住宅改修は、高額なうえに出来上がりを見ていない時点で契約を結ぶために、心配の種はつきません。相談機関の一つである独立行政法人国民生活センターの調査※によると、住宅改修の相談キーワードは「高価格・料金」「見積り」がそれぞれ2割を占めており、費用に関する相談が多いことがわかります。工事が完了しても、その出来やメンテナンスのことで問題が残るケースもあり、住宅改修の問題は社会問題にまで発展しています。そこで、今回は住宅改修について気を付けたいことをいくつかご紹介します。
※「増加する住宅リフォーム工事のトラブル—トラブルは悪質な訪販リフォームだけじゃない!—」(独立行政法人国民生活センター2013年3月発表)より
1改修前の気を付けたいアレコレ
将来に備えて介護改修はできない?
たとえば40歳代のAさんが老後に備えて、公的介護保険制度を使って手すりの取付けや段差解消の工事を行うこと計画したとします。このとき、工事内容は確かに介護改修ですが、公的介護保険制度は使えません。公的介護保険制度を使用できるのは、65歳以上(特定疾病に該当する40〜64歳)で要支援・要介護認定で「支援や介護が必要」と認められた人に限ります。ですから、内容は介護改修に見合っていても、Aさんは自費で改修を行うことになります。このことは65歳以上でも「自立」と認定された人(介護が必要ないとされた人)でも同じです※。
また、高齢の親のために住宅改修を行いたいという場合も、公的介護保険制度を使うためには親が要支援または要介護の認定を受けていることが必要となりますから、未確認のまま工事を進めることが無いよう気を付けましょう。
※市区町村によっては補助金が出ることもありますから確認してみましょう。
(参考:「住まいの環境整備④〜住宅改修の値段」
【介護改修は見積で確認】
公的介護保険制度を使って住宅改修を行う場合は、ケアマネジャーが介在することが多く、見積書に「介護改修」と明記されます。見積書をうけとったら、必ず「介護改修」であることと、支給限度額(1軒20万円)を超えていないかということにも気を配りましょう。
信頼できる工務店の見分け方は?
心配を解消したりトラブルを回避するためには、工務店との信頼関係が一番です。基本的にはその家を建てた工務店にお願いできれば安心ですが、住宅改修のように生涯で1、2回行う程度で普段関わりのない工務店については、なかなか実態がつかめないのも事実です。現在はインターネットを介して見積り・受注する工務店も増えているようですが、トラブルを避けるためには直接対面し、説明を受けることが一番です。明細のわかる見積書と詳細な説明は信頼性の指標となります。
なお、最近では、こうした問題の増加を受けて、NTTやリクルートなどが共同で独自の調査を行い、信頼できるリフォーム工務店を紹介しているサイトもあります。
(例:ホームプロ)
【悪徳業者の例】
家を建てたときの工務店と疎遠になったり、昔の担当者(大工)がいなくなっていたりする場合は、他に頼むしかありません。そんな時に、飛び込みでリフォーム業者がやってきたりすると飛びついてしまいがちですが、要注意です。そのような業者は「近所で工事をしていて上から見るとお宅の屋根は瓦がずれています」「外壁にひびが入っています」などと言ってきます。特に屋根は下からは見えないことが多いので不安に思ってしまいます。また、「通常なら200万円かかるところ、近所のよしみ(実際には遠い)で60万円にしておきます」などと言われると、つい「それでは」ということになってしまいます。工事を始めてみると「内部や土台も見てあげましょう」などと言われ、ここも悪いあそこも悪いということになり、どんどん工事費が増えていきます。60万円のつもりが結局、300万円に膨れ上がるというわけです。「近所で工事をやっている」というのはその工事の家主に直接話を聞いてみないと信用できないと思ってください。
マンションの場合は勝手に改修できない?
マンションの場合は管理規約が定められている場合が多いので、先ずそれを確認することです。その上で管理組合または管理会社に相談することが必要です。
例えば、フローリングの材料も遮音性能がいくつ以上とか決められていることがあります。工事可能な時間帯や工事車両の制限などもあります。天井を改修する場合は自動火災報知機なども切らないように工事することが必要になってきます。
また、工事できる範囲は専用部分の内側に限られています。構造壁でない内部の各部屋の間仕切壁はLGS(軽量鉄骨)の間柱にPB(石膏ボード)が張られてビニールクロスでできている場合が多いので、撤去することも可能です。水廻りに関しては移動は難しいと考えたほうが良いでしょう。キッチン、トイレなどの設備の交換は可能です。その際も必ず管理組合に設備などを含め工事の確認を取りましょう。
見積りの費用が適正かどうかわからない場合は?
見積書には、工務店の信頼性がわかるポイントがいくつかあります。見積書のチェックポイントについては「前回掲載したとおりですが、一見して詳細な見積書に見えても、見積書例2のようなものもありますので、気を付けましょう。
見積書例1 通常の見積り
見積書例2 良くない例(「一式」計上が多く、数量が不明瞭で金額を増やしている可能性がある)
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① 改修前の気を付けたいアレコレ