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寒河江年金事務所(山形県寒河江市)

 山形県寒河江市はさくらんぼの一大生産地であり、「寒河江温泉」の名で知られる温泉地でもあるほか、慈恩寺や出羽三山関連の寺社仏閣が多い。寒河江年金事務所は、職員数21名という小規模事業所ではあるが、平成28年度はお客様の予約率、お褒めの言葉の数、国民年金保険料の強制徴収最終催告納付率が全国第1位となった。そこには、サービス向上や目標達成のため、職員一人ひとりが自分たちでできることを考え、全所体制で取り組んだという背景がある。

予約制の拡充でお客様サービスの向上につなげる

橋本悦子お客様相談室長

橋本悦子お客様相談室長

 予約率もお褒めの言葉も全国1位となった寒河江年金事務所だが、その取り組みを中心となって進めてきたのは、橋本悦子お客様相談室長。民間出身で、東京の池袋年金事務所のお客様相談室の室長補佐を経て、平成28年4月に寒河江年金事務所のお客様相談室長に着任した。自身にとっては初の管理職勤務となる。
 寒河江年金事務所の予約率は全国平均を大きく上回る75.4%(平成28年12月現在)となり全国1位をキープ。その後も予約率は更に伸び、平成29年1月は80%を超えている。また、お客様からのお褒めの言葉の数も全国1位である。
 同室の職員は7名だが、うち5名は特定契約職員で経験も浅い。よって職員一人ひとりの専門的知識とサービス水準にあげることが、お客様のご満足につながると橋本室長は分析。職員のスキルアップのために、毎日の朝礼時の事例検討会や案件に対する対策、CS研修、月末の定例対策会議に取り組み、確実に効果を上げている。
 また、お客様サービスの向上のために早朝から取り組んだのが予約制の拡充である。
「ご予約の上ご来所いただくと、お客様をすぐご案内できますし、事前にお客様に合った書類の準備などもできるので、正確できめ細かな、余裕を持った対応につながります」(橋本室長)。
 予約したお客様がご来所すると、まず総合案内で「予約の〇〇様ですね。本日はご予約ありがとうございます」とお出迎え。そして担当窓口職員がお客様を待合室まで迎えに行き、「ご予約の〇〇様、お待たせ致しました」と相談ブースにご案内する。まるでホテルのコンシェルジュのようなきめ細かい対応だ。そしてお客様のニーズをふまえた窓口での正確で丁寧な説明に、お客様はニコニコと笑顔でお帰りになる。
 「お客様からは『こんな風に迎えられて嬉しい』『自分のために書類が用意されていてすぐに相談していただけると、特別な気持ちになる』『自分が一生涯にわたって受給する年金についてこんな丁寧な対応をしてくださると本当に有難い』など、たくさんのお褒めのお言葉をいただいております。お褒めをいただいた職員はますますモチベーションが高まり、お客様への一層のサービスに努める、それが更にお客様のご満足につながるという好循環となっています」(橋本室長)。
 予約制の拡充への取り組みは、お客様にとっても、我々にとってもメリットが大きい、ひいては機構への安心感・信頼感につながる。そうとらえることで、職員の取り組む意識が全く違うと橋本室長は言う。「正直言うと、私は『予約』と聞いたとき、これは面白いと思ったんです。相談室は、何もかも限りなくゼロにしなくてはいけない。待ち時間ゼロ、苦情や事務処理誤りもゼロ。そこに予約率を『上げる』ということができたら、職員のモチベーションアップに必ず繋げられると思ったんです。何よりも窓口混雑の平準化・混雑の解消、事前準備によるお客様への説明誤りの防止や余裕を持った対応が実現できます。お客様の立場からすれば、予約をすると待ち時間が無く、気持ちよくお過ごしいただける。事前準備により効率的な対応ができ、対応する時もお客様をお待たせする無駄な時間がない。いいことずくめではないか。これは即実行すべきだ。そう思いました。室の全員がそういった考えを即座に理解し、様々なアイディアを出しながら、お客様に積極的に予約案内をしてくれたことに本当に感謝しています」(橋本室長)。
 職員が一丸となってスタートダッシュで予約拡充に取り組み、めきめきと予約率を伸ばしていった。常に室の職員全員で対策を考え、出されたアイディアは即実行したそうである。その中ではじめに取り組んだのは市町村との連携であった。
 「まずは、国民の皆様が何かあったら一番頼りにする市町村役場と連携を取り、市町村と一体となって予約の案内をしていこうと考えました」(橋本室長)。
 国民年金課と協力し市町村との連携強化に努め、予約のメリットについて説明した上で、予約のチラシの案内をお願いしている。「市町村役場では遺族・未支給年金や老齢年金のご相談には『必ず予約してから年金事務所に行ってください』と積極的にお客様に案内してくださいますので、市町村役場へ行かれたお客様のほとんどが事前に予約をしてからご来所くださいます。多大なご協力、本当に有難く思っております」(橋本室長)。
 また、予約相談を知った契機についてのアンケート結果を見ると、寒河江年金事務所は「友人・知人から聞いた」という回答が他の年金事務所と比べて圧倒的に多い。これは寒河江年金事務所の予約制が地域に浸透している表れでもある。
 相談室だけでなく、国民年金課・適用徴収課の窓口にも予約のチラシを置き、積極的に予約を案内している。高澤所長のリードによる全所あげての強力な連携体制が予約率を伸ばしている要因でもある。
 「この予約制での対応を通して、お客様が『待ち時間も無く、丁寧に対応してもらった』『今日来て本当に良かった』と心地よい実りの時間をお過ごしいただくことが、機構への安心感・信頼感に必ずつながると思います。『世間では年金がどうのこうの言われているけれど、年金事務所に来てみたら丁寧な対応をしてくれるじゃないか。これなら安心だ。信頼できる』そう感じてくださると思います。現実問題として、限られた人員でますます複雑化・混雑する年金相談に対応するために、またその中でもお客様のご満足度を少しでも上げて機構への安心感・信頼感に繋げるために、私は更に予約を拡充していくしかないと実感しております」(橋本室長)。

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