共済情報連携システムが必ずしもうまく機能しているとはいえない状態が続いているようです。共済組合の決定した年金額が、なかなか年金事務所から提供されません。市役所(共済組合)と民間の事業所に勤務したことのある人にとっては、両方の年金見込額がわからないと、在職中の年金支給停止額の試算ができません。
そうしたなかで、年金事務所から提供してもらった共済組合の年金見込額のサンプル(テンプレートのようなもの)がありますので、情報提供いたします。共済組合の決定した年金見込額が、年金事務所から提供されるときのテンプレートのようなものと思ってください。
一元化後で、共済組合の支給停止方法が変わっています
〜12月に賞与が支給されない、改定されるのは12月分からか、それとも1月分からか〜
(1)地方公務員共済組合が支給する共済年金の在職支給停止 〜一元化前〜
一元化前、共済年金を受給している人が、短時間勤務の再任用で厚生年金保険の被保険者になっている場合、期末・勤勉手当(賞与、ボーナスのこと)が支給されると、年金額は、その翌月分から見直しされることになっていました。標準報酬月額も前月の標準報酬月額を用いていました。民間に勤めている(一元化前の厚生年金保険の被保険者になっている)場合も、同様です。
詳しくは、長沼明著『年金相談員のための被用者年金一元化と共済年金の知識』(日本法令)に記してあります(73ページ)ので、ここでは【図表3】を示します。ご参照ください。
【図表3】
時系列で示したほうが、わかりやすいかもしれません。
ここでは、『年金相談員のための被用者年金一元化と共済年金の知識』の79ページの表 13と表 14を使って解説します。月別推移のシミュレーションのみ、【図表4】としてお示しします。
ご覧ください。
6月および12月に期末勤勉手当が支給されると、7月および翌年1月から基準収入月額相当額(総報酬月額相当額に相当する)が変更されているのがわかります。
なお、詳細は拙著77ページ以降に記述してありますので、ご参照ください。
【図表4】
つまり、一元化前は、地方公務員共済組合が支給する年金の在職中の支給停止については、厚生年金保険の被保険者として在職している場合は、前月の標準報酬月額と前月までの賞与・ボーナスを対象として、基準収入月額相当額が算定されていたのです。 一元化後、これは、厚生年金にそろえます。
(2)年金太郎さんの場合 〜一元化後の在職年金はどうなる?〜
さて、冒頭にサンプルデータをみていただいた年金太郎さんの加入データは、【図表5】の通りです。
【図表5】
一元化後は、厚生年金にそろえるということになっていますので、平成27年12月分から支給停止額が改定される可能性がある、ということになります。
実際、年金太郎さんの事例では、【図表1】の【テンプレート・サンプル(イメージ図)】で、ご覧いただいたように、3号厚年にもとづく特別支給の老齢厚生年金が、一部支給されるようになりました。
データではお示ししていませんが、年金太郎さんの場合、6か月間の1号厚年期間がありますので(3号厚年の加入期間と合算して、1年以上と判定される)、61歳に到達したときに、1号厚年にもとづく受給権も発生します。
ただ、【相談者の基本情報】(緑色に囲んだ枠)に示したように、1号厚年にもとづく特別支給の老齢厚生年金も3号厚年にもとづく特別支給の老齢厚生年金も、平成27年10月28日に61歳となり、受給権は発生しましたが、翌月から支給される11月分は全額支給停止でした。しかしながら、12月分からは、公務員時代の平成26年12月に支給された期末勤勉手当の影響がなくなります(総報酬月額相当額に算定されない)ので、一部支給されるようになります。
したがって、年金太郎さんの年金相談では、「平成27年12月分の年金から一部支給されるようになります」とお答えすることになります。
(3)平成28年2月15日に年金は振り込まれるのか 〜年金太郎さんの場合〜
この一部支給されることになった年金額は、年金太郎さんの預金通帳に、いつ振り込まれるのでしょうか?
平成28年2月15日に振り込まれる年金は、平成27年12月分と平成28年1月分の年金額ですから、一部支給されるようになった年金は、平成28年2月15日に、振り込まれたのでしょうか?
実際は、共済組合からの厚生年金も、日本年金機構からの厚生年金も、4月15日に振り込まれました。
一般論として、平成27年12月に賞与が支給されたとしても【賞与支払届】が提出されるのは、翌月になることもあります。実施機関としては、年金の過払いとなることを懸念しますので、翌月までは、【賞与支払届】が提出されるかどうか、確認するのではないか、と思います。
そうすると、事務的には、年金太郎さんの場合でいうと、平成28年2月15日に振り込まれるというのは、実務上厳しいということになります。4月15日に振り込まれたのは、むしろ早い部類に属するのかもしれません。
一元化後においては、在職年金の支給停止の見直しの改定などでは、事務の進歩状況の差異などから、共済組合からの年金額は改定されて支給されるが、日本年金機構からの年金額は改定されずに振り込まれない、あるいは、その逆もあるのではないか、と考えています。
いずれにしても、共済情報連携システムのシステムの改善やワンストップサービスの利便性の向上を視野に入れながら、多くの関係者が一元化のメリットを享受できるようにしていかなければならないと考えています。