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くらしすとEYE
生きがい・社会参加
掲載:2017年4月14日

高齢者と子どもがともに過ごす時間

 現在、特に優先順位が高い施策として、高齢者に対するサービスと子育て支援の充実が挙げられますが、一般的には、それぞれ対象ごとに別々の枠組みでサービスの提供が行われています。しかし、両者を結び付けることで新たな効果を生み出そうとする試みが各地で始まっており、今後、さらに拡がっていくことが期待されています。
 同じ建物の中で、認知症の高齢者が通う「デイサービス事業」と乳幼児を預かる「保育事業」を行うとともに、誰もが気軽に立ち寄ることができる「地域の寄り合い所」を併設して、多世代の多様な人たちが交流できる場を提供している複合施設があります。高齢者と子どもが日常的に触れ合うことで、どのような効果が生まれているのでしょうか。「NPO法人地域の寄り合い所 また明日」を運営している森田眞希さん、森田和道さんご夫婦にお話をうかがいました。

長屋のような空間で多世代が交流

施設はアパートの1階部分
施設はアパートの1階部分

 「地域の寄り合い所 また明日」は、保育士の森田眞希さんを代表理事、介護福祉士の森田和道さんを管理者として、平成18年に開設されました。東京・小金井市の住宅街に立つ2階建てアパートの1階にあり、中に入ると、開放的な空間が長く続いていて広々とした印象。開所にあたりアパートの大家さんの理解のもと、1階の全5戸分の壁を取り払い、長屋のような空間にしました。
 この場所で、①認知症専門デイサービス「また明日デイホーム」(介護保険事業・定員12人)、②認可外保育「ちいさな保育園 虹のおうち」(定員9人)、③認可保育「また明日保育園」(定員6人)、④「地域の寄り合い所」(独自の地域福祉事業)、の4つの事業を行っています。ただ、施設内に仕切りはありません。日当たりがよく、見通しのきいた長屋風の空間には、ソファやテーブルの並ぶフローリングのスペース、卓袱台のある畳のスペースなどがあって、デイサービスの高齢者と保育園の乳幼児が自然に入り混じり、ゆるやかに関わり合っています。認可保育園は0歳児から2歳児、認可外保育園は0歳児から就学前までの乳幼児が対象になっており、取材で訪れた午後2時過ぎはお昼寝をしていました。高齢者はソファに座ってお茶を飲みながらおしゃべり。静かでのんびりした時間が流れています。
 介護と保育の専門職員はそれぞれの仕事をしつつ、高齢者にも子どもにも目を向けています。非常勤の職員も、どちらにも対応できるようにスキルを身につけているといいます。

高齢者は「何かをしてあげられる存在」でいられる

森田さん
森田和道さん

 高齢者にとって、ここはどのような場所なのでしょうか。
 デイサービスは、月曜日から金曜日の9時45分から17時まで。認知症の症状があり、要介護度の高い人の利用が主だということですが、そのような印象は感じられません。「高齢者の方がここで過ごすのは数時間ですが、感情が不安定になるとか徘徊するといった行動はあまりみられません。ここが、自分の意思で判断し、主体性を持てる場になっているからだと思います」と和道さん。
 一般のデイサービスでは1日のスケジュールが決まっており、高齢者はそれに従って行動するしかありません。一方、「また明日」では、特に行事があるわけではなく、1日の過ごし方は自由で、利用者の主体性を尊重し、職員はそれを支えるスタンスをとっているといいます。
 「午前中は園児の散歩に付き合う方が多く、子どものペースに合わせて歩いたり、手を貸してくれたり。午後は、保育園の昼食が12時前に始まり、食べ終わってお昼寝をしたら、デイサービスの皆さんが『そろそろ私たちも』という流れで昼食になります。あとは好きに過ごします。居眠りしたり、おしゃべりしたり、特に何をしているというわけでもないのですが、子どもの声が聞こえたり、気配がする中で、寝ている姿や遊んでいるところを見てかわいいと感じたり、そっと手助けをしたり。子どもが泣くとなだめてくれます。うるさいという人はいません。昔の大家族のような感じです。
 職員は付かず離れずで見守ります。高齢者は子どもと一緒に過ごすことで、主体的に何かを感じたり、何かをしてあげられたりする存在でいられる。そのため、認知症の方でも自己肯定感を持つことができる。開設して10年になりますが、これがとても大切なことだと実感しています。」(和道さん)

高齢者と子どもが一緒におやつの時間
高齢者と子どもが一緒におやつの時間

子どもの成長にとって大切な時間

ギターに合わせて踊る子どもたち
ギターに合わせて踊る子どもたち

 では、子どもたちにとってはどうでしょうか。
 近年は核家族が多くなって、子どもと高齢者が日常的に接する場が減少しています。しかも、デイサービスの高齢者は、大半が自分の祖父母より年上で認知症の症状もあり、どう接していいのか戸惑う子どももいます。
 「高齢者の動作は子どもや若者からみると遅く、子どもたちはつい自分のペースで動きがちです。ここでは、お年寄りへの配慮として、『前を横切らないこと』『後ろから急に声をかけないこと』を伝えています。それくらいしか言いませんが、小さな子でもお年寄りと過ごしていくなかで接し方を学んでいき、2歳くらいになると自然に気を遣っている様子が見られるようになります。また、ここだけでなく、町で高齢の方に会うとあいさつをしたり、自然に手をつないだりする子がいると聞きました。他の世代と当たり前のように接することができる。子どもたちの成長にとっても、ここでお年寄りと過ごす時間は大切なものになっていると思います。」(和道さん)

多世代がともに時間を過ごせる場所

森田眞希さん
森田眞希さん

 こうした複合施設を開設したいと考えたのは、今から20年以上前のことです。専門学校の同級生で、同じ社会福祉法人が経営する特別養護老人ホームと保育施設に、介護福祉士と保育士として就職したお2人。ある日、眞希さんが、院内散歩で保育施設のダウン症の子どもを連れて特養に遊びに行ったところ、その子を見た高齢者の表情がぱっと明るい表情に変わりました。車いすに乗っていたり、寝たきりになっている人も手を差し伸べ、頭をなでるなどして親愛の情を示そうとする。子どもも高齢者の中に入って屈託のない笑顔を見せていたといいます。
 「他のところでは『障害があるからかわいそう』と見られがちだった子どもと、特養では支えられるだけだったお年寄り――双方の表情がこんなにも変わるのを見て驚きました。もともと多世代が1つの空間で過ごせる施設をつくりたいと考えていましたが、これをきっかけに2人で実現に向かって踏み出し、地域や自治体などたくさん方々に支えられ、協力を得てここまでやってくることができました。」(和道さん)
 眞希さんは、多世代が同じ場所で過ごす時間の効果についてこう話します。
 「子どもでも高齢者でもない中間の年齢層は、身体は動くけれど、子育てや仕事など、日常生活ためのこと追われがちです。そんな世代の手助けを、ここでは高齢者の方々がしてくれていると感じます。一方、子どもたちにも、高齢者の方をにこやかにする力があります。双方が同じ場所で過ごすことで、それぞれが持つ力が引き出され、支え合う存在になれる。私たち職員は黒子となり、そうした力を引き出す手伝いをすることを目指しています。」

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