「住み慣れた家や地域で住み続けたい」というのは多くの人の願いです。しかし、若く健康であるうちは気にならないものの、高齢になったり障害を持ったりすると、住まいの環境はさまざまな"バリア"に満ちていることがわかります。できる限り"我が家"で暮らし続けるためには、どのような配慮が必要なのか。私たちにできる住まいの環境整備についてシリーズでご紹介します。
1もし地震で家具が倒れたら?
"家庭内での不慮の事故死"や"大地震発生時における死傷被害"などの報道をみると、「家の中は本当に安全なのだろうか?」と考えさせられます。安全に安心して暮らすためには、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか。バリアフリーと家具の転倒防止対策の普及推進をしている「一般社団法人わがやネット」の児玉道子さんに、2回にわたって寄稿していただきます。
家具が凶器になる!?
平成7年1月に発生した阪神淡路大震災では、多くの尊い命が失われました。その8割が家屋の倒壊・家具転倒による圧迫が原因で死亡、しかも即死だったと発表されています。また、東日本大震災以前に発生した地震においても、救急車で搬送された負傷者の約30%〜50%が、家具類の転倒・落下・移動によるものでした(図1)。
南海トラフ地震が「いつ来てもおかしくない」と言われている昨今、家屋の耐震化とともに家具類の転倒防止対策は必須です。
図1 近年発生した地震における家具類の転倒・落下・移動が原因のけが人の割合
〈東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」
(http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-bousaika/kaguten/handbook)より〉
図2は、地震の揺れで家具類や家電製品がどのような動きをして被害をもたらすかをまとめたものです。大地震が発生した際、家具が転倒・落下・移動することで、周囲にいる人へ重大な被害をもたらしたり、避難通路をふさいで家の中にいる人が逃げ遅れたりします。"家具が凶器になり、避難の妨げにもなる"ことが分かります。
図2 家具の挙動と被害傾向
〈東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」より〉
このような危険に備えるには、日頃からどのような点に注意したらいいのでしょうか。次のページでは部屋のタイプごとに家具配置のポイントをご紹介します。
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① もし地震で家具が倒れたら?