第55回全国都市国民年金協議会(以下、都市協)が8月24・25日の2日間、四国ブロック・愛媛県松山市の松山市総合コミュニティセンターで開催された。参加したのは、加盟813市区のうち192市区(243名)であった。出席できなかった621市区からはすべて委任状を受けている。
1日目は分科会が開催された。テーマ別に4つの分科会が開かれ、それぞれの分科会には各ブロックからの代表が出席して、テーマごとに地域における課題や現状について議論した。2日目は総会と研修会が開催された。研修会では、玉木伸介氏(大妻女子大学短期大学部教授)による基調講演が行われた。その後、分科会の報告が各会のリーダーより行われた。
2日目(2):研修会〈基調講演〉
基調講演を行う玉木伸介教授。
基調講演では、大妻女子大学短期大学部の玉木伸介教授が「公的年金保険制度が機能する原理―若者の納得に裏付けられた高齢者の安心と老後の生活保障に向けて」というテーマで講演した。
現在の公的年金は若者の保険料による支えがなければ成り立たたない。ますます平均寿命が延びる日本では、公的年金がなければ個人資産だけでは不安な時代となっている。ところが、支え手である若い世代に「長生きリスク」といっても、まだ遠い先の理解できない無効な説明でしかない。
それならば、若い世代にとってどんな説明が公的年金を理解してもらうために有効だろうか。より身近で具体的にイメージできる事例を用いることである。例えば、若い世代にとっても、親が高齢化することにより扶養が必要となる将来は身近で有効である。さらに数字で具現化することでより理解しやすくなる。
ところで、若い世代に公的年金を理解してもらうときに、言ってはいけないことがある。「世代間扶養」と「少子高齢化により年金制度は破綻する」という言葉である。若い世代にとって、保険料を納めて受給者(高齢者)を支える日本の方式は「世代間の不公平」であり、「若者は損だ」「不公平だ」という感情を生むだけである。若い世代はどうしても公的年金を積立としてとらえる傾向がある。また、「少子高齢化で年金制度は破綻する」と思われがちだが、これは日本の「生産性」を無視した議論である。少子高齢化により確かに生産年齢人口は減少したが、技術の進歩や制度の合理化によってGDPは伸び続けている。少子高齢化が年金制度の破綻を招くというのは早計過ぎる。
若者に公的年金を理解してもらうためにはどうすればよいか。まず、「長生きリスク」の説明として、拠出と給付の間には完全な比例ではないにしても相関があることを理解してもらうことである。また、日本経済が崩壊しない限り年金はなくならないことを強調することが大切である。
若者に理解を求め、経済が将来も成長していくためには、「もっと働こう!」と言いたい。元気な高齢者が働き、「70歳を過ぎても仕事と収入があるという幸運」を他の高齢者と分かち合いその姿を見せることが、若者の納得につながり、若者をポジティブにする。