topics

兵庫県宝塚市 市民交流部市民生活室窓口サービス課

宝塚市役所は、バルコニーのある洋風の建物。建築家の故・村野藤吾氏の設計によるもので、1階を「グランドフロア」、2階を「1階」と呼ぶイギリス式の階の数え方を採用している。

 「宝塚歌劇」のまちとして知られる宝塚市は人口約22万7,000人(国民年金の第1号被保険者数は約2万8,000人)。宝塚市で国民年金業務を担当する「窓口サービス課」の橋本成年係長は、市役所の窓口を「フロントライン」であると捉え、窓口の内側からの視線と外側からの視線を行き交わせることで相談者と年金制度との間を取り持ち、年金受給権の確保に努めている。相談者のために、ときにはブラック企業やハローワークと渡り合うことも。「年金受給権は市財政にとって含み資産」という発想で納付率の向上をめざす試みも行っているほか、「フロントライン」の機能強化のために社会保険労務士も窓口に配置している。橋本係長と、社会保険労務士の矢野恵理子さんに話を聞いた。

ときにはブラック企業を追及することも

― カウンターを挟んで個人と社会が交わっている、という話がありましたが、何か印象に残っているケースはありますか。

橋本 最近、国民年金の保険料免除のために相談に来られた若い方のケースですね。その方は、高校を卒業して初めて就職した会社が入社3カ月で倒産し、その後ハローワークで仕事を見つけて就職したけれど、その会社がブラック企業で、9カ月間働いて辞めたという方でした。ハローワークの求人票には「社保完備」と書いてあったのに、実際はフルタイムで働いても雇用保険がなかったというんですよ。ひどい話でしょう? これがいまの日本の現実ですよ。
 さらにひどいことに、この方は最初の会社で働いた3カ月と合わせたら本当は失業手当がもらえたはずなのに、ハローワークは認定の手続きを案内してはくれなかった。本人も高校を出たばかりで制度も何もわからず、ハローワークの言うことを信じるしかなかった。その後、市に国民年金の相談に来たわけです。
 私がハローワークに問い合わせたところ、もしその時に雇用保険資格が認定されていたら、失業手当を受給できたかもしれない、とのこと。しかし、もう1年が経っていたので請求の期限が切れていました。

― 悔しいですね。

橋本 本当に残念でした。その方は仕事を辞めて収入がなくなったため、免除申請が必要な方でした。でも、雇用保険がないから離職票もない。他に退職証明になる書類も手元に残っていない、源泉徴収票も他の手続きに使ってしまってない、というのです。
 私はそのブラック企業に電話をして、源泉徴収票を本人に送るように言いました。ところが、先方は「それは本人が取りに来てもらわないと…」と言ってきた。そこで「そもそも、なんでこの人は雇用保険に入ってなかったの?週20時間以上でしょう?」と聞きました。すると向こうは「いやー、理由は特に…」ときた。これにはカチンと来ましたね。「いい加減にしろよ、そもそもちゃんと雇用保険に加入させていれば面倒はいらんのや。どうしても言うんやったら、こっちも考えがあるで!」とちょっとプレッシャーを与えて…(笑)、源泉徴収票を本人に郵送することを企業側に応じさせました。
 源泉徴収票が届くと、確定申告は自分でやらなくてはいけないことなどを本人に説明して、国年の免除申請を受付した後、税務署に行くように案内しました。確定申告すると、何千円か還付が受けられるよ、と。

― 相談者の年金受給権を守るために、年金事務所とやり取りするだけでなく、ときにはハローワークやブラック企業とも渉り合っていらっしゃるんですね。

橋本 それが最前線の仕事だと思うので…。いままでこの方は、高校を出てからひどい体験しかしてこなかったので「人も社会も信じられない」という考え方に陥っていて、このまま行ったらずっと人間不信のまま過ごしていたかもしれない。

― 「カウンターを通して人の生活や社会をよくしていくんだ」という先ほどからのお話がよくわかるようなエピソードですね。

次へ

この記事はお役に立ちましたか?

ご評価いただきありがとうございます。
今後の記事作成の参考にさせていただきます。

また、他のページもよろしければご利用をお願いしておりますので、
検索機能」や記事の「 人気ランキング 」をご利用ください。

あわせて読みたい記事

人気の記事