2眼の加齢との上手な付き合い方
眼の加齢が加速している!?
これまでに見てきたような眼の加齢現象が、最近、より若い年代で起こるようになったといわれます。これは本当なのでしょうか? 福下先生によれば、これまでの常識を覆す症例も見られるそうです。
「従来は、25歳くらいで眼球の発育が完成すると、それ以降、近視は進まないといわれていました。でも、10年以上前から、25歳以降に近視になるケースが見られるようになりました。このような成人発症の近視の原因は"近業"です。仕事でパソコンを使い、その後もスマートフォンなどをかなり顔の近くで見ていますね。寝ている時間以外、ずっと近業。そのため近視化が進むと同時に、眼の緊張が緩む時間がなく、酷使しすぎて加齢が加速すると考えられます。
40歳くらいからさまざまな身体機能が落ち始め、通常、老視も40歳前後から始まります。でも、最近では20〜30代で眼を使いすぎて水晶体が硬くなってしまい、早ければ20代で老視が起こる方も出てきています。また、特殊な例ですが、熟睡している3〜4時間以外、ほぼずっとスマートフォンを見ていた方で、30代で白内障を発症した方もいらっしゃいます。ほかの要因も影響していると考えられますが、眼の酷使が原因の"早期老化"が起こっているといえるでしょう。」(福下先生)
栄養と休養で眼を守る
加齢は止められないとはいえ、できるだけよく見える状態で長く過ごしたいもの。"早期老化"を防止するには、加齢を助長するものを取り除けば良いわけです。若々しい眼をキープするための対策に、以下のようなことが考えられます。
眼を使いすぎない
眼の酷使は加齢を速めるので、近方作業をある程度制限することが大切。近業の合間には眼を休ませましょう。次のような方法が効果的です。
・遠くを見る
眼をつぶることも眼の休息になりますが、遠くを見ることがより良いといわれます。
・温湿布(眼を温める)
眼のすぐ近くで作業を続けると眼が乾きやすくなります。温めることによって、眼を保護する涙の脂成分の分泌が促進されます。また、温めることにより血液の循環が良くなって眼精疲労の軽減にも効果が期待できます。市販のホットマスクのようなものも良いでしょう。
活性酸素を作らない
人間の身体の"老化"全般に活性酸素が影響するといわれています。活性酸素とは「身体を酸化させるサビの原因」と表現されたりするものです。タバコや脂質の摂りすぎ、疲れやストレスも活性酸素を発生させるといわれます。
紫外線をカット
紫外線は白内障を誘発します。紫外線を多く浴びる南太平洋の人のほうが、日本よりも若い年齢で白内障になりやすいことがわかっています。夏場は特に、サングラスや帽子、日傘で紫外線を防ぎましょう。光は横からも入るので、サングラスは大きめのものが良いでしょう。また、濃い色のものをかけると瞳孔が開き、眼に入る紫外線が多くなるため、色の濃すぎないものがおすすめです。
日本古来の食事をとる
前述のように、加齢黄斑変性には食生活の欧米化が関係しているといわれます。ミネラルが不足しないように注意が必要です。たとえば、干しシイタケには亜鉛が豊富に含まれていますが、忙しい現代人は手間のかかる乾物の調理は避けがちです。古くからの日本の食生活に再注目し、緑黄色野菜や魚を増やしてバランスの良い食生活を心がけましょう。
セルフチェックで病気の早期発見を
緑内障や加齢黄斑変性は視覚の障害が起こってしまうと元に戻らないため、早く見つけることが重要です。以下の簡単なチェックを折に触れて行い、異常を感じたら眼科を受診しましょう。
チェック1 片目を隠して周りを見てみる
片目で見ることで、左右の目の見え方の差がわかります。もし、近くも遠くも見えづらい場合は病気の可能性があります。
チェック2 格子状の線を見る
方眼紙や囲碁将棋の盤など、格子状のものを左右交互に片目で見て、完全に見えるかどうか確認します。線がゆがんで見える、一部分が欠けて見える、中心部がぼやけて見えるなどの場合は加齢黄斑変性の疑いがあります。また、視界の鼻側の下のほうが欠けて見える場合は緑内障の疑いがあります。
福下先生のアドバイス「糖尿病の方も眼科の受診を」
糖尿病の合併症のひとつに、「糖尿病網膜症」があります。眼底に出血を起こし、時には網膜剥離に至って視力を失う可能性もある病気です。でも、治療法も進化して、うまくコントロールすれば進行を防ぐことができます。糖尿病と診断されたら、眼科も受診して眼の状態を確認してください。
アンチエイジングより"ウィズエイジング"
"アンチエイジング"という言葉が一般に知られるようになりました。これは加齢に抵抗するということではなく、加齢現象の予防措置をとることを意味します。意味を誤解して加齢に過度に抵抗することは、病気の発見を遅らせ、病状を悪化させることにつながりかねません。
「老視や白内障は避けられませんし、緑内障や加齢黄斑変性も発症すれば完治はしません。これらを受け入れて、いかに付き合っていくかが大切です。年齢とともに生きる"ウィズエイジング"を実践していきましょうということですね。老眼鏡をかけることに強い抵抗を感じる方も多くいらっしゃいますが、抵抗してもしきれない時期が必ずやってきます。見えづらいことを我慢して頭痛などに苦しむよりも、状態に合った眼鏡をかけることで日常生活が快適になることを考えていくほうが良いと思います。
40歳前後で老眼鏡の必要を感じたときをひとつの区切りとして、一度、眼科医に視力について相談し、詳しい検査を受けていただきたいですね。白内障や緑内障、加齢黄斑変性の早期発見と予防にもつながりますから。」(福下先生)
健康診断で行われる眼の検査は簡単なもので、このような病気の早期発見はなかなか難しいといいます。セルフチェックで自覚症状が出ていなくても、散瞳検査(さんどうけんさ:瞳孔を開いて行う詳しい検査)を受けてみてはいかがでしょうか。
- ① 眼の加齢現象とは
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② 眼の加齢との上手な付き合い方