第54回全国都市国民年金協議会(都市協)が8月25・26日の2日間、中国ブロック・鳥取市の鳥取県立生涯学習センター 県民ふれあい会館で開催された。参加したのは、加盟811市区中156市区(195名)であった。
1日目は分科会が開催された。テーマ別に8つの分科会が開かれ、それぞれの分科会には各ブロックからの代表が出席して、テーマごとに地域における課題や現状について議論した。2日目は総会と研修会が開催された。研修会では、はじめにパネルディスカッションが開かれ、3市(札幌市、徳島市、北九州市)・厚生労働省・日本年金機構の5名のパネリストにより議論が進められた。続いて、井原和人氏(厚生労働省年金管理審議官)による基調講演が行われた。
2日目(3): 基調講演「公的年金業務をめぐる動向について」
基調講演では、厚生労働省年金管理審議官の井原和人氏が「公的年金業務をめぐる動向について」というテーマで講演した。
ここ30年で年金を取り巻く環境は大きく変わっており、特に人口構造の変化や労働力人口減少と高齢者人口の増加により社会全体の支え合い構造の見直しが必要となった。1965年には1人の高齢者を9.1人の現役世代が支えていたが、2050年には現役世代1.2人で支えると予測されており、支え手を少しでも増やすような改革が求められている。社会保障給付費の拡大は日本経済にも大きな影響を及ぼしてきた。現在(平成16年改正後)の年金財政の考え方は、将来の保険料率を固定しその財源の範囲内で給付水準を自動的に調整することで給付と負担の均衡を図るというものである。これはマクロ経済スライドを導入することで成り立つ考え方である。
現在、日本における年金制度の課題は、大きく「持続可能性」と「給付の十分性」の2つである。そのために年金制度では、短時間労働者への社会保険の適用の拡大、就労の長期化による年金受給開始の繰下げ及び保険料拠出期間の延長、マクロ経済スライドの適用の徹底、私的年金の普及拡大、年金生活者支援給付金による対応をしてきた。また、年金制度以外のところでも、少子化対策や雇用政策、福祉政策などといった対応が試みられてきた。年金財政については様々な仮定に基づいた試算が行われてきており、その結果、改定ルールの見直しが検討されてきた。
ここで、年金事業の動向をみると、制度の周知の効果は出始めており、国民年金の保険料の納付率は平成27年度の現年度分が63.4%で4年連続で上昇している。また、厚生年金未適用事業所への適用指導も実績が上がり、平成22年度と比較すると平成27年度は約19倍の事業所が適用事業所となっている。
現在、消費税の見直しとともに進められている改定が、年金受給資格期間の短縮と、年金生活者支援給付金の支給である。平成28年1月から開始されたマイナンバー制度により、将来的には手続きがさらに簡略化され、国民の負担が軽減されるとともに、年金事務の適正化・効率化が図られることになる。また、ねんきんネットの活用促進やねんきん定期便の見直しが図られることで、より利用者の視点に立ち、積極的な周知啓発が行えるシステムが構築されることになる。