那覇年金事務所(沖縄県那覇市)
お客様から「お褒めの言葉」をいただくことが増えてきた
――本濱哲二所長
本濱哲二所長は、福岡広域事務センターに2018年1月に統合された沖縄事務センターでセンター長を務め、統合を機に那覇年金事務所長に就任した。2016年4月から務めた沖縄事務センターの前はコザ年金事務所長として2年間勤務し、さらにその前職は小倉北年金事務所で初めて所長を務めた。
沖縄県内には6つの年金事務所があるが、那覇年金事務所の管轄市町村は那覇市・糸満市・豊見城市の3市、南風原町・八重瀬町の2町、そして渡嘉敷村・座間味村・粟国村・渡名喜村・南大東村・北大東村の6村となる(図1)。6村はいずれも離島だ。また、管轄区域の人口はおよそ51万3千人(2013年1月1日現在)ほどだ(表1)
図1 沖縄県内各拠点・管轄地域
※提供:那覇年金事務所
表1 沖縄県の人口・面積
※提供:那覇年金事務所
那覇年金事務所は沖縄県の代表事務所であることから、副所長2名が在籍する。うち1名が総務調整課長を兼任。もう1名は対外的な業務を担当し、地域年金展開事業および社会保険労務士との連携業務を行っている。組織は4課1室体制で、総務調整課、厚生年金適用調査課・厚生年金徴収課が事務所建物の2階、国民年金課・お客様相談室が1階に配置されている。職員数は全体で63名である。
2010年1月に日本年金機構が発足し、今年で10年目となるが、職員の意識の変化をこれまでの所長経験を通じて本濱所長はこう見ている。
「お客様への対応が格段に良くなったと感じています。細かいことですが、以前は来訪されるお客様に対して『~さん』とお呼びしていましたが、いまは『~様』、『お客様』という呼び方が定着し、それに合わせて、お客様への接し方も丁寧になり、いまではお客様から苦情よりも『お褒めの言葉』をいただくことが多くなりました。わたしも所長として、小倉北、コザ、そしてここ那覇の3つの年金事務所を経験しましたが、どの事務所でもお客様に対する職員の意識は高く、お客様サービスが向上してきたことを実感しています」
国民年金保険料の納付率アップが重要課題
そしていま、那覇年金事務所が重点課題として取り組んでいることが、国民年金保険料の納付率の向上だ。
「国民年金保険料の納付率向上は県全体として非常に力を入れているところで、県内6つの年金事務所が連絡を取り合い、情報交換しながら取り組んでいます」と話す本濱所長の言葉にも力が入る。
2017年度(現年度分)で見ると、全国平均が66.34%であるのに対して、沖縄県は49.14%と全国最下位である(表2)。
「しかし、伸びしろを見ると、全国一伸びる可能性がある」といまの状況を前向きに捉え、本濱所長は納付率向上に意気込みを見せる。実際に前年度からの納付率の伸びということでは、2016年度分(過年度1年目)および2015年度分(過年度2年目)は、いずれも全国1位となる伸びの高さを示している。また、日本年金機構発足(2010年1月)からの国民年金保険料の納付率の伸び幅を見ると、全国が5.7%であるのに対して、沖縄県は10.0%と高い伸びを示している(図2)。
表2 2017年度国民年金納付率
※1:納付率の全国順位。
※2:前年度からの納付率の伸びの全国順位。
出所:厚生労働省年金局「2017年度の国民年金の加入・保険料納付状況」(2018年6月)
図2 沖縄県の国民年金保険料納付率の推移
出所:日本年金機構 那覇年金事務所「第8回沖縄県地域年金事業運営調整会議」資料(2018年2月15日)
年金相談における予約制の徹底で混雑を完全解消
日本年金機構では、2016年10月から全国の年金事務所で予約相談を始めた。予約制の徹底・定着化に向けた取組により、2018年8月末時点では相談件数全体に占める予約制による相談の割合は70%台半ばにまでなっている。
「沖縄県は車社会で、那覇年金事務所の近くにはモノレールの駅があるのですが、ほとんどのお客様が車でいらっしゃいます。以前は、来客がピークとなる週明けの午前11時と午後2時ごろは、駐車場が車でいっぱいになり、相談窓口で長時間お待ちいただくこともありましたが、予約制が徐々に浸透してきて、受付窓口の混雑もほとんどなくなりました」と本濱所長は窓口の混雑が大幅に解消されたと話す。
新入職員は研修期間中に全課室を経験、本配置後もスムーズに現業対応が可能に
那覇年金事務所には昨年4月と10月に新入職員が配置されたが、若い職員のスキルアップも重要な取組課題だ。日本年金機構の新入職員は入構して1カ月間、まずは東京にある機構本部の研修部で研修を受ける。その後配属された都道府県の年金事務所に戻るとジョブローテーションにより、総務課に1カ月、それから順次、厚生年金適用調査課、厚生年金徴収課、国民年金課、お客様相談室をそれぞれ1カ月ずつ経験して、入構6ヵ月後に本配置となる。
「入構後最初の半年で機構および年金事務所全体の業務を覚えてもらいます。そうすることで、どの課に配置されてもその経験を生かして、スムーズに業務に入ることができます」と本濱所長はジョブローテーションの効果を話す。これにより、事務所全体の業務内容を理解したうえで、改めて自分が配属された課の業務に当たることにもなるし、最初の半年間で事務所の全職員と接することができるというメリットもある。
また、機構では、2017年4月から専門職制度の導入に伴い、各県1名の上席年金給付専門職が研修や年金事務所を巡回指導する取組を始めた。沖縄県でも上席年金給付専門職が6つの年金事務所を巡回している。
「上席年金給付専門職は那覇年金事務所に所属していますが、県内の年金事務所を巡回していることが多く、そこで、各事務所で何かわからないことがあれば、すぐに上席年金給付専門職に電話をして確認するようにしています。そうすることが各事務所の職員のスキルアップにつながっています。」
代表事務所として県内事務所間の情報連携・共有を図っていく
県内の各年金事務所の業務は、代表事務所が中心となり、とりまとめていくことになるが、そこで重要となるのが、事務所間の情報連携・情報共有だ。
「所長会議だけではなく、担当課長会議、さらには担当者間会議の開催により、事務所間の横の連携を図っています。具体的には各会議の回数を増やして情報連携・情報共有を図り、同じ目的に向かって県全体で取り組んでいくことが大切です」と話す本濱所長は、離島の年金事務所でもテレビ会議システムを使うことで、情報共有が格段に進むと考えている。