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年金広報タイトル

︱2017.5.15 5月号 (通巻695号) Vol.50

掲載:2017年5月15日
年金講座

・生活保護受給者は法定免除!
なので、手続きは何もしなくていいのか?

・受給資格期間短縮で、年金局ではなく、
社会・援護局が新規事業!

筆者プロフィール 長沼 明(ながぬま あきら)

浦和大学総合福祉学部客員教授。志木市議・埼玉県議を務めたのち、2005年からは志木市長を2期8年間務める。日本年金機構設立委員会委員、社会保障審議会日本年金機構評価部会委員を歴任する。社会保険労務士の資格も有する。2007年4月から1年間、明治大学経営学部特別招聘教授に就任。2014年4月より、現職。主な著書に『年金一元化で厚生年金と共済年金はどうなる?』(2015年、年友企画)、『年金相談員のための被用者年金一元化と共済年金の知識』(2015年、日本法令)

 黄色い封筒の届いた受給資格期間短縮の人の手続きをしている社会保険労務士の先生からこんな話を聞きます。
 ある女性の納付記録を点検していて、国民年金保険料の滞納(未納)を意味する【*】(アスタリスク)の表示が印字された期間について、夫の加入記録と突合すると、実は夫に扶養されていた国民年金の第3号被保険者になる可能性のある期間がある…。
 別の単身男性で、納付記録がずっと【*】(アスタリスク)が続いているので、尋ねると、実は生活保護を受給していたと言われた…。
 今月は、受給資格期間の短縮に関連して、生活保護受給者の受給期間が、滞納と表示されていた事例をもとに、当時、当然に行われていていなければならなかった手続きが、行われていなかつたときに、いま、どのような手続きをしなければいけないのかについて、国の新規事業も紹介しながら考えていきたいと考えています。

Ⅲ 受給資格期間短縮で、社会・援護局が新規事業!?
~平成29年度予算で、約4億5千万円を計上~

(1)社会・援護局で、生活保護を受けている人の
年金の受給資格等を調査!

 平成29年1月20日(金)、全国厚生労働関係部局長会議(厚生分科会)が、厚生労働省の講堂で開催されました。
 筆者も、受給資格期間短縮で、最新の情報が得られるものと期待して、当日出席しました。専門誌『年金実務』の編集者などとも会場でお会いしました。
 当日は、厚生労働省の各部局から、平成29年度の重点事業や新規事業が、都道府県や政令市、中核市の担当者に説明されたのですが、社会・援護局の新規事業で気になる事業が目にとまりました。(当日配布された『全国厚生労働関係部局長会議資料(厚生分科会)』45頁)
 残念ながら、年金局からは受給資格期間短縮に関して、筆者が期待した新しい情報は得られませんでした。
 さて、気にとまった事業というのは、社会・援護局の新規事業で、その内容は、スライドに記載されているとおりです(【図表11】参照)。
 筆者が現職の市長であれば、真っ先に取り組んでいた事業です。
 国(厚生労働省)から4分の3の予算(補助金)がついて、専門の知識を有する社会保険労務士等にお願いして、生活保護受給者に年金制度を周知したり、カラ期間を調査したりすることが実施できるという事業です。
 ケースワーカーの配置人数が少ないと指摘されている現在(市の福祉事務所においては、被保護世帯80世帯にケースワーカー1人が標準とされているが、実際はそれ以上の被保護世帯を担当している)、年金という特定の分野において、福祉事務所の職員もずいぶんとサポートされ、それに関する事務が軽減されます。また、年金に関する知識・情報も、これを機会にかなり蓄積することができると思います。
 自治体側からすると、都道府県の社会保険労務士会や年金相談を専門に行っている社会保険労務士会の担当部会、あるいは地元の社会保険労務士会の〇〇支部に業務委託することが考えられます(補助基準については、担当部署にご確認ください)。
 また、今回の受給資格期間の短縮で明らかになったように、生活保護(生活扶助)を受けている人で、【国民年金保険料免除理由該当届】を年金担当窓口に提出していなかった人も、けっこういるようです。
 『法定免除』に該当する30代・40代の生活保護受給者であっても、将来の年金受給権をしっかり確保し、生活保護法の目的のひとつである『自立の助長』に資する観点からの、【国民年金保険料免除理由該当届】を提出するという基本的な事項についても、専門知識を有する社会保険労務士からアドバイスがいただけるものと思います。

【図表11】社会・援護局の年金に関する新規事業のスライド資料

【図表11】社会・援護局の年金に関する新規事業のスライド資料

【出典】:平成29年1月20日(金)に開催された、全国厚生労働関係部局長会議(厚生分科会)で配布された『全国厚生労働関係部局長会議資料(厚生分科会)−社会・援護局−』45頁

(2)生活保護法施行の事務監査について
−【国民年金保険料免除理由該当届】の提出・『法定免除』の確認−

 「平成29年3月29日付けで、厚生労働省社会・援護局長から各都道府県知事・指定都市市長宛に『生活保護法施行事務監査の実施について』の一部改正」の通知が発出されました<社援発0329第46号>。
 直接的に年金に関する箇所は、「(3)年金等の受給権の確認」の項目で、「(中略)58歳時に送付される『ねんきん定期便』」を、「(中略)59歳時に送付される『ねんきん定期便』」に文言を修正するだけでした。
 一方、「年金受給権を得られる可能性がない場合、脱退手当金の受給可否を確認し、受給可能であれば請求手続きの支援は行われているか。」という文言は、変わっていません。
 しかしながら、今回の受給資格期間短縮の施行を前に、手続きをされた関係者の情報を踏まえると、生活保護の開始が決定されたら、まず、【国民年金保険料免除理由該当届】を市役所などの国民年金の担当窓口に提出する、あるいは国民年金保険料の『法定免除』が適用されているのかどうかを、事務監査では徹底して確認すべきと筆者は認識しています。

(3)『法定免除』の職権適用の推進

 実は、国も、これまで手をこまねいてみていたわけではありません。国としては、『法定免除』の手続き漏れが多いことをうけて、平成19年に、いわゆる「事業改善法」により国民年金法第108条第2項を改正し、「国民年金の法定免除対象者(省令で定めるものを除く)について、新たに関係機関に対し、情報提供を求めることができる」こととしました。
 これを受け、平成19年7月6日付けで、厚生労働省年金局長から社会保険庁運営部長宛に、通知<年発第0706001号>が発出され、改正省令の概要として、次のように記されています。

 生活保護法に基づく生活扶助の受給者等となったことを確認できる情報の提供を受けた場合には、職権で免除の手続を行うことから、当該者の保険料免除の届出を必要としないこと。

 つまり、福祉事務所など生活保護を担当する課から、一定の情報が提供されれば、職権免除を行うことができるようになった、ということです。
 さらに、この通知を受け、平成19年8月22日付けで、社会保険庁運営部年金保険課長から地方社会保険事務局長宛に、通知<庁保険発第0822001号>が発出され、次のように記されています。

1 生活保護受給者等の情報

 福祉事務所等又は関係機関から生活保護受給者等の情報の提供を受け、職権による国年法第89条に規定する法定免除の該当又は不該当の処理を行うこと。
 なお、具体的な情報の受取方法及び事務処理方法については、別途通知するものであること。

 市町村の国民年金の実務に詳しい職員の話によれば、市の福祉事務所など生活保護を担当する課から、同じ市の国民年金を担当する課に、次のような事務処理が行われているとのことです。自治体の事務処理の進め方には、それぞれの自治体の工夫があるようであり、一律ではありません。

A 生活保護受給者の開始・廃止の対象者リストが、月1回程度、国民年金や国民健康保険を担当する課に提供されるので、そのリストから本人へ法定免除についての勧奨を行う。

B 上記 A の本人への勧奨は行わず、国民年金の担当課で【国民年金保険料免除理由該当届】を作成して、日本年金機構へ提出する。

C 生活保護担当課から提供された対象者リストを、そのまま国民年金の担当課から日本年金機構へ提供する(その後の対応は、勧奨するのか、職権処理するかは、日本年金機構の判断)。

D 生活保護担当課から、対象者リストではなく【国民年金保険料免除理由該当届】の様式に福祉事務所長名で証明印をもらい、国民年金の担当経由で日本年金機構へ提出している。

 筆者としては、生活保護受給者の法定免除を確実に事務処理し、将来の自立を助長に資するために、職権適用を、もっと積極的に推進してもよいのではないかと考えています。
 また、平成26年4月より、法定免除に該当する人も、保険料納付を選択できるようになっています(【図表4】【国民年金保険料免除理由該当届】参照)。
 障がい基礎年金を受給することにより、法定免除に該当する人はともかくとして、生活保護(生活扶助)を受給している人に、国民年金の保険料を納付することを選択させるかどうか、また、保険料の納付の意思を確認しなければならないのか、筆者ははなはだ疑問に感じています。
 生活が困窮な状態にあり、最低限度の生活を維持することができない、つまり、そもそも国民年金の保険料も納付できないような状況にあるからこそ、生活保護の申請をしたのではないかと・・・。
 いずれにしても、平成26年4月以後であっても、生活保護を担当する福祉事務所の職員や国民年金の担当職員が、生活扶助を受給する人に説明をし、本人も国民年金の保険料を納付する意思がないことを確認したうえで、国民年金の担当職員が、【国民年金保険料免除理由該当届】を作成することは、差し支えないものと筆者は認識しています。


 本稿を執筆するにあたり、街角の年金相談センター大宮のセンター長・内田健治様、社会保険労務士の竹内佐恵様に多大なご示唆をいただきました。深く感謝申し上げます。
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