2年金受給者・受給間近の人のサバイバル術
経済的に余裕があるなら「繰下げ受給」で年金額をアップ
老齢年金は原則として65歳からもらえることになっています。しかし、65歳より早くもらいたい人は、手続きをすれば60歳から年金を受け取る「繰上げ受給」ができ、逆に65歳より遅くもらいたい人は66歳以降から年金を受け取る「繰下げ受給」ができます。
【繰上げ受給】
「繰上げ受給」をすると、毎月の年金額は受給開始年齢に応じて減額(0.5%×繰り上げ請求月から65歳になる日の前月までの月数)され、減額された年金額は一生変わりません。また、障害基礎年金や寡婦年金は受けられなくなります。
【繰下げ受給】
「繰下げ受給」をすると、毎月の年金額は受給開始年齢に応じて増額(0.7%×65歳になる月から繰下げ請求月までの月数)され、増額された年金額は一生変わりません。
厚生年金保険、共済組合の人は、老齢厚生年金、退職共済年金を66歳以後に繰下げ受給することができ、その場合、老齢基礎年金と同時に繰下げ受給することも、老齢厚生年金、退職共済年金だけ繰下げ受給することも可能です。
経済的に余裕があるのなら、「繰下げ受給」を選択するのも1つの手かもしれません。
表1 老齢基礎年金の繰下げ受給を始める年齢と増額率
繰下げ請求月 | 増額率 | 受給率 (本来の年金に対して) |
---|---|---|
66歳0カ月〜11カ月 | 8.4%〜16.1% | 108.4%〜116.1% |
67歳0カ月〜11カ月 | 16.8%〜24.5% | 116.8%〜124.5% |
68歳0カ月〜11カ月 | 25.2%〜32.9% | 125.2%〜132.9% |
69歳0カ月〜11カ月 | 33.6%〜41.3% | 133.6%〜141.3% |
70歳0カ月〜11カ月 | 42.0% | 142.0% |
月の給与と年金が一定額を上回ると老齢厚生年金の一部または全額が支給停止に
年金をもらうようになっても会社で働いて給与を得ようか、それとも年金だけで暮らしていくか、悩む人も多いでしょう。では、もし働きながら年金をもらおうとした場合、受け取る年金額はどのように変わるのでしょうか。
結論から言うと、働いていても老齢基礎年金は減額されません。しかし、老齢厚生年金は、給料と年金の合計(月額)が一定額を上回ると、一部または全部の支給が停止されます。
【60歳〜64歳の働いている人の老齢厚生年金】
60歳〜64歳の人の場合には、給与(年収の1/12相当)と年金の合計(月額)が28万円を超えていると、老齢厚生年金の額の一部または全部が支給停止になります(表2)。なお、年金月額には加給年金額は含まれません。
表2 60歳〜64歳の在職老齢年金早見表
表の数字は支給される年金額(月額換算)。 ■は全額支給 □は一部支給 ■は全額支給停止平成26年4月現在
年金の月額(万円) | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6.0 | 8.0 | 10.0 | 12.0 | 14.0 | 16.0 | 18.0 | 20.0 | 22.0 | ||
給与の 月額 (万円) |
13.0 | 6.0 | 8.0 | 10.0 | 12.0 | 14.0 | 15.5 | 16.5 | 17.5 | 18.5 |
16.0 | 6.0 | 8.0 | 10.0 | 12.0 | 13.0 | 14.0 | 15.0 | 16.0 | 17.0 | |
19.0 | 6.0 | 8.0 | 9.5 | 10.5 | 11.5 | 12.5 | 13.5 | 14.5 | 15.5 | |
22.0 | 6.0 | 7.0 | 8.0 | 9.0 | 10.0 | 11.0 | 12.0 | 13.0 | 14.0 | |
25.0 | 4.5 | 5.5 | 6.5 | 7.5 | 8.5 | 9.5 | 10.5 | 11.5 | 12.5 | |
28.0 | 3.0 | 4.0 | 5.0 | 6.0 | 7.0 | 8.0 | 9.0 | 10.0 | 11.0 | |
31.0 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5 | 7.5 | 8.5 | 9.5 | |
34.0 | 0.0 | 1.0 | 2.0 | 3.0 | 4.0 | 5.0 | 6.0 | 7.0 | 8.0 | |
37.0 | 0.0 | 0.0 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5 | |
40.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 1.0 | 2.0 | 3.0 | 4.0 | 5.0 | |
43.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 |
【65歳以上で働いている人の老齢厚生年金】
65歳以上で働いている人の場合には、給料(年収の1/12相当)と年金の合計(月額)額が46万円を超えていると、老齢厚生年金額の一部または全部が支給停止になります(表3)。なお、年金月額には経過的加算や加給年金額は含まれません。
表3 65歳以上の在職老齢年金早見表
表の数字は支給される年金額(月額換算)。 ■は全額支給 □は一部支給 ■は全額支給停止
平成26年4月現在
年金の月額(万円) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
8.0 | 10.0 | 12.0 | 14.0 | 16.0 | ||
給与の 月額 (万円) |
30.0 | 8.0 | 10.0 | 12.0 | 14.0 | 16.0 |
35.0 | 8.0 | 10.0 | 11.5 | 12.5 | 13.5 | |
40.0 | 7.0 | 8.0 | 9.0 | 10.0 | 11.0 | |
45.0 | 4.5 | 5.5 | 6.5 | 7.5 | 8.5 | |
50.0 | 2.0 | 3.0 | 4.0 | 5.0 | 6.0 | |
55.0 | 0.0 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 |
退職すれば、老齢厚生年金額は本来の額に
60歳代の前半で働きながら老齢厚生年金(支給停止の調整をされた老齢厚生年金)をもらっていた人が、65歳未満で退職して再就職しない場合は、退職後1カ月が過ぎると支給停止がなくなり、老齢厚生年金は再計算されて全額がもらえるようになります。
なお、働いているまま65歳になると、65歳までの加入期間に基づいて年金額は再計算されます(給料との調整は行われます)。退職後1カ月が過ぎると、同様に本来の年金額をもらえるようになります。
70歳以上は働いていても厚生年金保険には加入しない
厚生年金保険に加入するのは70歳になるまでです。70歳以上の人は働いていても保険料の負担はありません。ただし、給料をもらっていれば、年金額は同様に調整されます。
年金をもらうようになっても働くか、年金だけで暮らしていくかを決める際には、働いた場合にもらえる年金額を考慮する必要もあるといえます。
失業給付をもらうと、その間の老齢厚生年金額はゼロに
60〜64歳の人が利用できる雇用保険に、失業給付と高年齢雇用継続給付があります。
失業給付と同時に年金をもらう場合、「特別支給の老齢厚生年金」は全額支給停止になります。ただし、失業給付がもらえる期間が終了すると、翌月から年金をもらう権利が復活します。
高年齢雇用継続給付をもらう場合は、老齢厚生年金は一部支給停止
高年齢雇用継続給付は、給料が60歳時の給料(60歳になる過去6カ月の平均額)に比べて75%未満になったときに、65歳になるまでもらえます。ただし、60歳以上65歳未満で、雇用保険の被保険者期間が5年以上ある人に限ります。
高年齢雇用継続給付と年金を同時にもらう場合は、「特別支給の老齢厚生年金」は高年齢雇用継続給付の給付率に応じて一部が支給停止になります。
年金のもらい方は人それぞれ
以上のように、年金保険料の納付や、年金の受け取りについては、さまざまな方法が用意されています。
自分のライフプランに応じて、保険料の支払い方や、働き方、年金をいつからどのように受け取るかを、総合的に考えていくことが大切だといえるでしょう。
-
② 年金受給者・受給間近の人のサバイバル術