1「まだまだ元気、でも"もしも"が心配」

 「離れて暮らす親のことが気になって」「まだまだ元気だけど、親に"もしも"のことがあったら」。離れているだけに、高齢になった親の"もしも"に不安を感じている方は少なくないでしょう。そんなときに利用できる"見守りサービス"の現状について、2回にわたってご紹介します。

見守りのレベルに応じてサービスもいろいろ

 「見守りサービス」とは、高齢者(見守られる側)の住宅にセンサー等を設置し、遠くから見守るサービスをいいます。センサーで高齢者の状態を感知し、離れて住む子どもや家族(見守る側)のもとに報告を届けます。見守りの度合いはサービスに応じてさまざまで、ガスや電気などの使用量を定期的に知らせるものから、担当者が電話や訪問などによって高齢者と直接会話し、その状況を報告するものまで、高齢者・家族の要望や費用などに応じて幅広い選択肢があります。
 さまざまな企業がサービスの開発に乗り出していることも特徴です。ガスや電力、通信、電機、郵便、セキュリティなど、今まで高齢者に特化しているイメージのなかった業種が積極的にこの分野に参入してきたことで、選択肢が大きく広がりました。企業が本業のために開発したインフラを利用することも多いため、比較的簡単に、つまり大きな費用をかけずにサービスを提供することが可能になっています。
 では、具体的にどのようなサービスがあるのか見てみましょう。

ガス・電気の使用量を報告

 高齢者宅のガス・電気の使用量を定期的に報告するサービスです。また、冷蔵庫や電気ポット、テレビのリモコンなど、家電製品の使用状況が確認できるものもあります。たとえば、ガスや電気を1日使っていないことがわかれば、子どもは親の生活サイクルの異変に気がつきます。情報は、Eメールで携帯電話やパソコンに届けられるほか、ウェブサイトにアクセスして自分で確認することもできます。緊急時に事業者から直接警察や救急に通報するサービスを伴わないのが一般的ですが、その分、費用が低く、手軽に利用できます。

高齢者の動きを感知

 動きを感知するセンサーや、住宅内の温度や湿度、照度、また、火災やガス漏れなどをチェックするセンサーを設置して、異常があると知らせてくれます。より細かな状況が確認できるため見守りの度合いも高くなり、高齢者への連絡サービスや、外部への通報サービスが伴うことがあります。ただし、費用負担もそれだけ大きくなります。

緊急時の通報

 何かあったときに高齢者自身が事業者に通報することで、事業者による安否確認が受けられるサービスです。警備員の派遣や警察・救急への通報などをしてくれるものもあります。高齢者にあらかじめ「緊急ペンダント」を配付し、ボタンを押すだけで異常を知らせることができるなど、連絡方法にも工夫がなされています。

定期的な連絡サービス

 電話などを利用して係員が定期的に高齢者と会話し、健康状態などをチェックします。場合によっては、テレビ電話や訪問などによってより詳細に状況を確認してくれるサービスもあります。報告はメールや電話などで子どもに伝えられます。ちなみに、郵便局も、局員が訪問して高齢者の生活の様子を確認するサービスに乗り出しています。

費用負担を抑えた見守りサービス

林 均さん
東京ガス 林 均さん

 今回は、手軽に利用できる見守りサービスとして、東京ガスが提供する「みまも〜る」をご紹介します。ポイントは、親と子の双方にとって大きな負担にならない"ゆるやかな見守り"であるということ。同社の林均さんにお話を伺いました(サービスの概要は記事掲載時のもの)。

 

高齢者宅のガスの使用状況を配信

 「みまも〜る」は、東京ガスを利用する高齢者(見守られる側)の1時間ごとのガス使用量を、離れて暮らす子ども(見守る側)に配信するサービスです(図を参照)。情報は子どもの携帯電話やパソコンにメールで届けられ、兄弟で見守りを分担している場合などは、複数の宛先に送ってもらうことも可能です(回数は最大1日2回)。また、ホームページにアクセスして過去1週間の情報を自分で確認することもできます。
 「毎日のガスの使用状況を確認することで、ご家族は離れて暮らす親御さんの1日の生活リズムを把握することができます。そのため、食事や入浴など、本来、ガスを使っているはずの時間に使用量がゼロであれば、『何かあったのかな』と親御さんの変化に気づいてあげることができます」(林さん)。

図 「みまも〜る」のしくみ

図 「みまも〜る」のしくみ

〈「東京ガスみまも〜る」ウェブサイトより〉

低い料金で手軽に利用

 見守りを継続していくためには、コストも重要なポイントです。比較的低い料金で手軽に利用できるのがこのサービスの特徴です(月額940円・税別)。東京ガスの利用者宅には、すでに使用量の計測ためのガスメーターが取り付けられています。サービス開始時のみ、ガスメーターから監視センターに情報を送信するための通信機器の設置が必要になりますが(初期費用5,000円・税別)、見守りのために専用のインフラを新たに整備する必要がないので、料金が低く抑えられています。

ガスの異常にも対応

 ガスといえば、子どもにとっては高齢になった親の火の取り扱いも気になります。鍋を火にかけたことを忘れてしまったり、ガスをつけたまま外出してしまったり、ということも起こりえます。
 その点、「みまも〜る」では、ガスの異常を電話で教えてくれるサービス「マイツーホー」があわせて提供されるので安心です(料金は上記月額に含まれる)。具体的には、ガスが長時間、あるいは大量に使われている場合に、高齢者宅に連絡してくれるというもの。さらに、外出先でガスの消し忘れが心配になったときに状況を確認したり、外出先からガスを止めたりすることもできます。
 「もともと、順番としては『マイツーホー』が先に実施されていたものです。このシステムを応用したのが『みまも〜る』で、同じシステムを使用しているため、あわせてご利用いただけます」(林さん)。

次のページでは、見守りサービスが親子関係に与える影響について紹介します。

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