1年金機能が強化されるってどういうこと

なぜいま、年金制度を変える必要があるのか?

 国民年金法が成立し「国民皆年金」が実現してから50余年、私たちを取り巻く社会状況は大きく変わりました。予想をはるかに上回る速度で少子高齢化が進み、労働力人口が減少するとともに、経済の低成長時代が続いています。
 現在、日本人の平均寿命は男性79.94歳、女性86.41歳(厚生労働省「平成24年簡易生命表」より)。65歳以上の高齢者は、現在の全人口の約5人に1人。長寿化はさらに進み、推計では2050年頃には約2.5人に1人になるといわれています。一方で、出生数は現在、年107万人ですが、40年後にはその半数以下まで減少すると予測されます。日本は世界史上、前例のない少子高齢社会が待ち受けているのです。
 こうした状況下で、厚生年金の受給開始年齢の引き上げが2013年度から始まりました。これまで60歳から受け取れた厚生年金は、今年度以降、段階的に65歳へと引き上げられます。なぜでしょうか?
 日本の年金制度は、個人が自分の老後資金を準備する「積立方式ではなく、若い現役世代が納める保険料で高齢世代を扶養する「賦課方式で運営されています。従って、高齢者の人口が増えれば、若い世代の負担が増えることになります。受給者への給付額が年々増大すれば、年金制度は破綻しかねません。
 1970(昭和45)年頃は1人の高齢者(65歳以上)を8.5人の現役世代(20〜64歳)で支える、いわば"胴上げ型"の社会でしたが、現在は高齢者1人を3人で支える"騎馬戦型"、そして2050年頃には高齢者1人を1人で支えなければならない"肩車型"になるといわれます。
 社会保障制度の財源を確保し、負担を将来世代に先送りしないために、単に年金制度だけではなく税制と一体化した年金制度を改正することが急務となったのです。

公的年金制度―現状の5つの不安

① 国民年金・厚生年金の加入者の変化

雇用の在り方が変化し、国民年金加入者に非正規雇用者が増えており、将来の低年金・無年金が心配される。

② 年金制度が雇用・就労や人生の選択に影響

労働時間や収入で年金制度の適用関係が変わるため、労働者の就業行動や事業主の雇入れ行動に影響している。

③ 低年金・無年金者の存在

老齢基礎年金の平均受給額は月5.4万円(老齢基礎年金だけの人の平均は月4.85万円)。
無年金者は、最大118万人と推計される。

④ 年金制度への不信・不安

給付と負担の関係が分かりにくいとの指摘や官民格差の批判、制度破たんの不安がきかれる。

⑤ 長期的な持続可能性への不安

年金の恒久財源が確保されていない。

公的年金制度―今後望まれる姿

○働き方やライフコースの選択に影響を与えない一元的な制度
○最低保障機能をもち、高齢者が貧窮しないような機能が強化された制度
○国民から信頼され、財政的に安定した制度

制度改正はどのように進められているか?

 こども・子育て支援、医療制度・介護保険制度、公的年金制度といった社会保障制度の財源を確保し、将来の世代の負担をできるだけ少なくするため、「社会保障・税一体改革」が提唱され、平成24年度に年金制度に関して次の4つの法律が可決・成立しました。

○公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律

○被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律

○国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律

○年金生活者支援給付金の支給に関する法律

 このうち、特に「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」は、「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化」を目的とし「年金機能強化法」と呼ばれています。年金制度への加入や年金額受給について、一般的な人が関わってくることが多い法律です。

改正で何が変わるのか

 成立している4法のなかで、それぞれ改正内容が決まっています。それぞれ国民の生活に密着した内容となっています。

表1 4つの改正法の内容

改正法の主な内容 施行日
公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律 ○年金の受給資格期間が10年に短縮 平成27年10月1日
○基礎年金国庫負担1/2を恒久化 平成26年4月1日
○短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大 平成28年10月1日
○厚生年金・健康保険等の産休期間中の保険料免除 平成26年4月1日
○遺族基礎年金の父子家庭への支給 平成26年4月1日
被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律 ○公務員等も厚生年金に加入、2階部分を厚生年金に統一 平成27年10月1日
○共済年金と厚生年金の保険料率を統一
○共済年金の3階部分を廃止
○恩給期間に係る給付を27%引き下げ 平成25年8月1日
国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律 ○平成24・25年の基礎年金国庫負担割合を消費税増収分により1/2に 平成25年11月26日
○年金額の特例水準を平成25〜27年度で解消 平成25年10月1日
年金生活者支援給付金の支給に関する法律 ○低所得高齢者・障害者等の受給者に福祉的給付 平成27年10月1日

※税制抜本改革により得られる税収(消費税収)を充てるため、消税改定時期に合わせて施行。

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