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大分年金事務所(大分県大分市)

 九州最大級のマンモス事務所である大分年金事務所。1日平均100名超の来訪者を、総勢71人の職員が対応する。一方、お客様サービスの向上、相談での待ち時間の解消と相談時間の効率化を図ることを目的に、日本年金機構では予約受付の専用電話を新設して、相談予約率の向上を図る。多くの来訪者と大量の業務量に対応していくうえでも、予約率の向上は大分年金事務所の効率的な業務推進に欠かせない。

当面の課題は効率化が期待される相談予約率の大幅増 ——坂本雅彦所長

 大分県内には大分・日田・別府・佐伯の4つの年金事務所があり、大分年金事務所は県庁所在地の大分市のほか竹田市・豊後大野市・由布市の4市、また船員保険については大分県全域を管轄する。事務所はJR日豊本線の大分駅から1つ目の牧駅から徒歩15分。大分駅からだと約2.5kmの距離にある。
 坂本雅彦所長は、平成29年4月に、それまで3年半勤めていた山口県の宇部年金事務所長から赴任。その前1年半は福岡県の東福岡年金事務所で副所長を勤めていた。
 「大分を出て5年間県外で過ごしましたが、久しぶりに帰ってきたという感じです」と話す大分県人だ。
 「平成29年11月に東福岡年金事務所が博多年金事務所に、また平成30年2月に熊本西年金事務所が熊本東年金事務所に業務の一部が移管・集約されましたが、それまでは、たぶん九州で1番か2番の人員数だったかと思います」と坂本所長が話すように、九州最大級の人員規模を誇るマンモス事務所だ。手狭になったことから、数年前には事務所の建て増しを行っている。
 県外といまの2つの事務所長の経験から、坂本所長は、現在は従来それぞれの県ごとで行ってきた独自ルールが少なくなり、業務の標準化がかなり進んできていると感じている。
 「その意味では、県外異動の職員もそれほど戸惑わずに、各県での仕事にスムーズに対応できるようになってきたのではないか。具体的には、お客様への対応が統一され、その結果、来訪者から『あちらの事務所ではこう言われたが、こちらの事務所はこう言われ、どっちに従えばいいのか」といった苦情をあまり聞かなくなったと言う。
 それは、一つには統一された業務マニュアルができたということと、もう一つは九州では昨年末、事務センターが統合され一つになって事務処理を行うようになり、各県の独自ルールが通用しなくなったという事情がある。事務センターの集約化によって、業務の統一化も同時に進んだわけだ。
 だが、業務の現場を担う事務所にとって、昨年度は、前述の事務センターの集約などの組織再編があったり、業務対応ルールの見直しがあったり、さらには、扶養親族等申告書の問題も発生した。こうしたことへの対応から、保険料の徴収や国民年金の収納対策という本来業務に腰を据えて取り組めなかった。そうしたなか、坂本所長は、「ようやく落ち着いて、さあ今年度からだという感じは持っています」と本来業務に本腰を入れ、気を引き締めて取り掛かっているところだと言う。
 さらに、昨年の事務センターの集約に合わせて、年金給付の審査を年金事務所でやるようになった。その意味では年金の審査のスキルを上げることも喫緊の課題に挙げる。
 「今年は年金の研修に力を入れたい。それから、市町村の窓口でも年金の請求を受け付けていただいているので、市町村とも研修をとおして、連携を強めていきたい」と坂本所長は研修実施に意気込みを示す。
 そして、ここにきて、大分事務所では特に取り組みを強化しなければならない課題が浮上してきた。年金相談における予約率が思うように上がらないことへの対応だ。日本年金機構では、平成28年10月から全国の年金事務所で相談予約のサービスを始めた。そして、今年5月には、予約の電話をつながりやすくするため、相談予約の受付専用番号を開設した。
 「全国と比較すると大分事務所の予約はまだ低い水準です。また、大分県内の事務所の予約率は軒並み低く、大分県全体で予約率を上げていかなければなりません」(坂本所長)
 そこで、バスの中吊り広告や大分市が持つケーブルテレビの放映枠を利用させてもらい、公的年金制度の説明をするときには、併せて相談予約についてもPRしている。
 「予約をしていただければ、事務所でお待ちいただくことなく、ご相談いただけますし、事務所としても、相談に来られるお客様のデータをあらかじめ確認しておくことで、相談の準備もできますし、相談対応時にも説明もれを防ぐことができます」と坂本所長は相談予約を推奨する。
 管轄する市町村との「協力・連携」も年金事務所の重要な業務のひとつだ。「特に、大分市は一所懸命に年金のことを考えてくれています。書類のやりとりも直接、市の職員が毎週末に当事務所に来ていただいていますし、私どもも連絡事項があれば、その場でお伝えしています。その意味では情報提供もスムーズにできています」と話す坂本所長は良好な協力・連携関係に自信を示す。
 一方、事務所から市に対しては、毎年、市町村新任職員研修会を開催しているが、今年度は厚生局が主催した説明会の中でも時間を取ってもらい、そのなかで大分事務所の職員も給付の説明や、国民年金の実際の実務の取扱いなども説明している。昨年、機構本部に情報連携グループができ、市町村との連携を深めていくことになったことから、坂本所長も、市町村との情報連携の機会を増やすことを積極的に考えている。
 日々の業務の中で、職員のスキルアップのため研修時間を確保するのも苦労するところだが、大分事務所では、若手職員が中心となり、自主的な研修を実施。効果を挙げている。
 「当事務所には、業務改善委員会という若手の職員を中心としたプロジェクトがあり、そのなかでプレゼン能力を高めることを目的に、職員が輪番で講師をやり、30分程度のミニ研修を月1、2回開催しています。ポイントを絞った講義内容となっているので、経験の少ない職員にも好評で、簡単なミニテストを行い、理解度を試してみたり、場合によっては予備知識のない状態でテストを実施して、わからないところをピンポイントで解説したり、講師となる職員それぞれが工夫した研修を行っています。また、ミニ研修はスキルアップとともに、職員同士の横のつながりを作っていくうえでも、効果のある取り組みになっています」(坂本所長)
 最後に、坂本所長はこう付け加えた。
 「大所帯の事務所ですが、市町村、社会保険労務士会、さらには年金委員など多くの皆さんのご協力をいただきながら、現在、地域年金展開事業の一環として年金セミナーを積極的に実施していますが、多くの方たちにわかりやすく年金制度を伝え、そうしたセミナーを通して、私どもが信頼される組織になることが必要です。せっかくこの組織で働こうと思って就職してくれた若い職員がたくさんいるので、そうした若い職員が誇れるような組織づくりをしていきたいと考えています」

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