HOME ≫ 年金広報 ≫ 実務担当者のための年金講座 ≫ ③ 退職一時金の返還はどうするのが一般的なのですか? 〜年金から返還するのか現金で返還するのか〜
年金広報タイトル

︱2016.2.15 2月号 (通巻680号) Vol.35

掲載:2016年2月15日
年金講座

共済組合の転給や退職一時金などについて

筆者プロフィール 長沼 明(ながぬま あきら)

浦和大学総合福祉学部客員教授。志木市議・埼玉県議を務めたのち、2005年からは志木市長を2期8年間務める。日本年金機構設立委員会委員、社会保障審議会日本年金機構評価部会委員を歴任する。社会保険労務士の資格も有する。2007年4月から1年間、明治大学経営学部特別招聘教授に就任。2014年4月より、現職。主な著書に『年金一元化で厚生年金と共済年金はどうなる?』(2015年、年友企画)、『年金相談員のための被用者年金一元化と共済年金の知識』(2015年、日本法令)

 平成28年度のあたらしい年金額が公表されています。
 老齢基礎年金の満額は780,100円で、平成27年度と変わりありません。配偶者加給年金額の年金額も390,100円で変わりません。中高齢寡婦加算も同様です。
 本来水準の年金額を算定するときに用いる平成28年度再評価率表の28年度の再評価率(数値)は0.951、従前額保障を求めるときに用いる平成6年度再評価率表の28年度の再評価率(数値)は0.909、そして28年度の従前額改定率は0.998(平成13年4月2日以後生まれ)となりました。
 100円単位の年金額と1円単位の年金額。一元化前にすでに受給権の発生していた人の振替加算や中高齢寡婦加算などの年金額については、100円単位から1円単位に変わる年金額もあります。


■地方公務員共済組合連合会に起因する支給ミスが発覚

 ところで、2月5日に、地方公務員共済組合連合会から、一元化に伴う年金額の支給ミスが生じたとの公表がありました。公表資料等を読むと、過払いは日本年金機構と私学事業団の人に対してで、約5千人ということです。平成27年12月15日に、日本年金機構から過払いとなった人の最高額は1回分で10万円を超えている事例もあり、2月15日の定期支払期で全額を返還してもらうことはむずかしいように思えます(年金額が支給停止になっている人が、過払いということで、支給された事例では、年金から返還のしようがありません)。
 筆者にも委任状をもらっている人がおりましたので、支給ミスがあった該当者どうか確認を求めましたが、日本年金機構から過払いとなった人には、2月9日(火)から日本年金機構から連絡する予定ということで、その通知が届くかどうかを待ってほしいとのことでした。
 実は、在職年金の支給停止額の計算については、ほかにも、電卓等で、何回も、手計算をしても、支給停止額の計算が合わないという話を社会保険労務士の先生から話を聞く事例があります。
 一元化という大改革ですので、一定のミスが生じるのはある程度やむを得ない部分もあるのかもしれませんが、単純な入力ミスに起因する誤りにとどまらず、政省令が施行日ギリギリになってから周知されたということもあり、正しい解釈が定着・共有化されていないことによる事務処理誤りもあるのではないか、ということも指摘されております。
 『年金広報』では、正確な情報を提供できるよう、関係各機関に確認を取りながら、情報を発信してまいります。

■一元化前に受給権の発生した共済年金は、一元化後はどうなるのか?

 今月は、一元化前に受給権の発生した共済年金が、一元化後にはどうなるのかという共済年金についての基本的なポイントについて、解説していきます。
 なお、読者からいただいた質問で、今回、回答を準備できなかった質問については、次回に回答をする予定で準備を進めています。ご了承ください。

退職一時金の返還はどうするのが一般的なのですか?
〜年金から返還するのか現金で返還するのか〜

(1)退職一時金の返還方法の相談

【退職一時金の返還方法の相談】

 年金請求書が届きました。【公務員共済 独自項目】のページの、【退職一時金受領額の返還に係る項目】の、「退職一時金に係る返還見込額」欄に、20数万円の金額が印字してあります。
 大学卒業後、一時期、教員をしていたときがあります。そのときのことに関係するのかなと思うのですが、返還しなければいけないものは返還するつもりです。
 書類を見ると、退職一時金については、返還方法として2つあるようですが、一般的には、年金から返還しているのでしょうか、それとも、現金で返還しているのでしょうか?

(2)退職一時金の返還方法は、年金からか、現金か

 まずは、年金請求書のサンプルをみてみましょう。
【図表4】【公務員共済 独自項目】のサンプル図であり、【図表5】【私学共済 独自項目】のサンプル図です。
 (【図表5】【私学共済 独自項目】のサンプル図に、赤字を引いたのは筆者によるものです。)

 実際に、退職一時金に返還がある場合には、原則として、サンプル図の「退職一時金に係る返還見込額」欄に金額が印字されてきます。返還がない場合については、「*円」または「0円」と表示されています。
(なお、退職一時金の概要については、長沼明著『年金相談員のための被用者年金一元化と共済年金の知識』(日本法令)95ページ~97ページをご参照ください。)

 退職一時金がある場合の返還方法は、基本的に2つの方法があります。

  ①支給される年金から2分の1ずつ返還に充当する
  ②1年以内に現金で一括で返還するか、1年以内に分割で返還する

 年金請求書では、このいずれかの番号を○で囲むということによって、返還方法を選択した意思表示をすることになっています。

 年金からか、現金からか。該当する受給者にとっては、少し考え込んでしまうポイントです。誰かに相談してみたいところです。

(3)現金で一括で返還すると割引制度があるのか

 よく質問されるのは、現金で一括で返還すると、割引はあるのですか、という質問です。公立学校共済組合、地方職員共済組合など、いずれの地方公務員共済組合にしても、また国家公務員共済組合連合会、私学事業団にしても、現金で一括で返還したからといって、割引制度があるわけではありません。逆に、指定された金融機関に振り込むために、振込手数料がかかる場合もあります。
 また、「1年以内に現金で分割して返還する」を選択したとしても、同様に振込手数料がかかる場合がありますし、1年以内に返還ができなければ、年金から返還する方法に変更させていただく、と年金請求書には記されています(【図表4】参照)。
 一方、支給される年金から2分の1ずつ返還する場合については、一年以上かかったとしても、延滞金のような加算が課せられるわけではありません。  ある共済組合に同封された書類を見ると、「当組合では、(中略)①の年金からの控除による返還方法を推奨しております」と、明確に記しています。共済組合側は、事務的には、年金からの返還を望んでいるように思えます。
 一方、【図表5】【私学共済 独自項目】のサンプル図をご覧ください。筆者が赤字を引いた箇所です。
明確に「1」の方法、つまり年金から返還する方法を勧めています。
 地方公務員等共済組合法上は、どちらを優先するとは規定しておりません。そのことで、地方公務員共済組合としては、年金請求書、つまり正式な書類では、「①の『支給される年金の2分の1ずつを返還に充当する』ことをお勧めします」、という文言を記載できなかったのではないかと推測しています。
 筆者の全く個人的な印象ですが、実施機関としては、年金からの返還を望んでいるような気がします。また、実際にそのように返還しているのが一般的という感じがします。

【図表4】 【公務員共済 独自項目】のサンプル図

【公務員共済 独自項目】のサンプル図

【図表5】 【私学共済 独自項目】のサンプル図

【私学共済 独自項目】のサンプル図
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