平成28年度のあたらしい年金額が公表されています。
老齢基礎年金の満額は780,100円で、平成27年度と変わりありません。配偶者加給年金額の年金額も390,100円で変わりません。中高齢寡婦加算も同様です。
本来水準の年金額を算定するときに用いる平成28年度再評価率表の28年度の再評価率(数値)は0.951、従前額保障を求めるときに用いる平成6年度再評価率表の28年度の再評価率(数値)は0.909、そして28年度の従前額改定率は0.998(平成13年4月2日以後生まれ)となりました。
100円単位の年金額と1円単位の年金額。一元化前にすでに受給権の発生していた人の振替加算や中高齢寡婦加算などの年金額については、100円単位から1円単位に変わる年金額もあります。
■地方公務員共済組合連合会に起因する支給ミスが発覚
ところで、2月5日に、地方公務員共済組合連合会から、一元化に伴う年金額の支給ミスが生じたとの公表がありました。公表資料等を読むと、過払いは日本年金機構と私学事業団の人に対してで、約5千人ということです。平成27年12月15日に、日本年金機構から過払いとなった人の最高額は1回分で10万円を超えている事例もあり、2月15日の定期支払期で全額を返還してもらうことはむずかしいように思えます(年金額が支給停止になっている人が、過払いということで、支給された事例では、年金から返還のしようがありません)。
筆者にも委任状をもらっている人がおりましたので、支給ミスがあった該当者どうか確認を求めましたが、日本年金機構から過払いとなった人には、2月9日(火)から日本年金機構から連絡する予定ということで、その通知が届くかどうかを待ってほしいとのことでした。
実は、在職年金の支給停止額の計算については、ほかにも、電卓等で、何回も、手計算をしても、支給停止額の計算が合わないという話を社会保険労務士の先生から話を聞く事例があります。
一元化という大改革ですので、一定のミスが生じるのはある程度やむを得ない部分もあるのかもしれませんが、単純な入力ミスに起因する誤りにとどまらず、政省令が施行日ギリギリになってから周知されたということもあり、正しい解釈が定着・共有化されていないことによる事務処理誤りもあるのではないか、ということも指摘されております。
『年金広報』では、正確な情報を提供できるよう、関係各機関に確認を取りながら、情報を発信してまいります。
■一元化前に受給権の発生した共済年金は、一元化後はどうなるのか?
今月は、一元化前に受給権の発生した共済年金が、一元化後にはどうなるのかという共済年金についての基本的なポイントについて、解説していきます。
なお、読者からいただいた質問で、今回、回答を準備できなかった質問については、次回に回答をする予定で準備を進めています。ご了承ください。
遺族共済年金を受給している私が、一元化後に死んだら、子どもに遺族共済年金は"転給"しますか? 〜共済年金制度の転給とは〜
(1)遺族共済年金の受給者の相談
【遺族共済年金の転給の相談】
平成25年2月に、市役所に勤務していた夫が死亡しました。
その時点で、生計維持関係が認められる遺族として、私[死亡した夫の妻、夫の死亡当時48歳]と21歳になる障がい等級2級の子[父の死亡当時]がいました。
夫の死亡により、夫の遺族共済年金を受給しておりますが、平成27年10月に、一元化が実施されて、公務員の共済年金にあった転給制度が廃止になったということは、私も知っています。
ということは、私が死んだら、私がいま受給している遺族共済年金は、障がい等級2級の子[現在、24歳]には、転給しない、ということなのでしょうか? つまり、遺族共済年金はもらえなくなってしまっているということなのでしょうか?
(2)遺族共済年金の遺族の範囲・順位
一元化前の共済年金においては、遺族共済年金を受給することのできる遺族の順位は、組合員または組合員であった者が死亡した当時、その組合員等によって生計を維持されていた
①[配偶者及び子]
②[父母]
③[孫]
④[祖父母]
となっています。
また、遺族の範囲は、受給権発生当時の夫の年齢要件や障がい等級2級以上の子の年齢要件など、一元化前の厚生年金保険とは、年齢要件などで異なっており、注意が必要です。遺族の順位と範囲を【図表1】にまとめました。
【図表1】遺族の順位と範囲
(3)共済年金の転給制度とは
遺族共済年金の「転給制度」とは、先順位者が死亡などにより失権した際に、次順位者がいる場合、次順位者に遺族共済年金の受給権が引き継がれることをいいます。これが、いわゆる「転給制度」です。なお、一元化前の厚生年金には転給の制度がありませんでした。一元化後は、厚生年金にあわせ、共済年金の転給制度は廃止になっています。転給制度の廃止に、経過措置はありません。
わかりやすく、イメージ図で示しましょう。
たとえば、イメージ図の事例(夫は平成23年1月29日に死亡。夫が死亡した当時、妻と亡夫の父母のみが生計維持関係あり、子はいない)であれば、第一順位者である【妻】が平成26年3月15日に死亡したとすれば、第二順位者である【父母】に遺族共済年金は転給します。一元化前だからです。
しかし、【妻】が平成28年3月15日に死亡したとすれば、第二順位者である【父母】に遺族共済年金は転給しません。一元化後だからです。
【図表2】転給のイメージ図
(4)子に引き継がれるのは、転給か?
一元化前の共済年金では、障がい等級1・2級の障がい状態にある子は、年齢要件はありませんでした。遺族の範囲に該当します(【図表1】参照)。
また、配偶者と子は同順位ですので、この子どもが夫の死亡当時から引き続き障がい等級が2級以上であり、かつ、婚姻をしていなければ、子どもに遺族共済年金は支給されることになります。
転給というのは、あくまでも、先順位者の方が死亡等により失権した場合、次順位者の方に受給権が引き継がれる制度であり、このように同順位者の場合は、転給には該当しません。
したがって、この相談の事例の場合、上記の要件を満たしている限り、つまり引き続き、障がい等級が2級以上の障がい状態にあり、婚姻していなければ、20歳以上の子に、遺族共済年金は支給されます。なお、これは転給ではありません。
(なお、転給廃止の根拠条文などについては、長沼明著『年金相談員のための被用者年金一元化と共済年金の知識』(日本法令)250ページ~252ページ参照)