②未支給年金の請求は速やかに2未支給年金の請求は速やかに

未支給年金は5年で時効になる

 第14回『年金の時効とは(もらい忘れの年金はどうなる?)』で解説しているとおり、年金給付の時効は5年です。請求手続きをした時点から過去5年分までしかもらえません。前項の事例1事例2で、Cさんの65歳から69歳で亡くなるまでの年金を遺族が請求できると説明しているのは、まだ時効になっていないということが前提となっています。遺族が請求する時期によっては、未支給分の一部または全部が時効によって受け取れない可能性もあります。
 Cさんを例にとって見てみましょう。

【事例3】繰下げ受給待機中の死亡と未支給年金③

Cさん:老齢基礎年金・老齢厚生年金とも繰下げして70歳から受給するつもりで待機中に69歳で死亡

遺 族:Cさんの死亡から2年後に未支給年金を請求


●Cさんの遺族が請求できる未支給年金
  200万円(※)× 3年分 = 600万円

 ※老齢基礎年金・老齢厚生年金を合わせたCさんの本来の年金額(在職老齢年金の調整がない場合)

 事例3はCさんが70歳になる前に亡くなった場合の例ですが、Cさんが生きて70歳を迎えて、70歳になっても繰下げ受給の手続きをしないでいたまま71歳で死亡した場合、遺族が速やかに未支給年金を請求したとしても、やはり請求時から過去5年分までしか遡れず、Cさんの65~66歳の1年分は時効になります。ただし、この場合は、Cさんの69~71歳の2年分を請求することができ、計5年分を受け取ることができます(事例4)。

【事例4】繰下げ受給待機中の死亡と未支給年金④

Cさん:老齢基礎年金・老齢厚生年金とも繰下げして70歳から受給するつもりでいたが、繰下げ受給の手続きをしないまま71歳で死亡

遺 族:Cさんの死亡後、速やかに未支給年金を請求


●Cさんの遺族が請求できる未支給年金
  200万円(※)× 5年分 = 1,000万円

 ※老齢基礎年金・老齢厚生年金を合わせたCさんの本来の年金額(在職老齢年金の調整がない場合)

繰下げ受給の申請をしていたら未支給年金は生じない

 事例4は、Cさんが70歳になっても繰下げ受給の手続きをしないでいたまま死亡した場合の例でした。では、Cさんが繰下げ受給の手続きをしていたとしたらどうでしょう。その場合は、1ヵ月分でも受給していたときはもちろん、手続き(繰下げ受給の申請)をした時点で、待機中の年金を遺族が未支給年金として請求することはできなくなります。
 なお、第12回『もらえるはずの年金ともらい過ぎた年金』で触れているとおり、仕組み上、年金受給者が死亡した場合には、必ず1~3ヵ月分の未支給年金が発生します。Cさんが繰下げ受給の手続きをしていたら、少なくとも1ヵ月分(本来の年金額の42%増)の未支給年金が発生していますので、忘れずに請求手続きをしたいものです。
 また、未支給年金とは別に、遺族には遺族年金が支給される可能性があります。年金受給者が亡くなったときには、死亡届の提出と未支給年金の請求に続いて、遺族年金が受給できるかどうかを確認するようにしましょう。(くわしくは、第12回の記事を参照してください。)

point

1.年金給付の時効は5年であり、遺族が請求する時期によっては、未支給分の一部または全部が時効によって受け取れない可能性がある

2.繰下げ受給の申請をした時点で、繰下げ受給を待機している間の年金を遺族が未支給年金として請求することはできなくなる

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