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兵庫県宝塚市 市民交流部市民生活室窓口サービス課

宝塚市役所は、バルコニーのある洋風の建物。建築家の故・村野藤吾氏の設計によるもので、1階を「グランドフロア」、2階を「1階」と呼ぶイギリス式の階の数え方を採用している。

 「宝塚歌劇」のまちとして知られる宝塚市は人口約22万7,000人(国民年金の第1号被保険者数は約2万8,000人)。宝塚市で国民年金業務を担当する「窓口サービス課」の橋本成年係長は、市役所の窓口を「フロントライン」であると捉え、窓口の内側からの視線と外側からの視線を行き交わせることで相談者と年金制度との間を取り持ち、年金受給権の確保に努めている。相談者のために、ときにはブラック企業やハローワークと渡り合うことも。「年金受給権は市財政にとって含み資産」という発想で納付率の向上をめざす試みも行っているほか、「フロントライン」の機能強化のために社会保険労務士も窓口に配置している。橋本係長と、社会保険労務士の矢野恵理子さんに話を聞いた。

社会保険労務士も配置し、フロントラインを強化

― 2015年4月からは、兵庫県社会保険労務士会に依頼して、社会保険労務士も毎日1~2名配置しているとのこと。ここからは、そのうちの1人である矢野恵理子さんにも同席いただいてお話をうかがってまいりますが、矢野さんは、市役所で相談業務に就くようになって、どのようなことを毎日心がけていらっしゃいますか。

矢野 やはり相談に来られた方との受け答えには気をつけていますね。相談者が何かに怒って来られた場合は、たとえそれがこちらにとっては不本意な内容であっても、相手の方の怒りの気持ちを少しでも減らせるような話し方、なんというか「角を丸くして言う」という感じでお話しするようにしています。たとえ相手の方が10割ご自分が正しいと思っておられても、その10割のなかにどこか怒りを収めていただけるような糸口がないかを少しずつ探っていって、最後には1割2割でもその方が「市役所の人の言うこともわかる」という気持ちになって帰っていただけるようにしたいなと思っています。

― ほかにも気を付けていることはありますか。

矢野 離婚した方やDV被害を受けられた方の対応については特に気を付けるようにしています。DVの被害者等の場合、加害者が被害者を探そうとして必死になっている場合があるので、ふとしたことで加害者に情報が漏れないようにと細心の注意が必要になります。「こういうことはしないように注意して」と担当職員同士でも情報を共有し合っています。
 年金事務所でも相談業務に当たっているのですが、市役所で相談業務を行うようになって思ったことの1つは、より丁寧に説明をしなければいけない、ということです。というのも、年金事務所から「市役所に行くように」と言われた方が、なぜ市役所に来ているのかわからない、私どもにもよくわからないということがありまして、そういう状況に接すると、私も年金事務所で相談に当たるときは、「なぜ市役所に行っていただく必要があるのか」を丁寧に説明しなければいけないんだなと思うようになりました。
 また、どこまでを市で対応して、どこから年金事務所で対応してもらってくださいと言うかの線引きにも迷います。年金事務所の相談業務でも「市に行ってください」とは安易に言えないなと思うようになりましたね。

― 最後に、お二人それぞれから一言ずつ、今後の抱負などを聞かせていただけますか。

矢野 若い方のなかには「年金は高齢になってからもらうもので自分には関係ない」と思っている方や、「年金は将来破綻してどうせもらえないんでしょ」と思っている方もいらっしゃるので、「消費税が10%に上がったら、それが年金の財源にも当てられる」といった身近な話題などもお伝えして年金が受け取れることを説明し、年金制度への理解を広げていきたいと思っています。

橋本 年金業務は、何かを1つ間違えば、後々積もり積もってくるものなので、こわいものだといえます。でも一方で、対象が若い人から高齢者までと幅広いので、こわいと言いつつも興味深い。フロントラインで働くことにもやりがいを覚えます。これからも、カウンターの内と外を行き交いながら、年金受給権の確保と地域経済の発展を下支えできるように業務に当たっていきたいです。

宝塚市窓口サービス課の橋本成年係長(右)と社会保険労務士の矢野恵理子さん(左)

宝塚市窓口サービス課の橋本成年係長(右)と社会保険労務士の矢野恵理子さん(左)。

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