2社会保障協定における加入免除について
いずれか一方の国の制度に加入すればよい
日本の企業から派遣されて外国で働く場合、派遣先が社会保障協定を締結している国であるときは、どちらか一方の制度に加入すればよいことになっていますが、どのような場合に、どちらの制度に加入するのでしょうか(図表2)。
原則としては、派遣先の国の制度に加入することになっていますが(図表2の②~④、図表3「原則」)、派遣期間が一時的(5年以内)と見込まれる場合は、そのまま厚生年金保険のみに加入し、派遣先の国の制度への加入は免除されます(図表2の①、図表3の「一時派遣」)。
図表2 加入する社会保障制度
就労状況 | 派遣期間 | 加入する社会保険制度 | |
---|---|---|---|
日本の事業所からの派遣 | ① | 5年以内と見込まれる場合 | 日本 |
② | 上記派遣者の派遣期間が、予見できない事情により5年を超えるとき | 原則、協定相手国(両国の合意が得られた場合は日本) | |
③ | 5年を超えると見込まれる長期派遣 | 協定相手国 | |
④協定相手国での現地採用 | 協定相手国 |
(出典:日本年金機構ウェブサイト。以下同様)
図表3 どの国の制度に加入する?
なお、一時派遣で引き続き日本の制度のみに加入する場合は、派遣先の国から、日本の制度に加入していることを証明する「適用証明書」の提出を求められることがあります。必要に応じて年金事務所に申請書を提出し、交付を受けます。一方、派遣先の国の制度に加入する場合は、派遣元である事業所が、日本の年金事務所に厚生年金保険の資格喪失届を提出する必要があります。この際、派遣先の国の制度に加入したことがわかる書類を添付します。
配偶者はどうなる?
では、海外に派遣された人に扶養されている配偶者(国民年金の第3号被保険者)がいる場合、配偶者の加入する年金はどうなるでしょう。一時派遣であれば加入している年金制度は変わらないため、配偶者は第3号被保険者のままで保険料を納める必要はありません(配偶者が日本に残る場合も、一緒に派遣先の国に住む場合も同様です)。
一方、本人が派遣先の国の制度に加入する場合、①配偶者が日本に残っているときは、国民年金の第1号被保険者になり、自分で保険料を納めます。②派遣先に一緒に住んでいるときは、いずれの年金にも加入する必要はありません(ただし、海外在住者として国民年金に任意加入することができます。任意加入していない場合は、その期間は資格期間としては認められますが、年金額には反映されません。また、現地で働くことになったときは、その国の年金制度に加入することになります)。
公的医療保険の加入も免除に
社会保障協定の対象は基本的に公的年金ですが、公的医療保険も対象になる国があります(アメリカ合衆国、ベルギー、フランスなど。前頁の表を参照)。公的年金制度と同様に、一時的(5年以内)と見込まれる場合は、協会けんぽ、健保組合など日本の制度に加入することになります。この場合、給付は「海外療養費制度」を利用します。つまり、派遣先の国の医療機関で診療を受けたときはとりあえずすべての費用を支払い、後で保険者に申請して保険給付分の払戻しを受ける、というものです。
また、日本の公的医療保険に加入している40歳以上の人は、介護保険にも加入することになっていますが、海外に転居しているときは加入が免除されます。事業主を通じて医療保険の保険者に届け出ましょう。
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② 社会保障協定における加入免除について