2040年頃を展望し、現役世代人口急減と労働力不足に対応した社会保障改革を ~第28回社会保障審議会
厚生労働省は2019年2月1日「第28回
社会保障審議会」を開催した。議事は「会長の選出について」、「2040年を展望した社会保障改革について」、「2019年度厚生労働省関係予算案について」。会長には遠藤久雄・国立社会保障・人口問題研究所所長が選出された。
我が国では、2040年頃に高齢者人口がピークを迎える(図3)。そこで、社会保障の持続可能性を確保するための給付と負担の見直し等と併せて、「健康寿命の延伸」や「医療・介護サービスの生産性の向上」など新たな社会保障改革が必要となる。年金制度については、更なる高齢者雇用機会の拡大に向けた環境整備や年金受給開始時期の選択肢の拡大、被用者保険の適用拡大、私的年金の拡充が政策課題となる。
これまで、社会保障の充実を目標に子ども・子育て支援の拡充、医療・介護の充実を図り、年金制度の改善を行ってきた。さらに、基礎年金の国庫負担割合を2分の1にする等、社会保障の安定化を図ってきた。持続可能性の確保のためには給付の効率化に重点を置いた制度改革を行い、社会保障関係費の実質的な伸びは2016~2018年度で1.5兆円となった。2019年10月には消費税が引き上げられる予定であり、年金については「年金生活者支援給付金制度の創設」をもって社会保障・税一体改革に関わる制度改革が完了する。
2019年度以後は、2040年を展望した社会保障改革を行うことになる。引き続き取り組む政策課題である「これまで進めてきた給付と負担の見直しなどによる社会保障の持続可能性の確保」に加えて、新たな局面に対応した政策課題として、「2025年以降は現役世代の人口が急減すると予想される中でも、社会の活力を維持向上すること」と「労働力の制約が強まる中での医療・介護サービスを確保すること」が挙げられている。これらの政策課題を総合的に検討していくためには、社会保障改革の全体像に関する国民的な議論が必要であり、厚生労働省では可能なものから予算措置や制度改正を行うことを検討している。年金に係る負担額(保険料負担・公費負担)は表1のとおり。2019年度の年金に関する予算額は表2のようになっている。
図3 2040年までの人口構造の変化
(資料) 総務省「国勢調査」「人口推計」(2015年まで)、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口 平成29年推計」(出生中位・死亡中位推計)(2016年以降)
表1 年金の負担額(保険料負担・公費負担)の見通し
表2 2019年度年金に関する厚生労働省の予算案(一般会計)