新春座談会2017

 平成28年12月16日、東京都内において神戸市・名古屋市・新潟市の国民年金担当者と厚生労働省、日本年金機構で、「国民年金の事務の変化と市町村の現状」をテーマとして座談会が行われた(NPO法人年金・福祉推進協議会主催)。前回は「市町村の立場は理解されているか」「地方分権による国民年金事務の影響は?」「業務マニュアルは作られるか」「ねんきんネットやねんきん定期便の見通しは?」について報告したが、後半では今後の制度改正などについての討論の様子を紹介する。

【出席者】

〈市〉
林 友美氏(神戸市国保年金医療課国民年金係長)
大須賀 竜一氏(名古屋市保険年金課事務係長)
滝沢 杉子氏(新潟市保険年金課国民年金主幹)

〈厚生労働省〉
高橋 和久氏(年金局事業管理課長)

〈日本年金機構〉
菅野 惠文氏(国民年金部長(平成29年1月1日より事業推進統括部長))

〈司 会〉
山崎 泰彦氏(神奈川県立保健福祉大学名誉教授)

マイナンバー制度の対応で市町村に求められること

─ では、マイナンバー制度の対応について、高橋課長からお願いします。

高橋 情報流出の件があって機構ではマイナンバーの利用が遅れていましたが、機構の情報セキュリティ体制が改善されました。平成28年11月11日に機構のマイナンバー利用の凍結解除政令が公布されました。2日後の11月13日からは、機構では法令上もマイナンバーを利用して事務を行うことができるようになりました。平成29年1月以降、順次マイナンバーを利用した事務を開始される予定です。
 具体的に言いますと、まず1月以降に、マイナンバーを利用した年金に関する相談や年金記録に関する照会ができるようにしたいと考えています。これまでは基礎年金番号で相談に応じていたわけですが「基礎年金番号はわからないけれど、自分のマイナンバーはこれこれなので、相談したい」というお客様がいれば、マイナンバーでその人の年金記録情報を検索して、相談対応をできるようにしていきたいと思っています。
 それから、現況届についてですが、受給者の方はもうほとんどの方が住民票コードを収録されていますので現況届、つまり毎年の健在確認のお届をご本人には求めていませんが、まだ少し収録できていない方がいらっしゃいます。そういった方には、今までは「住民票コードを書いてくだされば、来年以降は現況届を出していただく必要はありません。機構が住基ネットワークで確認できますので、便利ですよ」というお知らせをしていたのですが、なかなか住民票コードは書けないケースがありました。マイナンバーであれば、今後は記載していただける人が増えると思います。現況届に今後、マイナンバーを書いていただくと、翌年度以降の現況届の提出が不要となります。
 平成29年4月以降は年金請求書等について、今までは裁定請求の際には住民票コードを書いていただきましたが、今後は代わりにマイナンバーを記載していただく。それによって生年月日を証明する戸籍抄本の添付等を省略できます。

─ 年金を通して、高齢世代は自動的にすべてが把握されるわけですね。

高橋 なお、届書において基礎年金番号ではなくマイナンバーによる届出が可能となる時期や、情報提供ネットワークシステムを活用した情報連携の開始時期は現時点では未定です。いずれにしても、制度や事業の円滑な実施、運用は市区町村などの現場の方々との連携が非常に重要なので、なるべく早めに時期や事務の概要についてお示しできるように鋭意努めていきたいと考えています。

─ 林さん、都市協の分科会では、このことをテーマにされたんですね。

 はい。マイナンバーをテーマにした分科会のリーダーをさせていただきました。分科会に参加された市町村の方が気にされていたのは、やはり市町村事務のスケジュールでした。先ほど説明していただいたように、機構での取扱いスケジュールはある程度わかったのですが、市町村が市民に対して「マイナンバーを書いてください」という時期については、まだお示しいただいていません。また分科会で皆さんがおっしゃっていたのは、電子媒体化も控えていますが、まずは届書の様式を統一化するための準備期間が十分に欲しいということでした。それについては高橋課長も十分認識されていると思いますので、できるだけ早くスケジュールをお示しいただけたらと思います。

─ 大須賀さんと滝沢さんはいかがですか?

大須賀 マイナンバーを利用するとなると、今まで以上に取扱いが大事になりますね。年金制度がこれ以上信頼を損なわないよう、市民にも大事な情報をきちんと管理していることを示さなければいけないですし、窓口事務のやり方も多少変わると思いますので、早めに示していただきたいです。市の内部からは「年金の仕事はまた少なくなるから、人が減らせるんじゃないの」ということも言われるかもしれません。そのときに「いやいや、そんなことないですよ」と回答したいですね。今回はセキュリティの強化を中心に手間が必要になりますし、今後の制度改正にも対応できるようきちんと体制を維持していかなければいけないと思います。
滝沢 お2人のおっしゃるとおりだと思います。

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