありがたく、コーディネーターと病院の皆様、ボランティア仲間に感謝の気持ちでいっぱいです。
Q 現在の活動スタイルは?
定年まで勤めた後、アルバイトをしながら現在はこの活動を月6回のペースで続けています。また、ここで知り合った同じ志を持つボランティア仲間との時間も楽しんでいます。神様からいただいた健康があるうちは、少しでも患者さんに満足していただけるように、これからも笑顔で続けていきたと思っています。
Q 活動するにあたって心がけていることは?
患者さんのお気持ちを察することに努めて、さりげなく手を差し伸べることです。
Cさん「新たなチャレンジ、仕事以外に活動できる場所」
Q 病院ボランティアを始めたきっかけは?
メーカーの営業職に就いていた現役時代、50歳のときにこの活動を知りました。当時は、土・日にスポーツ指導のボランティア活動をしており、他にも何かしてみたいとインターネットで検索したところ、たまたま東大病院でボランティアを募集していたのです。問い合わせたら、「中高年男性もどうぞ」と言っていただき、すぐに応募しました。病院のことに詳しいわけでも縁があったわけでもなく、自分にとっては新たなチャレンジでした。
Q 活動を続けている理由は?
活動日が平日ですので、会社員時代は溜まっていた有給休暇を活用して半休を取り、午前はここで活動し、午後から仕事へ行くという活動スタイルでした。職場がこの近くだったので続けられたのですが、仕事以外に活動できる場所を持てたことが当時の自分にとってよかったように思います。
Q 現在の活動内容は?
活動を始めて13年が経ち、63歳になりました。長年勤めた会社を定年退職後、現在は介護施設で働いています。ここでボランティア活動をした経験がいまの仕事につながったと思います。けっこう忙しくしており、ここでのボランティア活動は、月2、3回程度になっていますが、これからも続けていきたいと考えています。患者さんが安心したお顔を見せてくださるとき、「よかった」と心から思えます。そのことが励みになっています。
Q 活動するにあたって心がけていることは?
慣れてしまわないことです。言葉づかいも、応対のときの気づかいも、慣れてしまうとぞんざいになってしまう危険があるので気をつけています。
ボランティアの皆さんからは、家庭や職場とは違った生きがいを発見した喜びが感じられます。このような活動は全国各地の病院で実施されています。お近くの病院のウェブサイトなどで確認してみてはいかがでしょうか。
東大病院「にこにこボランティア」ウェブサイト
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