1年金加入・保険料納付の段階でできるサバイバル術

 「年金は将来もらえなくなるのでは?」という不信感が世の中に根強くあり、保険料の未納が多いことも問題となっている年金制度ですが、制度がより長くより社会の情勢に対応して機能するためにさまざまな制度改正が行われています。また、年金がもらえない人を1人でも減らせるよう、少しでも多く年金をもらえるような取り組みが行われています。  たとえば、国民年金では平成26年4月からは、保険料の免除が約2年遡って申請できるようになったほか、平成27年10月からは老齢基礎年金の受給資格期間が「25年以上」から「10年以上」に短縮されます。また、平成24年10月〜平成27年9月末の3年間に限っては、未納の保険料を10年遡って納めることができます。
 年金制度をあらためて知るとともに、どうしたら将来少しでも多く年金を受け取れるようになるかを、「年金に加入し保険料を納付する段階」と「年金受給もしくは受給間近の段階」とに分けて考えていきましょう。

まずは国民年金の制度を知ろう

20歳以上は全員、国民年金加入が義務

 日本に住む20歳以上60歳未満の人は全員、国民年金に加入することが義務付けられています。
 国民年金の加入者は、次の3種類に分けられています。
①第1号被保険者
 20歳以上60歳未満の自営業者・農業者とその配偶者、学生、無職の人等
②第2号被保険者
 国民年金の加入者のうち、会社員や公務員など厚生年金保険、共済組合の加入者
③第3号被保険者
 第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者で、年収が130万円未満の人

老齢基礎年金を受け取るには
25年(平成27年10月からは10年)以上の保険料納付が必須


 65歳から国民年金の老齢基礎年金を受け取るには25年以上(平成27年10月からは10年以上)保険料を納めていることが必須条件となっています。この期間を「受給資格期間」といいます。
 受給資格期間には、保険料を免除された期間や、学生納付特例制度を利用した期間も含まれます。

保険料を40年間納めると老齢基礎年金を満額受け取れる


 老齢基礎年金は、保険料を納めた期間(保険料納付済期間)が40年間(480カ月)あって初めて満額(平成26年4月現在、年額772,800円)を受け取れます。
 保険料納付済期間が40年に満たない場合は、保険料を納めた月数や、保険料を免除された月数に応じて、満額の年金額から減額されます。つまり、保険料を納めた期間が、受給資格期間である25年以上(平成27年10月からは10年以上)あったとしても、40年に満たない場合や、保険料の納付を免除された期間があった場合は、その分年金受給額は少なくなるということです。

平成27年9月末まで未納保険料を10年遡って後納できる

 未納の国民年金保険料を遡って納められるのは過去2年分までとされていますが、「年金確保支援法」の施行により、平成24年10月から平成27年9月末までの3年間に限り、過去10年分まで遡って納めることができます(保険料の後納制度)。
 後納制度を利用すれば、年金額を増やすことができます。また、納付した期間が不足したことで年金受給ができなかった人が年金受給資格を得られる場合があります。保険料の未納期間がある人は、ぜひこの機会に後納しましょう。
※3年度以上遡って保険料を納付する際は、加算金がかかります。

給料は多く長くもらうほど年金額は増える雇用延長も検討しよう

 会社員や公務員の人は、厚生年金保険や共済組合に加入します。厚生年金、共済年金の受給額は、納めた保険料とその月数に応じて決まります。つまり、少しでも長く、多く給料をもらうことができれば年金額は増えるということです。平成25年4月に「高年齢者雇用安定法」が改正され、会社員は申出により65歳まで雇用を延長できるようになりました。可能ならば少しでも長く働くことを検討してもいいでしょう。

夫の被扶養者の妻。働きたいけどどうする?

パートタイマー等も厚生年金保険に加入できる
家計を助けるために妻がパートなどの働きに出ることはよくあること。正社員でなくパート等で働く人も、労働時間・日数ともに一般社員の3/4以上あれば原則として厚生年金保険の対象となります(平成26年度現在)。

自分自身の年金額を増やしたいなら
第3号となるよりも厚生年金保険に加入を

厚生年金保険の加入者になれば保険料はもちろん支払わなければなりません。
一方、年収が130万円未満ならば、配偶者の被扶養者として「第3号被保険者」になれます。第3号被保険者の保険料は、配偶者が加入している厚生年金保険や共済組合が一括して負担するので、個別に納める必要はありません。
でも、第3号被保険者がもらえる年金は基礎年金だけです。自分自身の年金額を増やそうと思ったら、やはりより多く給料がもらえる働き方をしたほうが得策。厚生年金保険の加入者になることも考えてみてはどうでしょうか。

保険料納付が困難ならば免除制度がある

保険料の申請免除は4種類

 第1号被保険者で、経済な理由などにより保険料を納めることが困難な人は、市区町村窓口に申請して認められると保険料が免除されます(申請免除)。
 申請免除には、前年度の収入に応じて「全額免除」「3/4免除」「半額免除」「1/4免除」の4種類があります。

過去2年分まで遡って免除される

 平成26年4月から法律が改正され、2年1カ月前まで遡って免除を申請できるようになりました。すでに前納した分については還付が可能です。
 保険料免除になった期間は、老齢基礎年金の受給資格期間である「25年以上」(平成27年10月からは「10年以上」)に算入されます。
 ただし、受け取る年金額は、保険料を納めた場合に比べて以下のとおり減額されます。

【免除期間の年金額の計算】

◆全額免除期間:全額納付の年金額×1/2(平成21年3月分までは1/3)
 ◆3/4免除期間:全額納付の年金額×5/8(平成21年3月分までは1/2)
 ◆半額免除期間:全額納付の年金額×6/8(平成21年3月分までは2/3)
 ◆1/4免除期間:全額納付の年金額×7/8(平成21年3月分までは5/6)

年金額を増やしたいなら10年以内に追納を

保険料を免除されると、将来受け取る年金額は減額されます。しかし、免除された保険料は、10年以内であれば追納でき、年金額を満額に近づけることができます。追納するには、年金事務所に申請して承認を受けることが必要です。

保険料を払えない学生は「学生納付特例制度」を

 20歳になると国民年金への加入が義務付けられているとはいえ、学生が保険料を納めるのは大変です。そこで学生については、在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」があります。
 本人の所得が基準以下(通常、年収118万円以下)の20歳以上の学生は、市区町村窓口に申請することで、学生期間の保険料の納付を猶予されます。この際、家族の所得の多寡は問われません。
 学生納付特例制度により保険料支払いの猶予を受けた期間は、将来受け取る年金(老齢基礎年金)の額には反映されません。しかし、年金の受給資格期間である25 年以上(平成27年10月からは10年以上)の期間には含まれます。学生納付特例制度により支払いを猶予された保険料は、10年以内であれば追納することができ、将来受け取る年金額を増やすことができます。追納するには、年金事務所に申請して承認を受けることが必要です。
 なお、学生である間は、保険料免除制度は利用できません。

※平成26年4月から法律が改正され、2年1カ月前まで遡って学生納付特例制度の利用を申請できるようになりました。

産前産後休業・育児休業中は保険料が免除される

 産前産後や育児のために勤め先を休業する場合は、事業主が申請すれば健康保険や年金の保険料が免除されます。この期間は保険料を納めた期間(保険料納付済期間)として見なされ、年金額の計算に反映されます。
 なお、育児休業期間中の給料が休業前よりも低くなる場合は、事業主が届けることで、年金額は休業前の給料(標準報酬月額)を使って計算されます。よって、育児のために休業しても、そのために年金額が不利になることはありません。

さらに年金を増やしたいなら

「付加保険料」を納めて年金額をアップ

 毎月の保険料に付加保険料(月額400円)をプラスして納めると、老齢基礎年金に付加年金を上乗せすることができます。
◆付加年金額 = 200円 × 付加年金保険料納付月数

基金に加入して年金額に上乗せ給付を

基金に加入すると、年金額に上乗せして給付が受けられます。
第1 号被保険者は、国民年金基金(職能型・地域型)に加入することができます。
第2号被保険者はそれぞれの厚生年金基金に加入することができます。
厚生年金基金に加入している人は、基金に納める分について一定の厚生年金保険料が免除されます。免除される率は加入する基金ごとに異なります。

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